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10話 ミノタウルスは狂乱中?

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 正直、こう言う手合いはルシアが嫌いなタイプだからてっきり容赦なくブチ殺しちゃうかと思っていたけど……冷静で助かった。
 
「良かったですね…本来なら殺すレベルです。」
「なら、どうして……何故、殺さない?」
主殿あるじの指示は絶対なので。完了です…ノル様。」
「主殿って……そこのガキがか!?」

 その言葉にルシアがジロッと睨みつけると覇気でゴロツキは昏倒してしまった。

「あ……やってしまいました…つい。」
(つい…で昏倒させれる強さっていったい……)
「あの中にいるの奴隷商人を確保したらこのミッションはクリアだから頑張ろう。」
「はい…」
 
「そうだった。デルカ!」
「ナニ、ノル?」
「コイツらを何かで縛っといてくれないか?」
「ワカッタ!」

 まぁ、任せてみよう…考え方も見れるし……。

「ルシアは僕と一緒に奴隷商人の確保しようか。」
「はいっ!」

 奴隷商人の馬車は思っていたよりも離れていた。近づいても反応は無い。
 きっと寝ているのかとも思いながらゆっくりと近づいて扉を開いた次の瞬間、凄い閃光と共に何かに掴まれて投げられたような感覚がしたと思ったら木に投げ飛ばされて打ち付けられた。

「グハッ…」
(何が起きたんだ!?)

 数十メートルも投げ飛ばされた。
致命傷のダメージを【身体強化・全】を使っていたから衝撃に耐えれていた……。

「ルシ……ル、ルシア……大丈夫か!?」
「大丈夫ですが…衝撃で痺れてしまいました。」
(痺れくらいで済むメイドって……)

  ガルル……ガルル……。

「少しマズイですね…」
「あのモンスターのこと?」
「中層の悪魔と言われているミノタウルスです。」
「ミノタウルスだと!?」

 それはモンスター大全に記載されていた中で見覚えがる名前と特徴だった。
 顔は闘牛のような見た目…身体は筋肉質で皮膚は鎧のように硬い。
 通常の2倍はある断頭斧ヘッド・アックスを所持している。

「大全に書かれてた内容通り……」
「あの中にいた奴隷商人が呼び出した…よりは…」
「ルシア?」
「いえ、恐らくは何者かの意図で口封じかと…。」

 ミノタウルスの召喚によって馬車は粉々…中にいるはずの奴隷商人は……生きてはいないだろう。
 召喚させる魔法具マジック・アイテムでこの場所に転移させた……が二人の結論だ。

「ミノタウルスの目ってあんなに赤いのかな?」
「いいえ…あれは……狂乱状態バーサークでしょうか。」

 通常でも厄介な相手が狂乱状態……
この状態の時は全ステータスが飛躍的に跳ね上がる一方で敵味方関係なく、魔法効果を止めない限り、死ぬまで動くものを襲い続ける。

「それって……」
「はい、黒幕が仕掛けた罠ですね。」

 この場の全員を皆殺しにして証拠を隠滅するのが狙いって訳……か。

 ゴロツキの頭が目を覚ましてミノタウルスに気づいて恐怖からか叫んでしまった。
 それはミノタウルスの神経を逆撫でするには十分過ぎる結果にだった。

「うわぁーッ!!何でミノタウルスがココに!?」
「ヤバッ…!」

 ミノタウルスがゴロツキに向けた殺気に当てられて再び昏倒するとゆっくりと獲物に近づいていく。

「マズイ…アレなら倒せるか……」
「私が…行きましょう!」
「待て!僕に考えがある……」

 僕はルシアに考えを説明した。それは、ルシアに危険な役目を押し付けてしまう…だが、決断を急がなくては捕虜もこの森も危うい。

「わかりました。では、オトリとして十分に動き回りますね!」
「すまないけど……頼んだ!」
「お任せを。」

 ミノタウルスの鎧のような硬い皮膚にルシアは短刀を当てると切り傷を付けた。

「やはり…硬い。」
(え?それは短刀でしょ?どうして傷…今はいい)

 僕は作戦で決めた場所にあるものを設置した。

「スキル―整地―!」

 光るエリアがセットした場所に浮かび上がる。
整地をセットして置いて発動を保留する事で罠として活用する方法を思いついた。

 整地した素材や範囲にいる魔物は収納される。
 その時の魔物は消滅して倒した扱いになるのだ。

「今です!ノル様ーッ!!」
「整地発動!!」

 ミノタウルスがエリアに入った瞬間に効果が発動してミノタウルスは姿を消した。
 
 収納袋インベントリを確認するとちゃんと倒した扱いになっていてレベルもかなり上がった。

「上手くいって良かったぁ……」
「お疲れ様でした…ノル様♪」

 木の上で怯えていたデルカも降りて来ると心配そうに僕を見つめて来た。

「アノデカいの……ノルがタオシタ?」
「ん~ルシアと僕の共同討伐かな!」

「私とノル様の"共同作業"……」
「違うよ…ルシア。いゃ、違わないのか?」

「スゴイ、スゴイなノルもルシアも!」
 
「コイツらを連行しなきゃだけど…どこに連れて行くかな……帝国はダメだし。」
「でしたら、レイチャード辺境伯の領地はいかがでしょうか?」

 レイチャード辺境伯は皇帝ザリオンから領地を預かっている領主なのだが、他の貴族と違って様々な国と貿易をして発展させている数少ない領主だ。

 しかも、僕はその人に帝国時代に領地経営から貿易についてなど…様々な分野の話を聞かせてもらった師匠みたいな方だ。

「あの方であればきっと帝国にノル様を売ることはしないかと……。」
「レイチャード殿は聡明そうめいだし、助けてくれるかも。」

「あの…距離があるのですが、この者達を連れて行くとなると大変かと……」

 確かに…馬車用の馬が3頭いるけど、肝心の場所が粉々か……代わりになる物が作れたら…ん?馬車って見た目は家みたいだから作れる気が……

 僕はオリジナルで作る事にした。
材料であるタイヤは無事だったから箱ができれば作れる。
 軽量化し、要らないものを排除し、護送用の運搬型の馬車が完成した。
 それから僕らはノルウェル国とラスタード帝国の中間にあるレイチャード辺境伯の領地へと向かった。
 
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