母は魔王に囚われる

rikacchi

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 家の片付けを終わらせて、シャワーを浴び化粧をして、今日会う30代前半の名前も知らない男と会う。
顔も知らない。S N Sのメッセージやり取りだけで会う予定を決めるから。

 きっといつか痛いしっぺ返しが来るだろうと思う。危険な遊びだと言われればそうだ。どんな人が来るかもわからない。どんなセックスをするかもわからない。

 それでも私はやめられない。


「初めまして。かすみさんですか?」
 少し筋肉質で優しそうな男性が声をかけてきた。
「はい、そうです。ミッチーさんですか?」
「よかった、ちゃんと会えて。今日はよろしくお願いしますね」
「本当にそうですね。なんだか緊張してしまって。おばさんでがっかりさせてしまいましたね。」

 お互い本名は知らない。ハンドルネームで呼び合う。私は“かすみ”と言う名前を使っている。現実に見えない霞のような存在だから。

 ミッチーは私を見つめて、
「そんなことないですよ。お綺麗なので僕の方がドキドキしています。」
 少しはにかみながらそう言ってくれた。

 ミッチーは熟女好きでクンニ奉仕したいとS N Sで言っていたので、年齢は気にされないとは思っていたが、やはり自分と15以上違うと気を遣ってしまう。
「ふふ、ありがとうございます。嬉しいです。」
 お世辞でもいいから女性というのは幾つになっても褒めてもらいたい。褒めてもらうともっと綺麗になる努力をする。

 という私もこの危険な出会いを始めてからダイエットをしたり、綺麗な下着を買ったり、メイクをきちんとしたりする様になった。

 その前はノーメイクでそのあたりの量販店で買ったT―シャツとジーンズがほとんどで、美容院にも半年に一回行くか行かないかという、自堕落ぶりだった。

 しかしこの一年で私は変わったと思う。友達にも“若くなった”と褒められる様になった。しかし家では誰も私の変化に気づかない。
 息子たちはバイトとかあって帰りが遅いし、帰ってきても部屋に篭る。
 旦那も帰ってきても携帯をずっといじっていて、私のことほとんど見ない。

 それでも私は外の世界で私の欲求を満たしてもらっているので、不満はない。
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