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変人たちの最激戦区その8

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デンゲル国に帰国したテレスの父は唖然としていました。

政変によって新しい宰相が政権について最初に行ったことは彼の所属していた政党の有力者を次々と牢屋にぶち込むという荒業でした。



元々この新宰相は法曹界の人間で検事、弁護士を経て政治家になりました。

そして彼の思想はガチス主義という民族独裁主義を絶対の価値観と信じ、それをデンゲルに持ち込むことを理想としていました。



彼は法曹界に強いコネクションがあり、犯罪者であろうが冤罪であろうが一度目を付けた政敵は片っ端から逮捕、投獄していきました。

あまりに目障りな人間は刑務所に密かに手を回して暗殺したり、不審死で処理するという残虐なものでした。



もし、このような事がひだまりの国で起これば国民感情がそれを許さなかったでしょう。

しかし、デンゲルは違いました。



この宰相とそれを支持するグループは、先ほど述べた法曹界の他に放送界、いわゆるメディアと教育界にもあらかじめ長い期間をかけてガチス主義を浸透させていきました。



ただし、ただ純粋なガチス主義を取り入れたのではありません。

彼らはデンゲルの大衆を騙すために、ガチス主義ではなく「デンゲル主義」という形で社会に中に浸透させていく工作を地道に行いました。



これはいわゆるドイツのナチスと極めて類似していたのですが、彼らは新しい言葉を次々に作り出して類似のイメージから遠ざける工夫をするとともに、「デンゲル イズ NO1 デンゲル IS ONLY  ONE」の標語と共に大衆を熱狂させて社会を掌握していきました。



先ほども述べた通り、この動きはメディアの番組や新聞の記事にも、教育界では義務教育からはじまり、大学の教授や先生の多くが参加しました。

そして、宰相の古巣である法曹界ももちろん汚染されていました。



そして、最後の砦として政界があり、ここでは国際協調派の議員たちが最後の踏ん張りを見せていましたが、この宰相のグループと彼らに心酔する熱狂的なデンゲルの大衆によってその砦は崩壊したのでした。

そして、テレスの父は苦渋の選択をすることになるのです。



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