3 / 30
3話 15歳と儀式。
しおりを挟む
あれから月日は流れ…僕は15歳になっていた。
以前、考えを巡らせていた【商業化計画】は見事に身を結んだ。
色々な大臣を上手く説得と理解してもらった上で計画を進め、両親や兄にバレないように口止めまでして……。
ついに……他国との【貿易】を実現した!
それに伴い、技術者の派遣や生産職の派遣なども行いオープンな取り引きをした。
他国との交渉で互いに利になることから世界各国からのラスタード帝国への関心が広まっていた。
大臣らの活躍は評価され、【名誉勲章】を授かるくらいには皇帝も評価しているらしい。
まぁ、大臣達は僕をチラ見しながらあぶら汗をかいていたけれど…元に手伝ってくれたのは事実…
(もらえる物はしっかりもらっとくと良い!)
結果、僕の顔色を伺う大臣が増えてしまったけど……別にこと
15歳になるとある『特別な儀式』に参加しなくてはいけない。
それは『スキル付与式』と呼ばれ、15歳になった若者がそれぞれにランダムにスキルが一つずつ手にできる特別な日なのだ。
「ノル王子…動かないで!」
「だって…こんな畏まった格好なんて嫌いなんだよ……面倒だから始まる前に閉めてくれないか?」
「ダメですよ。時間が無いのですから…ノル王子の大事な式なのですよ?」
この式によって僕の人生が決まると言っても過言ではないだろう。
何故ならばラスタード帝国は力の絶対信仰を唱い、強者として攻撃的なスキルを引く王族がほとんどだからだ。
血筋なのかたまたまなのか……攻撃型のスキルを手にする事が決まっていたとしても何が来るかで皇帝としての地位が確定してしまうのが嫌だ。
「分かっているさ……やりたくないだけ。」
「しっかりなさって!ノル王子が皇帝となればあなた様が望む政策をし、民を導いてくださればこの国は安泰です。」
ルシアは本当に僕にプレッシャーを掛けるのがお上手なんだから……マジで胃がキリキリして来た…
「早く部屋に戻りたい……」
「いや、まだ部屋ですよ!?」
(これは一大事な予感ですね……)
普段は紺色のベストと白のシャツと紺色のズボンで普段着として愛用しているのだが、今回のは全身が赤い衣装でメチャクチャ目立つ。
「今日だけの辛抱ですよ!」
「はぁ……分かったよ。」
それから支度は順調に進み、着慣れない上着が赤、ズボンが黒の洒落た感じに仕上がっていた。
最初の全身赤は形式状では上着は赤でズボンは何色でも良い事を知っていたから阻止できて……本当に助かった。
(記憶力に感謝……)
「全身赤もお似合いでしたよ?」
「陽気な雰囲気が嫌なの!まだ、黒があるだけで気持ちがホッとする……」
ルシアと会話しているとドアの方からノックする音がすると兵士の声が高らかに聞こえて来た。
「ノル様!皇帝ザリオン・ラスタード様がお待ちです!急ぎ皇帝の間へお越しください。」
「分かった。知らせてくれてありがとう!」
「はっ!失礼出します。」
「ふぅ……では、行ってくる!」
「はい、ノル様。」
僕はひとり皇帝であり、父…ザリオンが待つ神聖な場所……『皇帝の間』に歩みを進めた。
父と会うのは赤子の時以来だから……まぁ、初めてって事にしておこう…それよりも、皇帝ザリオンを噂に聞けば残虐や無慈悲と言ったイメージをよく聞くけど、果たして息子にもそんな感じなのだろうか……少し緊張してきた。
「ノル様…」
「ノル様だ…」
皆が僕に頭を垂れる…そう、今日の儀式によって僕が次期皇帝になる可能性がある以上は今の内から媚を売る方が賢明だと判断する者…兄を推す派からは妬ましく思われたり、命を狙われる危険性もある。
(こう言う視線は嫌いなんだよ…気持ち悪い。)
「はぁ……」
僕はため息を吐くと気付けば『皇帝の間』の扉の前に着いていた。
扉の前には二人の門兵が槍をクロスさせて構えていた。
僕が近寄るとクロスを解いて槍を真っ直ぐに構え直すと大きな声で到着を知らせた。
「ノル・ラスタード第二王子殿下のご到着です!」
見事なまでに息があった二人のシンクロぶりに僕は心の中で称賛を送った。
扉がゆっくりと開くと中には数十人の重役が僕の到着を待っていた。
その中でも異彩を放つ存在感が一人いた。
「ふぅ……」
小さく息を吐くと気合いを入れ直し、一歩ずつ前に進み……皇帝ザリオンの膝下まで来ると僕は父に頭を垂れて片膝を下ろした。
「ノル・ラスタード。只今、到着しました。」
「よく来たな…ノルよ。大義である。」
隣に居る美人で着飾った女性は母様かな?その隣で睨みを利かせているのは間違いない…兄だ。
「はっ!この様な場を設けて頂いた事に感謝を。」
「ふははっ!立派になったな!」
(この人……笑うんだ!)って思っていると奥の方からヨボヨボのお爺さんが近づいて来た。
「この者はスキル付与士のグラドだ。15歳になったお前にスキルを確定させる存在だ。」
「なるほど…よろしくお願いします。」
これからスキルが分かり、全てが変わる。
「ノル王子よ…こちらの魔水晶に手を…かざして目を閉じてくだされ……。」
そこには紫色のゴツゴツした水晶が置かれていて僕は言われるがままにその魔水晶に手のひらを乗せると目を閉じた。
「では、これよりスキル付与の儀を執り行う。」
辺りに光が溢れ出すと皇帝の間にいる全てに同じ光に包まれてしまった。
そして目を開くと真っ白な空間に僕は迷い込んでいたのだった。
以前、考えを巡らせていた【商業化計画】は見事に身を結んだ。
色々な大臣を上手く説得と理解してもらった上で計画を進め、両親や兄にバレないように口止めまでして……。
ついに……他国との【貿易】を実現した!
それに伴い、技術者の派遣や生産職の派遣なども行いオープンな取り引きをした。
他国との交渉で互いに利になることから世界各国からのラスタード帝国への関心が広まっていた。
大臣らの活躍は評価され、【名誉勲章】を授かるくらいには皇帝も評価しているらしい。
まぁ、大臣達は僕をチラ見しながらあぶら汗をかいていたけれど…元に手伝ってくれたのは事実…
(もらえる物はしっかりもらっとくと良い!)
結果、僕の顔色を伺う大臣が増えてしまったけど……別にこと
15歳になるとある『特別な儀式』に参加しなくてはいけない。
それは『スキル付与式』と呼ばれ、15歳になった若者がそれぞれにランダムにスキルが一つずつ手にできる特別な日なのだ。
「ノル王子…動かないで!」
「だって…こんな畏まった格好なんて嫌いなんだよ……面倒だから始まる前に閉めてくれないか?」
「ダメですよ。時間が無いのですから…ノル王子の大事な式なのですよ?」
この式によって僕の人生が決まると言っても過言ではないだろう。
何故ならばラスタード帝国は力の絶対信仰を唱い、強者として攻撃的なスキルを引く王族がほとんどだからだ。
血筋なのかたまたまなのか……攻撃型のスキルを手にする事が決まっていたとしても何が来るかで皇帝としての地位が確定してしまうのが嫌だ。
「分かっているさ……やりたくないだけ。」
「しっかりなさって!ノル王子が皇帝となればあなた様が望む政策をし、民を導いてくださればこの国は安泰です。」
ルシアは本当に僕にプレッシャーを掛けるのがお上手なんだから……マジで胃がキリキリして来た…
「早く部屋に戻りたい……」
「いや、まだ部屋ですよ!?」
(これは一大事な予感ですね……)
普段は紺色のベストと白のシャツと紺色のズボンで普段着として愛用しているのだが、今回のは全身が赤い衣装でメチャクチャ目立つ。
「今日だけの辛抱ですよ!」
「はぁ……分かったよ。」
それから支度は順調に進み、着慣れない上着が赤、ズボンが黒の洒落た感じに仕上がっていた。
最初の全身赤は形式状では上着は赤でズボンは何色でも良い事を知っていたから阻止できて……本当に助かった。
(記憶力に感謝……)
「全身赤もお似合いでしたよ?」
「陽気な雰囲気が嫌なの!まだ、黒があるだけで気持ちがホッとする……」
ルシアと会話しているとドアの方からノックする音がすると兵士の声が高らかに聞こえて来た。
「ノル様!皇帝ザリオン・ラスタード様がお待ちです!急ぎ皇帝の間へお越しください。」
「分かった。知らせてくれてありがとう!」
「はっ!失礼出します。」
「ふぅ……では、行ってくる!」
「はい、ノル様。」
僕はひとり皇帝であり、父…ザリオンが待つ神聖な場所……『皇帝の間』に歩みを進めた。
父と会うのは赤子の時以来だから……まぁ、初めてって事にしておこう…それよりも、皇帝ザリオンを噂に聞けば残虐や無慈悲と言ったイメージをよく聞くけど、果たして息子にもそんな感じなのだろうか……少し緊張してきた。
「ノル様…」
「ノル様だ…」
皆が僕に頭を垂れる…そう、今日の儀式によって僕が次期皇帝になる可能性がある以上は今の内から媚を売る方が賢明だと判断する者…兄を推す派からは妬ましく思われたり、命を狙われる危険性もある。
(こう言う視線は嫌いなんだよ…気持ち悪い。)
「はぁ……」
僕はため息を吐くと気付けば『皇帝の間』の扉の前に着いていた。
扉の前には二人の門兵が槍をクロスさせて構えていた。
僕が近寄るとクロスを解いて槍を真っ直ぐに構え直すと大きな声で到着を知らせた。
「ノル・ラスタード第二王子殿下のご到着です!」
見事なまでに息があった二人のシンクロぶりに僕は心の中で称賛を送った。
扉がゆっくりと開くと中には数十人の重役が僕の到着を待っていた。
その中でも異彩を放つ存在感が一人いた。
「ふぅ……」
小さく息を吐くと気合いを入れ直し、一歩ずつ前に進み……皇帝ザリオンの膝下まで来ると僕は父に頭を垂れて片膝を下ろした。
「ノル・ラスタード。只今、到着しました。」
「よく来たな…ノルよ。大義である。」
隣に居る美人で着飾った女性は母様かな?その隣で睨みを利かせているのは間違いない…兄だ。
「はっ!この様な場を設けて頂いた事に感謝を。」
「ふははっ!立派になったな!」
(この人……笑うんだ!)って思っていると奥の方からヨボヨボのお爺さんが近づいて来た。
「この者はスキル付与士のグラドだ。15歳になったお前にスキルを確定させる存在だ。」
「なるほど…よろしくお願いします。」
これからスキルが分かり、全てが変わる。
「ノル王子よ…こちらの魔水晶に手を…かざして目を閉じてくだされ……。」
そこには紫色のゴツゴツした水晶が置かれていて僕は言われるがままにその魔水晶に手のひらを乗せると目を閉じた。
「では、これよりスキル付与の儀を執り行う。」
辺りに光が溢れ出すと皇帝の間にいる全てに同じ光に包まれてしまった。
そして目を開くと真っ白な空間に僕は迷い込んでいたのだった。
61
お気に入りに追加
179
あなたにおすすめの小説
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
【草】限定の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!
黒猫
ファンタジー
旅行会社に勤める会社の山神 慎太郎。32歳。
登山に出かけて事故で死んでしまう。
転生した先でユニークな草を見つける。
手にした錬金術で生成できた物は……!?
夢の【草】ファンタジーが今、始まる!!
『王子』の僕が死んだ後
アールグレイ
ファンタジー
武力の強さによって階級が決まる王国の王子として生まれた僕は、生まれつき病弱で本ばかり読んでいた為、家族からも見放されていた。
ある日、王国が隣の帝国に嵌められ、滅んだ。戦えない僕は帝国に人質として連れていかれ、軟禁された状態で過ごす事となった。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
聖なる歌姫は喉を潰され、人間をやめてしまいました。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ロレーナに資格はない!」
「歌の下手なロレーナ!」
「怠け者ロレーナ!」
教会の定めた歌姫ロレーナは、王家の歌姫との勝負に負けてしまった。それもそのはず、聖なる歌姫の歌は精霊に捧げるもので、権力者を喜ばせるものではない。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる