母は魔王に囚われる

rikacchi

文字の大きさ
上 下
7 / 43

7

しおりを挟む
「蒼くんは大学生なんですね。何回生なの?」
 とりあえず無難な会話から始める。蒼はどことなく緊張しており、視線をあちこちむけていた。
「今は2回生です。」
「そうなの。色々充実した大学生活を送っている?」
「まぁ~そうですね。サークルに入ったり、コンパに行ったりとかしていますよ。普通に大学生しています。」

 少し笑みを浮かべながら話してくれた。ちょっとは緊張がほぐれたかなって思い、
「年上好きって言っていたけど、どれくらいまでなら大丈夫なの?自分のお母さん以上とかだとダメ?」
「年齢は関係ないんです。年上が好きって言うよりも、年上の人が初めて本気で好きになった人だったんで。それからですかね、年上に目が行っちゃうのは。」
「そうなんだ。そんなに年上の人だったの、好きな人って?」
 蒼はじぃっと私を見つめた。意を決したかのように話し出した。

「昔、友達を送って行った帰りに家先で少し話をしていたんです。そしたら友達のお母さんが家から出てきて挨拶をしてくれたんです。」

 私はまぁきっちりとしたお母さんだわ。私なら多分わざわざ息子の友達に挨拶なんてしないかも。まぁ何回か興味本位でのほほん息子の友達を見に行ったことはあったけど。

「そのお母さんに一目惚れに近い感情を持ってしまったんです。その時はそんなに思わなかったのに、後からその人のことをよく考えるようになってきたんです。挨拶の時にしか見ていないのに、なぜでしょうね。今でも不思議なんですけど、それから年上の人に興味を持ち出したって言うわけです。」

「すごく綺麗なお母さんだったのかしら?」
「いえ、普通の可愛いお母さんという感じの方でしたよ。ただ目が印象的で引き込まれてしまった感じです。」
 蒼は私を見つめながら幸せそうな顔を浮かべた。

「それから一回もお会いしていないの?そのお母さんと。」
「えぇ、その友達の家に行こうかとか思ったんですけど、彼も忙しいみたいでなかなか一緒になれなくて。」

 俯く蒼を見て、“あ~本当に恋しちゃってる若者だわ”って思った。
 ホテルまで来たが、これからセックスする雰囲気では完全になくなってしまった。
 私の性欲はたった今、母性に変わったしまった。

「・・・今日はお話だけにしましょうか? その女性は私ぐらいの年齢なのでしょ?恋愛相談するにはもってこいと思うわよ?」

 蒼は顔を上げると、驚いたように私を見つめた。
「やっぱり、かすみさんからしたら俺は男には見えませんか?」
「えっ?」

 悲しそうに見つめる蒼の瞳には私しか映っていない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...