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12話 引き渡しと号泣。
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マルディカの町が見えてくると何やら人集りができている事に気付く。
「あの門の辺り……よく見えないけど人かな?」
「あれは……確かに人のようですね!」
フッと忘れていたもう一人の存在に気付いた。
「あっ!静かで忘れていたけどデルカは!?」
「しーぃ。寝ています。」
「ゴメン…きっと緊張の糸が切れたのかも」
気持ち良さそうに眠るデルカを見て少しホッとしていた。人間が嫌いだと思うのに人間の町は嫌だろうに……。
門の前に大勢のギャラリーと1番先頭で手を振るレイチャード殿が目に入る。
到着するとなぜか、僕は胴上げされていた。
「え!?な、なんで…胴上げ……されてるの?」
「ノル様が生きてるぞ~♪」
「これはどんな…説明を…説明を頼みますぅ!」
この町マルディカはレイチャード殿が支配しているからだろう……ノルへのリスペクトが非常に高いらしく……王子様って感じよりは近所の子供って感覚で話しかけてくる。
「お久しぶりです…ノル様!ご無事でぇ……。」
王族に拝謁する姿勢をとりながら涙を流しながらこちらをじっと見つめている。
「抱きしめてもよろしいですか?」
「抱きしめ……って!?」
すると……泣きながらギュッと抱きしめた。
「うぉーーーっ!!」
「く、く…く……るしい……」
大人の腕の力で抱きしめられ、圧迫で意識が持って行かれそうになっていた。
「あの…レイチャード様……ノル様も限界です。」
「え?」
レイチャードは自分の腕の中を確認するとノルがぐったりとしていた。
「あっ…ノルさま?……ノル様ーッ!!」
「ゔぅ…大丈夫……です……たぶん。」
「すみません……つい。」
(つい……圧迫死したくなった?)
「本当にご無事で良かったですぞ!」
「ええ…早めにルシアと合流できたのが、大きかったと思います。」
「ルシア……ん?どこにおるのですかな?」
「え……と…目の前に?」
レイチャードは目の前にいるメイド服姿の女性をマジマジと見つめた……。
「……なっ!?ルシアか?」
「はい…私ですよ。レイチャード様」
「いつもの黒装束じゃないから気づかなかったわ!」
「あれは戦闘用ですし…今はノル様専用メイドなのでこの格好が最適解です。」
(うんうん…ノル様専用は誤解が生まれるから専属でお願いね~ルシア。)
「そうか…まさか…ノル様の専用に…出世したな」
「はい。」
「ちょ…ちょっと待った!」
二人の会話に僕は居た堪れずに割り込んでいた。
「ルシア…専用じゃなく、専属な……」
「レイチャード殿のもルシアは専属ですので……」
二人は僕を見ながら示し合わせたかのように笑い出した。
「すみません…フフッ♪」
「すみませんな……ワハハッ!ノル様は変わらずのウブと見えますな!それでこそ…我が主殿」
それからレイチャードは馬車で連行して来た盗賊団の一味を確認して兵士達に牢獄に連れて行くように指示をした。
「はっ!では、連れて行きます!」
「貴様ら行くぞ!」
「押すんじゃねぇよ……」
(バルは少し抵抗気味だけど他は大人しいな……)
「ノル様達を私の屋敷に先にお連れしてくれ。」
「はい、レイチャード様。」
レイチャードは隣にいた女性に指示をすると馬車に乗り込み、盗賊団を連行した牢獄へと向かった。
「大変、申し訳ございません…ノル様。」
「いえいえ…こちらこそ問題を持ち込んでしまってすみません。あと、王族では無いので普通にノルで皆さん大丈夫です。」
「しかし…我々は王族ってだけでなく、国を思う姿勢に感銘を受けた集まり……おっと、自己紹介がまだでしたね!私はスフィアと申します。」
「そんな大したことはしてないけどな……スフィアさん宜しくお願いします!」
それから僕達はスフィアの導きでレイチャード邸に案内された。
邸宅では奥さんのテレサさん、息子のジルと娘のエナの歓迎を受けた。
「旦那よりノル様が来ると聞き、楽しみにしていましたわ。」
流石はレイチャード殿……美人でいて話し易い素敵な奥様だ。
「こちらこそ光栄です。家名は無いのでノルとだけ……本日はお招き頂き感謝します!」
「やはり…あの噂は本物でしたのね……」
テレサさんは僕が大罪を犯し、追放と家名剥奪処分を受け、あの嘆きの大森林に捨てられたと言う話が帝国全土に広まっていると教えてもらった。
「そんな話に……ありがとうございます。」
「良いんです…貴方が無事ならそれで……」
「ただいま。」
レイチャード殿が途中から話に加わると今の帝国の状況について簡単に説明してくれた。
「ノル様…帝国はもう……ダメでしょう。」
内政も悪化し、民の税も上げる始末……
更に国を守る帝国兵の賃金も減り、武器や防具も古いから士気も下がっているとか…。
ノル様がやっていた政策も軒並み廃止され、帝国国民はいつ爆発して反乱されるか分からない状況に皇帝を含め、王族も大臣もダメです。
政権運営が破綻し、ガバガバ……意見する人間をかいこしたり、犯罪者扱いの始末……私はすでにあの国から離脱し、自分が蓄えた金でこの領地を買った上でノルウェル国と同盟を結んでおります。
うん……皇帝が父だけど……バカすぎる。
そこで僕は更なる後ろ盾が入るチャンスを逃さずレイチャード殿に交渉を持ちかけることにしたのだった。
「あの門の辺り……よく見えないけど人かな?」
「あれは……確かに人のようですね!」
フッと忘れていたもう一人の存在に気付いた。
「あっ!静かで忘れていたけどデルカは!?」
「しーぃ。寝ています。」
「ゴメン…きっと緊張の糸が切れたのかも」
気持ち良さそうに眠るデルカを見て少しホッとしていた。人間が嫌いだと思うのに人間の町は嫌だろうに……。
門の前に大勢のギャラリーと1番先頭で手を振るレイチャード殿が目に入る。
到着するとなぜか、僕は胴上げされていた。
「え!?な、なんで…胴上げ……されてるの?」
「ノル様が生きてるぞ~♪」
「これはどんな…説明を…説明を頼みますぅ!」
この町マルディカはレイチャード殿が支配しているからだろう……ノルへのリスペクトが非常に高いらしく……王子様って感じよりは近所の子供って感覚で話しかけてくる。
「お久しぶりです…ノル様!ご無事でぇ……。」
王族に拝謁する姿勢をとりながら涙を流しながらこちらをじっと見つめている。
「抱きしめてもよろしいですか?」
「抱きしめ……って!?」
すると……泣きながらギュッと抱きしめた。
「うぉーーーっ!!」
「く、く…く……るしい……」
大人の腕の力で抱きしめられ、圧迫で意識が持って行かれそうになっていた。
「あの…レイチャード様……ノル様も限界です。」
「え?」
レイチャードは自分の腕の中を確認するとノルがぐったりとしていた。
「あっ…ノルさま?……ノル様ーッ!!」
「ゔぅ…大丈夫……です……たぶん。」
「すみません……つい。」
(つい……圧迫死したくなった?)
「本当にご無事で良かったですぞ!」
「ええ…早めにルシアと合流できたのが、大きかったと思います。」
「ルシア……ん?どこにおるのですかな?」
「え……と…目の前に?」
レイチャードは目の前にいるメイド服姿の女性をマジマジと見つめた……。
「……なっ!?ルシアか?」
「はい…私ですよ。レイチャード様」
「いつもの黒装束じゃないから気づかなかったわ!」
「あれは戦闘用ですし…今はノル様専用メイドなのでこの格好が最適解です。」
(うんうん…ノル様専用は誤解が生まれるから専属でお願いね~ルシア。)
「そうか…まさか…ノル様の専用に…出世したな」
「はい。」
「ちょ…ちょっと待った!」
二人の会話に僕は居た堪れずに割り込んでいた。
「ルシア…専用じゃなく、専属な……」
「レイチャード殿のもルシアは専属ですので……」
二人は僕を見ながら示し合わせたかのように笑い出した。
「すみません…フフッ♪」
「すみませんな……ワハハッ!ノル様は変わらずのウブと見えますな!それでこそ…我が主殿」
それからレイチャードは馬車で連行して来た盗賊団の一味を確認して兵士達に牢獄に連れて行くように指示をした。
「はっ!では、連れて行きます!」
「貴様ら行くぞ!」
「押すんじゃねぇよ……」
(バルは少し抵抗気味だけど他は大人しいな……)
「ノル様達を私の屋敷に先にお連れしてくれ。」
「はい、レイチャード様。」
レイチャードは隣にいた女性に指示をすると馬車に乗り込み、盗賊団を連行した牢獄へと向かった。
「大変、申し訳ございません…ノル様。」
「いえいえ…こちらこそ問題を持ち込んでしまってすみません。あと、王族では無いので普通にノルで皆さん大丈夫です。」
「しかし…我々は王族ってだけでなく、国を思う姿勢に感銘を受けた集まり……おっと、自己紹介がまだでしたね!私はスフィアと申します。」
「そんな大したことはしてないけどな……スフィアさん宜しくお願いします!」
それから僕達はスフィアの導きでレイチャード邸に案内された。
邸宅では奥さんのテレサさん、息子のジルと娘のエナの歓迎を受けた。
「旦那よりノル様が来ると聞き、楽しみにしていましたわ。」
流石はレイチャード殿……美人でいて話し易い素敵な奥様だ。
「こちらこそ光栄です。家名は無いのでノルとだけ……本日はお招き頂き感謝します!」
「やはり…あの噂は本物でしたのね……」
テレサさんは僕が大罪を犯し、追放と家名剥奪処分を受け、あの嘆きの大森林に捨てられたと言う話が帝国全土に広まっていると教えてもらった。
「そんな話に……ありがとうございます。」
「良いんです…貴方が無事ならそれで……」
「ただいま。」
レイチャード殿が途中から話に加わると今の帝国の状況について簡単に説明してくれた。
「ノル様…帝国はもう……ダメでしょう。」
内政も悪化し、民の税も上げる始末……
更に国を守る帝国兵の賃金も減り、武器や防具も古いから士気も下がっているとか…。
ノル様がやっていた政策も軒並み廃止され、帝国国民はいつ爆発して反乱されるか分からない状況に皇帝を含め、王族も大臣もダメです。
政権運営が破綻し、ガバガバ……意見する人間をかいこしたり、犯罪者扱いの始末……私はすでにあの国から離脱し、自分が蓄えた金でこの領地を買った上でノルウェル国と同盟を結んでおります。
うん……皇帝が父だけど……バカすぎる。
そこで僕は更なる後ろ盾が入るチャンスを逃さずレイチャード殿に交渉を持ちかけることにしたのだった。
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