母は魔王に囚われる

rikacchi

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「いってらっしゃい」
 息子が学校に行くのを見送って、家の片付けを始める。
「自分が食べたものぐらいシンクに持っていってくれないかしらね」
 私の後ろをついて来るサリーに話しかける。

 サリーは我が家のお姫様であり、かわいいお犬様だ。
 旦那、息子2人、サリー、そして私の4人+一匹のごく普通のどこにでもあるような家庭だ。

 それぞれきっと何かしら隠し事があるだろうけど、きっとそれも当たり前のことだ。
 息子はもう大学生と高校生。お年頃もあるのできっと彼女がいたりするのだろうけど、紹介された事も相談された事もないので、実際はわからない。

 旦那は普通のサラリーマンでたまに風俗に行っているのは知っている。特定の愛人を作られるよりかはマシかなと思い知らないふりをしている。

 私の隠し事はセックスだ。

 一年ぐらい前からS N Sや出会い系のサイトで知り合った人と昼間にホテルに行ってセックスをする。
 はじましての人もいれば何回か会っている人もいる。年齢もバラバラだ。
 ゆっくりねっとりしたセックスをしたければ50代の男性と。
 激しい体力を使うセックスをしたければ20代の男性と。
 月に一回出会う事もあれば、週に3回で会う事もある。
 私の性欲次第だ。

 “なぜ旦那がいるのに?”って思うかも知らないが、もう旦那とは夜を長いこと共にしていない。はっきりした理由があるわけではない。いつからかしたくなくなったのだ。
 愛していないかと言われればそうだとはっきり言える。ただ“家族”という形を壊したくないだけで一緒にいるのだと思う。

 きっとそんな主婦は大勢いるだろう。昼顔というドラマが一時期流行ったぐらいだから。
 それを見た時に“やっぱり”私だけじゃないのだ”って思って少し気分が良くなったのを覚えている。

 ただ私のしていることは昼顔よりもたちが悪いと思う。不特定多数の男性とセックスをし、愛ではなく性欲を満たすためだけに繰り返すお金のかからない女性用風俗常連者みたいなものだ。
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