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1話 この国の発展の為に…。

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 この世界には3つの強大な国が統治していた。
東のラスタード・南のノルウェル・西のバスターナが日々、戦争で覇権を争っていた。

 まさに戦乱の世に一人の男の子が産声を上げた。
ラスタード二代目 皇帝の父ザリオン・ラスタードと母エリー・ラスタードが僕の父様と母様である。

「オギャー、オギャー」
(おしっこ出そうだよ?出してイイかな?)
「あらあら…ご飯かしらね~」

 こちらのマダムは使用人である。僕のお世話担当らしいけど……少し噛み合わない。
 ジェネレーション・ギャップというやつだと思って諦めて泣くとしよう!

「オギャー、オギャー!?」
(ミルクじゃないよ、パンツだよ!?)
「あら?おしめが濡れてるわね…替えましょうね」
「バブゥ、バァ♪」
(よし、正解だ!しっこ臭くなる前で良かった。)

 何故だか、僕は赤ちゃんなのに自分を客観的に考えれるッポイ……実は天才なんじゃぁ……!?

 しかし、生まれて直ぐに親がいないなんて……この家庭問題はどうなってる?

「バブゥ~バァ、バブ……」
(そこの使用人さんは父様と母様知らない?)

「あれ?さっきおしめを変えたばかりなのに…何かしら……でも、メッチャ笑顔だわ?!」

 僕は考えた……泣くと要らぬ誤解が生まれるようなのでここは最高の笑顔で意思表示をしようじゃないか!!

「ばぁぶう♪あぁい♪」

 どうだ!笑顔かつ、このムチムチの手を元気よく動かす事で何かアピールしているときっと気づくはず……いや!きっと気づく!な、、早く……

 そうしていると使用人は僕に笑顔を向けると僕の体をヒョイと持ち上げていた。

「ぶぁ!ばぶぅ?あぁ……」
(何してんの!?)

 彼女は僕が遊んで欲しいのだと勘違いしてしまっているらしい。はぁ……気持ちを伝えるのは難しいのだな…と赤子のフェルは密かに思っていたのだった。
 
◇◇◇
 
 赤子の苦悩から10才の誕生日を迎えていた。
実は赤子の頃の記憶をしっかりと持っている…どうしてそんな昔の記憶を維持できているのかは知らないけど……。

 とにかく、僕は何にでも興味を持つようになり、王城にある書庫に入り浸ったり、剣術を習ったりと日々を楽しく過ごしていた。

 次の日の朝、城内を歩いていると兵士の話し声を耳にした。

「最近、近辺の街や村が経済難らしいぞ?」
「マジか……餓死がし者も出てたりするのか?」
「恐らくはな…城下町も不満があるらしい。」
(そんなにこの国は深刻な状態なのか?)

 僕は兵士達から離れると一人で考えていた。

「王族たる者、民の状況くらい知っていて当然…」
(一度、民の暮らしを見て回るのも大事な責務だと僕は思っている…まぁ、好奇心もあるけど……)

 再び歩き出そうとすると若い男性の声で兵と話をしている声に思わず、声の方に目をやった。

「今日はラティスの町に行く。調整しろ!」
「はっ!何人ほど同行させますか?」
「そうだな……5人の精鋭を用意しろ。」
「はっ!御意。」

 この傲慢そうな物言いをしているのは僕の兄でこのラスタード帝国の第一王子で名前はレオン・ラスタード王子18歳で腹違いの兄だ。

 僕の家族は王族という立場がある為、普通の家族とは少し毛色が違う…両親は子育てをしてはいけない事になっている。
 ゆえに親の温かさを知らないし、家族で集まる事もない。
 
 兄とも顔は何度かしか合わしたことは無いけど周りからは優秀な人だとは聞いてる。
 噂では王位を狙っているみたいだけど、問題が一つある…それは兄のお母さんがメイドで正妃じゃないことが王位を継げない理由だ。

(僕としてはレオン兄に王になってもらいたいよ)

 王とか面倒なだけで楽しくなさそうだし……。
まぁ、楽しい国を作るのはロマンがあって良いんだけど……。

(上に立つような器じゃないし…ムリムリ。)

 さて、誰かを呼んで町に繰り出しますか……
 
「!?」
「うわぁ!!? ……ポョん♪」

 何だこの柔らかい弾力は……これは一体!?

「おはようございます。ノル王子。」
(あっ…ルシアの胸の弾力だったのか……)
 
 この人は僕の専属のメイドで名前をルシア。
20歳、髪は深緑色に銀髪が一部混じっている。顔立ちは小顔で童顔である。

 帝国の王城で働くメイドの中でダントツの美人。
(メイドの質的に……父様の好みだろうか……)
 
「あぁ…えと、おはようルシア!」
「おはようございます…ノル王子。」
「ところで……」
(メッチャ見てくる…これは回避が得策!!)
 
「どちらに行かれるのです?お付きも付けないで…城外は危険ですよ?」
「そうだね…って何故に城外だと分かったの!?」
「うーん……勘ですかね?それにその反応……」

(え?完全にバレてる雰囲気……)

「はぁ……。仕方ないですね。ノル王子はどちらに行きたいのですか?」
(これは……正直に言うのが正解だ!)

「実は…」

 兵士達のヒソヒソ話を聞いて城下町がどうなってるのかが気になっている事を少々、饒舌じょうぜつにかつ、正直にルシアに話した。

 すると…ルシアは少し驚いた表情を見せると何故か頭を撫でられた。
 普通はメイドが王子の頭を撫でる行為は処罰対象だけど、僕は許している。
 
「ちょ…ちょっとルシア!?」
「いいぇ、ノル王子の成長にウルっと来ましたよ」
(ウルっと?涙の一粒も流してないが?)

「さて、私となら一緒に城下町へ行けますよ?」
「じゃあ、お願いするよ!」

 まさかルシアと一緒に城門をスムーズに出るとは思ってもみなかったけど…どんな状況かをこの目で見れるチャンスだ!

(フフッ♪ノル王子ったら楽しそうネ♪)

 城門から城下町へ架かる橋を渡り切ると部屋から見下ろしていた景色が目の前に広がっていた。
 しかし……城下町に住まう民達の様子は良いとは言い切れないほどに疲れ果てているようだった。

「ルシア…これがこの国の状態なのか……?」
「はい。民は疲弊し、圧政に苦しんでおります。」
(これ程までなんて……)
「王族や貴族が優雅に暮らす一方では平民は貧しい生活に耐えきれず、自殺者も増えております。
 もっと悪い状況は盗賊や反乱分子が増える懸念要素に上は気づいていない事ですね。」

 僕の住まう国は幸せな国じゃなかったのか…?

「このままじゃ……ダメだッ!!」
「どうするつもりですか?」
「それは…今から考えるけど、直近の問題は民の抱える不安や問題点に耳を傾ける事だと思うんだ!」

 それから時間がある日はルシアにお願いして町へと足を運んでは変装して町に溶け込むことにした。
(旅人の兄弟って設定にしてみた。)
 そこで沢山の愚痴や意見が聞けた。それを城に戻って税担当大臣をコッソリ呼び出して相談すりことにした。

「ノル王子…確かに税収を増やすには良い方法ですが、他の町から人を呼び込むなどできるのでしょうか?」
「この町の特産を活かす為に行商人の力を借りて他国や周辺の町に宣伝してもらうのはどうですか?」
「この国の特産…工芸品や装飾品さらに果物などを売り込めれば店も元気になり、国も潤うかもしれませんぞ!?」
「そうでしょう?これはランゼル税担当大臣が考えた事にして下さい!あまり、目立つのは避けたいので……宜しいですか?」
「それは構いませんよ。分かりました。」
 
 これで税についての問題は解決した。
それから半年後……僕が考えた特産を活かした宣伝作戦は見事に成功したのだった。
 後に『商業』と呼ばれ、今までのような領地内だけの取り引きから世界中の取り引きへと広がった瞬間だった。

 

 
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