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郭隗の馬の骨

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本田宗一郎といろはの「け」

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賢不肖(けんふしょう) 用い捨つると 言う人も 必ずならば 殊勝なるべし



現代語訳

能力のある賢い人を採用し、能力の無い愚かな人を退けると言いますが、間違いなくそれが本当にできれば、大変結構なことだといえます。

ところが、油断すれば、つい私情がからんでしまうものです。

だから、人事は十分に心にとめておくことです。



ホンダ自動車の創業者、本田宗一郎という人物をご存じでしょうか。

彼は技術者として、あるいはモータースポーツのカリスマとして絶大な実績を残した人物です。



ですが、調べていくうちにもう一つ、人事という分野で素晴らしいお手本を残しています。



例えば、会社に親しい金融機関や大株主から学生を採用して欲しいと頼まれたことがありました。

企業にとっては金融機関や大株主からの話は断りづらいわけですが、彼は「かしこまりました、ただ試験はきちんと受けてください」と伝えたそうです。



ところが試験を行った結果、全員不合格点となります。

そして人事課長がおそるおそる、この結果ですので不合格とさせていただきたいと思います。

と伝えると、流石の本田宗一郎も顔色も難しい顔つきになりました。



しかし、すぐさま「分かった。人事のことは君に任せてあるからそうしよう。俺は人事課長までは兼務できないからな」といい、試験を受けた全員が不合格となりました。



この後、金融機関や大株主達と間に奇妙な空気が流れたのは想像に難くないですが、その後トラブルがあったという証言はないようなので、ホンダの採用試験では不足とされた人々を入れなかった分だけ会社にとってプラスだったと考えられます。



本田宗一郎が身内に対しても人事について厳しい姿勢をもっていたかが分かるもう一つのエピソードを紹介しましょう。



創立14年目のある日、突然二人の常務が解任されました。

一人は本田宗一郎の幼馴染、もう一人は本田宗一郎の実弟でした。

幼馴染の方は当時営業部長という肩書きで要職でもあり、一方実弟は製造部門のリーダーであり人柄もよく社内でも慕われていました。



何故いきなり二人の常務が解任されたのか?周囲でもよく分からないという声がありました。

しかし、その要因はしばらくすると明確になってきます。



突然、若い重役が四人も誕生しました。

それらは最年少37歳から45歳までのまさに若い重役でした。

しかし何故、二人の常務を解任したのか?



特に解任された二人に落ち度があったわけではなかったようです。

その証拠に彼らはその後も本田技研で役割を与えられて働いていたと言います。



どうやら、本田宗一郎は会社を守るためには現状維持ではなく常に炎のようなチャレンジ精神が必要であり、そのためには安定型の人材よりも元気な若者に力を発揮させるべきと考え、実行したようです。



会社の為の適材適所と果敢に断行したと言えます。

そして、創業者としての本田宗一郎の力が強い本田技研はその一方で縁故採用について潔癖なほど気をつかったようです。



社長の本田と副社長の藤沢武夫の息子たちも入社させなかったと言います。

(世界的大企業なのに、コネ入社容認派からみたら信じられない話です)



いろは歌の「け」ん不肖、優れた人材を採用し、無能な人を退ける、口で言うのは簡単で当たり前のように思えますが、本田宗一郎のような魅力と決断力がないとなかなか出来ることではありません。



皆様は自分の属する組織の現状と比べてどのように感じられたでしょうか。
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