ゼロからはじめる島津大河誘致

郭隗の馬の骨

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パウロといろはの「う」

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憂(う)かりける 今の身こそは 先の世と 思えば今ぞ 後の世ならん



現代語訳

思うようにならぬこの世の自分の姿が、前世の報いの結果だと言うのなら、今の自分の生き方は、その結果として後の世に現れることになります。

だからこそ今を心して生きることです。



読者の皆様の中には罪悪感をもって日々生活されている方もいらっしゃると思います。



このいろは歌を書いた島津日新斎は名前の通り仏法を大事にしています。

彼の信仰によると前世の行いが、今の自分の生き方に反映していて、今の生き方が次の生まれに影響すると信じています。



とはいえ、悪いことをしたとしても、その後に良いことをすることが大事であるという考え方を強く推奨しています。

人生はやり直しがきくということを伝えたかったのではと思います。



宗派は違いますが、新約聖書に「パウロ」という人物が紹介されています。

彼はもともとはクリスチャンの敵側の派閥の期待のホープのような存在で、クリスチャンを見つけては迫害を繰り返していました。



ある時、彼はキリストの幻を見、それ以来クリスチャンとして熱心に行動していきます。

初めのうちはクリスチャン達も彼を恐れていて、彼も罰の悪い思いをしたかもしれませんがそうした思いを克服して善行を行っていきます。



とはいえ、彼は自分が以前行った迫害を忘れて訳でも、なかったことにしたわけでもありません。

彼がクリスチャンの仲間にあてて書いた手紙の中には、自分が熱心な迫害者であったこと、それをキリストが咎め後に許してくれたことが記されています。



重ねて言いますが、島津日新斎とパウロは信仰する相手が異なります。

ですが、この章の中で言わんとしている点については共通の部分があります。

仮に以前行った悪行によって現世で苦しんでいるとしても、今に目を向けて生活をしなさいよ、ということです。



そうすれば将来その報いが訪れますよ、そのような内容です。

実はこの章でもう一つ考えてほしい要点があります。

それは人の将来を決める要素はその人の行動ですが、将来を決めるのは人間ではなくより高い次元の存在だということです。



それが神なのか仏なのか、それははっきり断言はできません。

ですが、自分で他人であれ人が決める領分ではないのです。

もちろん、刑法やこの世の因果によって罰せられたり、賞賛されたりすることはあるでしょう。



でも、それは決定的要素ではないのです。

自分自身の良心の呵責であれ、他人の批判や怨嗟の声であれ、その声によってその人の人生が決まるわけではありません。



大事なのはまず心を強くして、後で後悔するような行動を避けること。

そして、それでも悪行を犯してしまった場合は反省しつつ、次の行動で改善していく心構えと行動です。

もし、心が落ち着いたのならどん底に陥っている場合ではありません。



急に頑張れないにしても、前向きに生きるように姿勢を改めてみませんか。

「憂(う)」れいに沈む心を引き上げて生きていけたらいいですね。
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