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23話 晩餐会前の準備と買い出し。

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 ノルウェル王国の晩餐会は2週間後。
しかも、VIP招待扱いらしく、馬車を手配してもらえると書いていた。
 その上、使者も寄越してくれると言うのだから熱の入れようは本気でVIP待遇である。

 2週間の間に僕達は備えなくてはいけない。
前回の報酬で手にしたお金はかなりの額だったのもあり、最初に予定していたデルカの洋服とルシア用のプレゼントだったけど、更に三人分のパーティ用ドレスセットと男性用の貴族服を手にする必要があるから僕らは慌ててレイチャード領のもう一つの町ガルテラへと向かった。

「私…ガルテラは初めてです!」

 馬の手綱を持つルシアの後ろにデルカが乗り、僕は一人で馬を走らせていた。

「あそこは服屋も数多くあるし、女性用の化粧品も多い、それに貴族用のドレスなんかも多いんだよ」
「貴族の御用達の店って感じでしたので近寄り難いイメージでした。」

『まぁ、無理もない…貴族階級が住む町だし……』

 ガルテラは海沿いに面した小高い古城の周辺を改修して作られた町でそこまで大きくは無いものの比較的に新しい町になっている。
 外周を囲むように壁に囲まれており、段々と中に入るほど高くなっている。
 中心には古びた古城が残っていてこの町の象徴として大事にされているらしい。

 根強い貴族主義は古城が機能していた時代からの名残なのかもしれない。

「おっ!見えてきた。あの小高い丘の上にある古城が見えるのがガルテラの町だよ。」
「実物は初めてです。」
「アタイも初めて…です。」

 二人がワクワクしているのが伝わって来る。

しかし、懸念点がある…レイチャード殿が統治を始めてから数年は僕も立ち寄っていないけど、僕が行った時は平民に対する差別が酷い時期だったのを今でも覚えている……。

『二人は嫌な思いをさせないだろうか……』

 中に入ると前に来た時と様変わりしていた。
歩く人間は貴族も平民も分け目なく、皆が幸福そうに仲良くしている姿が目立つ。

「私が想像していた雰囲気とは違いますね!」
「そうだね…僕もビックリしているよ」

「あら、この国は初めてですの?」
「前に一度…ずいぶんと変わってますね?」

 貴族の煌びやかなマダムが話しかけて来て僕らにこの町について優しく教えてくれた。

「レイチャード様が古臭い考えを一新し、平民も貴族も皆が平等という理念を掲げて賛同した人達で作り上げた町になりましたの!」
「それで平民も貴族と変わらないような感じなんだね。」

「そうですのよ!」
「教えてもらい、ありがとうございました!」

 レイチャード殿の政略だったんだな…さすがだ。

「ねぇねぇ!」
「ん?どうしたんだデルカ?」

「アレでしょ?服屋って?」

 そう言ったデルカの指先が向く方向に目をやると確かに良さそうな服屋さんがあったのだった。
 

 
 
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