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8話 傷だらけの少女。

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 ゴブリンを倒した僕は討伐した場所に移動してしっかりと魔石を集めていた。

 魔石を放置するとモンスターが集まってくる……理由はモンスターは魔石を食べて力に変える。
 だから、モンスター同士で殺し合って生態系が維持されている。

 魔石には微力な魔力の波動が流れているらしく、それを感知するのにモンスターは優れていると書物に書いていた。

 だから、普通の袋で持ち歩くのは危険でちゃんと収納袋インベントリを使って異空間保管をしないといけない。

 ゴブリンの魔石を回収後、最初の身体強化・全を解いて、再び【身体強化・速】に戻し、拠点区域まで移動を始めた。

 途中でイノシシや野鳥といった生き物を狩りながら順調に戻っていると傷だらけで倒れている人間を見つけた。

「あれは……人間!?どうしてこん場所に……。」

 近づくとどうやら人間……ではないらしい。
黒い耳は頭の上にあり、黒くて細い尻尾は弱々しく動いていた。

「フッ…生きてる」

 うつ伏せになった身体を声をかけながら仰向けにすると弱っている『黒猫族』だった。
 黒猫族は希少種で昔、闇市と呼ばれる希少種だったり、奴隷落ちした人間を売るオークションがあると聞いた事がある。

 しかも……

「女の子…傷は人間からか?」

 モンスターよりは鞭で痛めつけられたような跡が複数カ所見られ……首には奴隷用の首輪。
 不幸中の幸いは彼女の身体には奴隷印が刻まれていない事だろう。

 所有者が居れば魔法によって一定時間離れてしまうと耐え難い痛みが全身を襲う。

 しかし、危ない事に変わりはない。僕がこの森を開拓していく上で死亡者が出るのは良くないし、僕も望まない……助けてあげたい。

 僕は急いで身体強化して彼女を抱えて猛スピードで森を走って移動した。
 数分後には拠点にたどり着いていた。

「あら、早かった……どうしたのですか!?」

 ルシアは異様な光景と僕の行動を悟り、手当の準備を始め、後をルシアに任せた。
 残念ながら看病はした事がなくてテキパキとできているルシアを見て改めて尊敬した。

 黒猫族の女性の意識は一向に戻らず、ルシアが言うにはギリギリだったらしい。
 僕は彼女を見つけた責任もあるのだが……ルシアに任せっきりで自分だけ寝ると言うのは気分的に寝付けないでいた。

「ちょっと様子を見るだけで……」
 
 彼女の様子を見にドアを開けて中に入るとベッドでぐっすりと女の子が寝ている脇でルシア布団に突っ伏して寝ているのが見えた。

「ルシア…相当、無理させたかな。」

 僕はルシアにソッと布地をかける……フッと自分がマズイ事をしている自覚が芽生え始めてきた。

「これ……女性の寝室に入るのは人として……」

 ルシアの身体が動いて僕はドキッとしていた。
バレない内に退散しないと見つかったら……

 扉をそっと閉めて自分の部屋に戻ると安心したのかそのまま眠りに着いた。

 その頃、ルシアはと言うと……

(えっ……ノル様……夜這いですか!?)

 状態はさて置き…きっと優しいノル様は黒猫族のこの子が心配で様子を見にきたのでしょうね…。

 フワッと何かが私の背中に優しく被さる感覚に私は少しビクッとなっていた。
 目を少し開け、横目で確認する私にノル様は気づいていない……ホッとした。

(布地……ノル様ったら…さり気なさ過ぎです。)

 あれ……?もう、扉に向かって歩き始めている。
ガチャッ…扉の開閉の音が聞こえ、ノルが部屋に戻っていった。

「ふぅ……」

 ちょっとだけ安堵していると何やら視線を感じてベッドを見ると黒猫族の少女が目を覚ましていた。

「アナタ…ダレ?」
「私はルシア。この場所は…ノル様の支配区域よ」

 少し警戒しているのかベッドから起き上がると直ぐに部屋の隅に移動してこちらをジッと睨む。

「ノル……ダレ…?」
「あなたを見つけて連れてきてくれた方よ?」
「ワタシ…ツレテキタ…ノカ?」
「そうだ!あなたの名前は何かしら?」

 少し混乱しているのか頭を抱えながらも威嚇を解こうとはしなかった。

「ナマエ…デルカ……デルカ!」
(黒猫族は特殊とは知っていたけど…カタコト)
「デルカね……よろしくデルカちゃん♪
 今日はそこのベッドで休んで明日の朝食を食べてから考えましょう。」

 そう言うと警戒を解かないデルカを刺激しないように部屋の外に出るとルシアは自分の寝室に帰っていった。

(まぁ、警戒心はあるけど…大丈夫そうね!)


       ―次の日の朝―
 ルシアは朝早く目覚めると直ぐにメイド服に着替えて薄いメイクをすると直ぐにデルカが居る部屋に向かった。
 
「あの子…出ていってないと良いけど……」

 コンコン♪……扉を叩いても返答がない。
中に入って覗いて見ると昨晩の部屋の隅で器用な体勢で眠っていた。

「うふっ♪器用に寝てるわね。」

 その後、少ししてからノルもやって来て彼女の格好にかなり驚いていた。

「なんて体勢で寝てるの!?」
(猫って……高いとこ好きって言うし…普通か?)
「彼女はデルカって言うみたいですよ!」
(ちゃっかり聞いてやがる……)

 デルカは騒がしい音に目を覚まして柱の隙間から降りてくると昨晩とは違い……冷静な表情だった。

「サクヤは……タスケテくれて……アリガト。」

 少しは寝てスッキリしたのか冷静な顔で私達を見つめる。
 助けてくれた人ってことを理解したのか、嘆きの大森林でどうして倒れていたのかを話し出した。
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