魔物界最強妻(ウサギ)と自称最弱夫(男の娘)の、もふっと世界ぶらり新婚旅行

猫33缶『ねこみみかん』

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第22羽 変な奴隷商のおじさん?

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午後からはイースターさんとソニカと一緒に、街をぶらぶらすることにした。

「おぅら!」

「あう!すみません、すみません…」

「謝ってないで早くしろよ!」

「は、はい」

 あれは奴隷なのだろう。僕と同じ亞人キメラの女の子が、主人だと思われる男に足蹴にされていた。見てて良いものではないと、ソニカの目を塞いだ。この世界では奴隷制というものが普通に存在している。

「パァーどうしたの(๑>◡<๑)?」

「何でもないよ」

 僕は奴隷制度は、あってもなくてもどちらでも良いと思っている。犯罪者が死刑なんて甘い考えだと思う。もしその犯罪者が人殺しで、その殺された家族は、その犯人が死刑になることで、いっ時は心が落ち着くだろう。でも、きっと後で思うんだ。犯人が死んでも大切な家族は帰って来ないと、そしてもう恨む相手はこの世に生きていないと。

 人の心の痛みや傷は、そんな簡単には治ったり埋まったりしない、それも家族を失った悲しみや、愛する人を失った悲しみは、そう簡単に埋まらない。

 人によっては、その傷を犯人を憎み恨む気持ちで埋めようとする者が、少なからず居る。でも、犯人が死刑になり死んでしまったら、その恨む対象すら居なくなる、ならその恨むことで傷を埋めていた人たちは、どうやって心の傷を埋めればいいんだ?

 それは人それぞれだ、僕のようにイースターさんが、あの魔人に殺されたと、勘違いし恨む対象もいなく、どうしようもなくなった僕は、あの時イースターさんの後を追おうとした。僕みたいに自己完結型ならまだいい、精神が壊れ、他人を傷つけてしまう他人巻込型は、自分も他の人も不幸にしてしまう。

 だったら、死刑にするのではなく、犯罪奴隷として鉱山にでも働かせて、生かすほうが世のためだとぼくは思う。

 だが反対に、奴隷制度は廃止すべきだとも思うのも事実だ。何故なら、この世には残酷にも、お金が無い、亞人キメラだからという理由だけで、娘や息子を売り払ってしまう親がいる。

特に綺麗な女性は、愛玩用として高値で売買されている。その中でも純潔の女性は、倍の値が付く。そして闇市では、何の犯罪もしていない、無垢な子供たちが売られていると、小耳に挟むことが多々ある。

 その手口は様々で、もっとも一般的なのが、飲み物に睡眠薬を入れてその間に胸に奴隷紋を刻むという手口だ。どんな強い睡眠薬を飲んでも、奴隷紋を刻まれるとあまりの激痛に一度目を覚まし、そして気絶するらしい。あまりにも酷すぎる現実。

「きゅう?」

「ん?」

 僕が目を瞑って考えごとをしている間に、どうやら迷子になったみたいだ。辺りを見回す、何処かの裏路地のようだ。少し薄暗く、先に進んで行くと、イースターさんも楽に倒れそうな扉があったので入ってみる。

 入ると横に備え付けてあったロウソクの火が灯る、廊下がほのかに明るくなった。その廊下の奥のほうから、道化師のような膨よかな体のピエロがやって来た。

「ようこそおいで下さいました、司徒様。私、ここのオーナーをしております、レイ・ド=デミウルガスで御座います。以後お見知り置きを」

「どうも」

「どうぞこちらへ」

「きゅ」

 僕たちはその男の後ろをついて行った。すると大きな部屋に出た。至る所に鏡が存在し、奇妙な雰囲気が漂っていた。パァーと赤いカーテンを通ると、様々な魔物たちが檻の中に居た。

「ようこそ!ここは、魔物の奴隷を扱う奴隷商で御座います」

 魔物の奴隷?それを僕に進めてくるなんて、何だろう?喧嘩売ってるのかな??ねぇ、完全に喧嘩売ってるよね?僕の奥さんは魔物なんだけど?

「そんな怖い顔をしないで下さいよぉ~私めは、正規で捕獲された魔物を扱っているのですよ」 

 ん?確かにここから見えるのは、元気で可愛らしいのが多いけど、どうせ裏では…ね。

「ぐふふ、少しは気になってくれたようですね」

 道化師の後ろをついて行くと、1匹だけ隔離された魔物が鉄の檻の中に居た。見た目は黒く、目つきは鋭く、だけどホルムは兎だった。僕たちが少し遠くから見ていると、こっちに近づいてきた。檻の中でこちらをじっと見つめる黒兎。その視線は僕でもイースターでも、はたまた道化師でもない。ソニカを1点に見つめていた。

 ソニカはイースターさんの背から、僕の制止を無視して黒兎の元に行く。

「ぐふふ」

 僕が心配しているのに、なんでこの道化師は笑っているんだ?ソニカに何かあったら、僕たち2人が黙ってないからね。

「あんた、なまえは(๑╹ω╹๑ )?」

「わからない。俺は、誰で何処から来たのかさえわからない」

 魔物は喋れないはずなのに、なぜかその黒兎は喋った。僕はどういうことだと、道化師を睨む。

「ぐふふ、ぐふ、ぐふふ。あの魔物は、1年前見つかった新種でございます。えぇ、そしてあの魔物の個体名は、クロェラビットと名付けました。はい」

 1年前?僕はそこが何故か引っかかった。う!?頭が痛い、何故だあの黒兎のことを思い出そうとすると頭痛が。

「やはり、あの魔物と司徒様は何か縁があるようですなぁ?どうです?あの魔物買って行きますかぁ?お安くしますよ」

「お値段はいかほど?」

「そうですねぇ。奴隷紋こみで、金貨540枚でどうでしょう」

 金貨540枚、日本円にして540,000円高いが、買えないことは無かった。あの魔人から民を守った報酬で、白金貨を100枚貰っていたから。日本円で10,000,000貰っていたから。僕は少し悩んだ。これが適正価格なのかは、新種だから分からないが、しかし、この道化師を信じきれない。

「その目つき、わたくしを疑っていますね。良いですねぇ~わたくし、なんかゾクゾクして来ました。用心深いことは、良いことですよ。ですが、この世界の創造神様に誓って、こちらは適正価格です、はい」

 この世界に置いて、神に誓うという行為は、もしその約束を守らなかった場合、その創造神様の雷を身に受けることになる。そういう誓いである。この世界に置いて、もっとも重い誓いらしい。この話しは、聖女さんに聞いた話だから、信憑性は高い。なので、今回僕はいったん道化師を信じた。それに、ソニカも気に入ったみたいだし。

「それじゃあ、これがお金だ」

「ひっふみよ、はいぃ!毎度ありがとうございます、どうぞ、どうぞこちらへ」

「イースターさん行こっか」

「きゅう」

 僕たちは、来た道を少し戻ったところにある、赤いテントに招かれた。道化師が指をパチっと鳴らすと、奥から大男と黒兎が、テントの中に入って来た。その後ろから、亞人の女が壺を1つ持ってきた。

「はいそれでは、こちらの壺に血を数滴垂らして頂けますか?」

 僕は言われた通り、腰につけたダガーで少しだけ指先を切った。じんわりと血が滲み、僕はその壺の中にその血を入れた。その壺に黒兎の血も数滴入れる、そして道化師は呪文を唱え出した。

「わたくしは、契約《Symvólaio》の真理を読み解き、ここに魔物と人との血の契約を結ぶ、主従マスタースリーブ契約コントラクト

 黒兎の胸の辺りに十字架の紋章が、僕の右手にも十字架の紋章が浮かび上がって、直ぐに消えた。この魔法を使えないものは、魔道具を使用します。

「はい、これで契約終了です」

「わかった。なら、僕たちは帰るよ」

「はい、またのお越しをお待ちしております」

 入り口まで見送りにくる道化師、以外に律儀なようだ。僕たちは奴隷商を後にした。
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