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31 野生のあばずれが現れた!
しおりを挟むクラスのみんなで移動教室に向かっていると、
きゃぁ~~~~~、絹を引き裂くような悲鳴が聞こえた。
だけど、なんか違和感・・・・そうか、野太い声だからか。
野太い声の悲鳴?なんで?
声の聞こえたところまでたどり着くと・・・
そこにはゴウゼル様と、それにがっぷりとしがみつく例の編入生・・・。
おいおい、どうなってるんだ?
ついてきたトマスはじめクラスの男子が何とか引きはがすが、
「やぁだぁ、そんなところさわってぇ。そんなにあたしにさわりたいのぉ?」
なんとも斜め上、意味不明・・・。
全員が目が点だよ。
「と、突然陰から飛び出してきて・・・、エルザからは…女の子に絶対手を上げちゃいけないって言われてるし・・・なのに・・・く、唇を奪おうとしてきて・・・」
シャツの前を掴み、シクシク泣く筋肉・・・。
「もうヤダ、お婿に行けない」
大丈夫じゃないかな?
仕方がない、急いでエルザ様を迎えに行く。
よかった、まだ授業前だった。
「エルザ様、大変です」
近くまで行ってそっと小声で話しかける。
「あ、セリーヌ嬢、どうしたの?」
「実は・・・野生のあばずれが現れまして、ゴウゼル様がおそわれそうになりました」
「は?」
「幸いまだ未遂ですが、お婿に行けないと泣いてまして。
エルザ様に来ていただきたいんです」
「どういうことだ?」
あ、悪魔と眼鏡も同じクラスだった・・・。
状況を説明すると、皆で一緒にいくことになってしまった。
「あ~~、アレクとクロード~、会いにきてくれたのぉ?」
「・・・」
なんていう前向き・・。
そして、呼び捨て、何という度胸。
あ、二人はものすごく表情が無になっている。
エルザ様は泣いているゴウゼル様に近寄ると頭をナデナデ。
それでようやく落ち着いたようで、そのまま二人は保健室へと向かった。
「で、何をしたんだ?」
クロード様が眼鏡をきらりと光らせ、低い声で尋ねる。
「え~、やきもちやいてくれてるんですかぁ?」
何故そうなる・・・。
「ちょっと角を曲がったら、ステキな男性とぶつかっちゃったんですぅ。
それでぇ、その男性がぁ、あたしに抱き着いてぇ~」
「セリ、どうなんだ?」
「いや、私たちが見たのは嫌がるゴウゼル様にがっぷりしがみついてました」
「だろうな」
はぁあ、と大きなため息をつくクロード様。
「もう我慢ならん、クロード、このまま学園長室に連行しろ」
「はい」
「え~、あたしを学園長室にぃ?何でですかぁ?」
なぜか嬉しそうにクロード様の腕に絡みつきながら連行される彼女。
「なあ、セリ。あれはなんだ?」
「話が通じませんから全くどういう人なのかも、名前すらわかりません」
「その、ミーナリア嬢の時のようには」
「無理ですね。だって、どんなに仲良くしようと声をかけようが、お誘いしようが、ミーナリア様の時のように一緒に来てくれませんから・・・」
「なるほど・・・」
「彼女たちにどうにか頼めないかな・・・」
「だから、無理ですって、【貴婦人会】の皆様もあの手この手で手を差し伸べているんですけど、
ま~~~~ったく無視ですよ、無視。
さすがの皆様も手の打ちようがありませんね」
そうなのだ、ミーナリア様も【貴婦人会】の皆様も毎日朝から馬車溜まりで待っているし、休み時間になると勉強を教えたり、食堂に誘いに行くのだが、まったく聞いちゃいない。
顔のいい男子には話しかけるか、食堂で生徒会の皆様の食事に乱入するか、とにかく制御できないのだ。
「てか、あの人女子はその辺の空気と同じとこもっていそうですし、私はじめ、皆名前すら知りませんよ」
「!!」
カイト様、驚きすぎて引いてますな。
「どうしたらいいと思う?」
え~知らないよ、あんなの。
ミーナ様も最初は変な子だったんだけど、ちゃんと理由があったし、私たちの声に耳を貸してくれたし。
それとは全然違うんだよね。
どうしたらいいのか、本当に悩ましい人だよ。
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