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島津の歴史といろはの「え」

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 回向(えこう)には 我と人とを 隔(へだ)つなよ 看経(かんきん)はよし してもせずとも



現代語訳

死者の霊をなぐさめるときは 敵味方の区別なく弔いましょう。

そのときはお経を読んでもよいし、読まなくてもよいのです。

※ (かんきん)とは禅宗の言葉



皆様、鹿児島と言われて、何を思い浮かべるでしょうか。

桜島、西郷さん、かるかん、サツマイモ、ETC,,,,

意外と建物がでてこないと思います。



薩摩藩は全国第二位の石高を誇る大藩なのですが、お城もお墓も出てきません。

もちろん、お城跡もありますし、島津家の方のお墓もあります。

でも、視覚的にインパクトのある豪勢な建物というのは出てきません。



今回紹介するいろは歌の「え」は個人的には最も島津と日本の歴史に影響を与えた言葉であり、薩摩ならではの言葉だと思います。

すこしづつ、考えていきたいと思います。



まず、敵味方区別なく弔いましょう、と言っている時点で死人に優越なし、ということになります。

これは敵方からみれば、怒りを和らげる態度となります。



中国や韓国などは墓を暴いたり、死者を辱めたりする事例が多くみられますが、やられた方は憎しみを増すのは当然のことです。

こうなると敵対勢力は相手をせん滅するまで戦うことが多くなりますし、当然必死になって戦います。



中国の歴史を見ると王朝が安定する時間よりも戦乱で混乱した時代のほうが多くなるのはこうしたしきたりや感情による要素も関係しているのではと思います。

一方、薩摩島津で見た場合、鎌倉から現代に至るまで基本的には安定して島津が統治しています。



もちろん、血で血をあらう争いもありましたが、基本的には戦いが終わったらそれ以上は長引かせないようにしています。



少し話は脱線しますが、日本の場合、菅原道真や平将門や崇徳上皇など亡くなった後も怨念を恐れる考え方から死者の怒りを鎮めるという考え方が強いことも触れておきたいと思います。



さて、エジプトのピラミットのようにお墓を豪華な建物にする文化もありますが、薩摩島津はそうしたことをしなかったようです。

何度か触れましたが鎌倉以来の武家の名門ですから豪華な墓地を作る財力や労働力はあったと思いますが、そうした立派な建物は知られていません。



もちろん、神社やお寺や庭園はありますし、見てみると粗末というものでもないので、もし機会がありましたら観光に来ていただきたいと思います。

ただ、豊臣秀吉みたいな金ピカの豪勢な建物はあまり期待しない方がいいと思います(笑)



とにかく、この教えのおかげで島津家の財布の負担は軽くなり、対外的にも余計な憎しみを被ることを防ぎ、兵士たちも戦のあとの心理的、肉体的負担が軽減されたわけですからとても意義のある方針だったでしょう。



そしてこれを支持したのが、中興の祖と名高い日新斎だったのは幸運だったと思います。

彼のような島津家当主の中でも特に優れていて徳のある者の言葉だったからこそ、後の歴代島津家当主やそれに従う家臣は金科玉条のように扱うことが出来ました。



もし、この方針が定まる前に考え方の違い(島津性の違い)などと言って口論が起きていたら島津家の中でも、島津家の外の敵に対しても多くの争いや問題が噴出したと思われます。



もしかしたら幕末から明治に至る戦争もすぐに終結せず、日本が分裂して列強に占領統治された可能性も十分あったと思われます。

次は別の角度から、この章について考えたいと思います。
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