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第二章

神と悪魔

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トーマだけがその光景を見ている

 意識が無くなる寸前、愛しい人の死にゆく姿を間近で見た時、トーマの中の何かが弾ける!
 
 ――……エリィ……エリィ……エリィ……――

「エリィィィ~!」

 白い波動がトーマを中心に広がる
 その波動はサンスクリットのみを吹き飛ばし、みんなの傷を癒していく
 
 死にかけだったトーマの体が再生していく、呪いすらも「白き波動」でかき消される
 
 トーマは一瞬で移動してエリィが倒れてしまう前に抱きとめ優しいオーラで包み込む
 
 エリィの貫かれた胸も服も再生していく
「トーマ……くん?」
 エリィは攻撃を受けたことも治されたことも気付いていない
 サンスクリットの攻撃も光速で、トーマの治癒も光速で完了していた!
 
「トーマっち~……さっきまでボロボロになってたソ……うっ……う……」
「トーマ……お前……目の色」
「……トーマさん……別人のように……」
駆け寄ろうとするがトーマは手で制する

「心配しなくていいよ……」

 黒い目だったトーマの目は変色し「碧眼へきがん」になっている

 エリィを抱いたまま見つめ合う

「もう大丈夫だよ……エリィ……今度は絶対守る!」
「今度?トーマくん!目の色が変わっています」
「そうなの?……とにかく今はアイツをなんとかするしかない!……エリィ……」

「はい」

「この戦いが終わったら伝えたい事があるんだ……だから絶対勝つ!」

「……わかりました……でしたら絶対に伝えて下さいね……待ってます」

「了解!これで頑張れる!」

 トーマには現在「耳鳴り」がまったく無い、「うつろの間」にいる

「覚醒アゥフ」状態!

 ゆっくりとサンスクリットに近付いていくトーマの
右手はドームから「白い手」に戻っている

 右手が白く輝くナノマシンのように分解し形成されていく!

「クレアーレグローブ!天羽々斬あめのはばきり!」

白く輝く剣を創造する!

 トーマはデュランダルを解除して「天羽々斬」のみを握り対峙する!

サンスクリットは闇の波動を全身から放ち周囲を消し飛ばす!

 トーマは光りの波動で迎え撃つ!

 天をわかつほどの衝撃が空を割り
 
 波動のぶつかり合いが地を揺らす

 お互い一瞬で間合いを詰めて剣戟けんげきの音が響き渡る!

「妖刀村正」と「天羽々斬」のつば迫り合い!

 サンスクリットは二刀なので左手の「泛塵はんじん」で斬りかかるが光りの壁がトーマをガードする!

抑制よくせいのルークス!」
 
 トーマは「天羽々斬」の能力で光りの壁を展開する事が出来る!

 左手の指で絵を描くように「壁を描く」と、見える範囲のどこでも「光りの壁」を創り出す事が出来る!
 これをトーマは「抑制のルークス」と呼んだ

「……そのチカラ……お前は「クォーク」か?……」

「――クォーク?いや神様じゃないよ」

「そうか!そういう事か!「クォーク」よ!」

「いや、だから違うって!」

 サンスクリットは二刀で構え自らの両手の関節を外すと「見えない鞭」のように振り回す!

 一振り一振りで地が裂け、空気中の魔素すらも蒸発するような斬撃を放つ!

 二人の周りを飛び散る砂や石に立って移動するサンスクリット!
 サンスクリットにとって三百六十度が地面!

「アゥフ」に覚醒したトーマは全ての斬撃を舞うように躱していく!

「ハハハッ!いいぞ~!それでこそ「クォークだ!」」
 サンスクリットは笑いながら斬撃を放つ!

 全ての角度、距離感、高低差すらも自由自在に変化して繰り出す攻撃はイルミナの「未来視」で予知しても対応出来ないだろう

 そもそもこの二人の動きを見ることすら困難である
 
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