14 / 202
第一章
商業都市オーシャン
しおりを挟む
カリヨン村で皆に別れを告げ馬車での道中
荷台にトーマとエリィは乗り、次の目的地まで怒涛の日々を振り返る
トーマにとっては特に非日常的な経験の連続で、隣に座る美少女の事は愛しくてたまらない、がそんな事は口が裂けても言えない
なぜなら振られる事が確定しているからだ、エリィには想い人がいる
それは出会ったその日に言われたからだ
しかし今、その愛しい彼女の顔がトーマの肩に触れているのだ
――あぁ……エリィ・マイ・ラブ・ソウ・スウィート……――
トーマの心にいとしのエリーが流れる
すっかり気が抜けてしまったのだろう、カリヨン村でのお別れは涙々 で疲れて、トーマの肩を借りるほどの無防備さだ
「大丈夫です……トーマく……ん」
エリィがとんでもない寝言を言った
――ああ……エリィ君はなんて罪深いんだ――
大きな街が見えて来る城塞都市のように壁に覆われて、その壁には所々灯台のような物も建っている
「もうすぐですね、次は「商業都市オーシャン」です」
エリィが仮眠から目覚め残念そうにするトーマを気にする事もなく、眩しい笑顔で言う
「オーシャン……オーシャン……あれっ?」
トーマはどこかで聞いたなと思っていると
「気付きましたか?ガランドさんが仰ってた「シュンカ・オーシャン」さんが生まれ育った街です」
エリィの言葉にトーマは納得し、ここがまだ最終目的地でない事を知る
「凄い大きな街だけど王都ってもっと凄いの?」
「ここはグリディアでもっともお金が動く場所と言われています、酒場はもちろん武器防具、ギャンブルに花街、なんと言っても冒険者ギルドです」
――花街!……いっいや――
「冒険者ギルド?じゃあオレみたいな無職でも仕事をする事が出来るってこと?騎士を目標にしてたけど先立つものをどうしようか考えてたんだ、いちおう師匠にお金貰ったけど、これからの事考えたらね~」
トーマは「これからの事」の部分でちらっとエリィにアピールしてみた
「それならギルド登録が一番近道ですね、冒険者として名を挙げると騎士団から声が掛かります、トーマくんならそうするのが一番早いと思います」
エリィにアピールはスルーされたが期待はされてるようだ
「この街にはどれくらい滞在するの?」
「ニ、三日ですかね……準備?とかお買い物?……あっそうですトーマくんお洋服を買われたほうが、目立ちますし……」
――んっ?なんかエリィがしどろもどろに……なんかあるな……オレはエリィの挙動に敏感なのだ――
街に到着しここまで送ってくれたルーさんにお礼を言った
ルーさんはジェラさんの旦那さんでわざわざ馬車を出してくれたのだ
街の入り口では何やら行列が出来ている
「街に入るのもけっこう大変なんだね、セキュリティーとか厳しいのかな?」
トーマには身分証のような物は無い、髪は長いしラビスでは珍しい服を着ているのでちょっと怪しい、そう不安に思っているとエリィがその不安を取り除く
「わたしがコレを持っているので、心配しなくて大丈夫ですよ」
エリィはバッグから銀製のブローチを出した
そのブローチで同行すれば問題なく通過出来るそうだ
「そっか……ありがとう」
――エリィにいつもおんぶに抱っこで悪いなぁ……おんぶや抱っこはしたいけど――
順番待ちをしていると何やら前のほうで揉めているようだ
「なんでまた後ろに並び直さんといけんソ、ウチの順番っちゃ!」
揉めているのは薄いオレンジ色のクセ毛で獣耳のある獣人の女の子だ
肩が露出し胸が強調されるように服の上から防具のようなコルセットを着けて、ショートパンツを履いた活発な服装だ
「うるさい!獣人は最後だ!後ろに並べ!」
門兵が厳しい声で怒鳴る
「さっきもそう言ったソ!いつになったら入れてくれるんっちゃ!」
――凄い訛りだな……獣人初めて見た、けっこう可愛い……いやかなり可愛いぞ………いやいやオレにはエリィというものが――
「獣人ってもしかして差別されてるの?」
「残念ながら……グリディアでは十五年前まで奴隷として迫害を受けてました、今はもう奴隷は撤廃されたのですが……名残りはまだあるのです」
トーマの問いにエリィは暗い顔になる
――奴隷か……レイジンが言ってたのはこういう事も含めての事なのかなぁ――
「なんとかしてあげたいね」
トーマは優しくエリィに言うと「そう言うと思ってました」とエリィは微笑み返してくれる
獣人の子が渋々後ろに引き返す所を呼び止める
「良かったら一緒に入りますか?」
トーマが声を掛けると獣人の子はキョロキョロして「ウチ?」と声を掛けられた事に驚いている
「オレ達と一緒なら問題なく入れると思うよ」
獣人の子は「いいソ?」と不思議そうに「なんでっちゃ!」と胸を隠すように疑う
――いやいやいや、そんな目では見てな……い……いやいや見てない事もないけど……期待はしてないよ――
「トーマくんはそんなやましい事を考えたりしません」
エリィが獣人の子に頬を膨らませて可愛いく言う
――……うん――
「ゴメンゴメン冗談なソ!ありがとっちゃ!じゃあ……オネガイ!」
とりあえず先頭まで来た
「おい!お前また……」門兵は言いかけたが
「この方も連れです、一緒にお願いします」
エリィはブローチを門兵に見せる
「いっいやしかし……」
「お願いします!」エリィの口調が少し強い
「失礼しました……どうぞ」
門兵の横を通る時、獣人の子はベロベロバーみたいな感じで通る
それをトーマは「何やってんだ、バカ」と注意する、初対面でかなり絡みやすそうだ
荷台にトーマとエリィは乗り、次の目的地まで怒涛の日々を振り返る
トーマにとっては特に非日常的な経験の連続で、隣に座る美少女の事は愛しくてたまらない、がそんな事は口が裂けても言えない
なぜなら振られる事が確定しているからだ、エリィには想い人がいる
それは出会ったその日に言われたからだ
しかし今、その愛しい彼女の顔がトーマの肩に触れているのだ
――あぁ……エリィ・マイ・ラブ・ソウ・スウィート……――
トーマの心にいとしのエリーが流れる
すっかり気が抜けてしまったのだろう、カリヨン村でのお別れは涙々 で疲れて、トーマの肩を借りるほどの無防備さだ
「大丈夫です……トーマく……ん」
エリィがとんでもない寝言を言った
――ああ……エリィ君はなんて罪深いんだ――
大きな街が見えて来る城塞都市のように壁に覆われて、その壁には所々灯台のような物も建っている
「もうすぐですね、次は「商業都市オーシャン」です」
エリィが仮眠から目覚め残念そうにするトーマを気にする事もなく、眩しい笑顔で言う
「オーシャン……オーシャン……あれっ?」
トーマはどこかで聞いたなと思っていると
「気付きましたか?ガランドさんが仰ってた「シュンカ・オーシャン」さんが生まれ育った街です」
エリィの言葉にトーマは納得し、ここがまだ最終目的地でない事を知る
「凄い大きな街だけど王都ってもっと凄いの?」
「ここはグリディアでもっともお金が動く場所と言われています、酒場はもちろん武器防具、ギャンブルに花街、なんと言っても冒険者ギルドです」
――花街!……いっいや――
「冒険者ギルド?じゃあオレみたいな無職でも仕事をする事が出来るってこと?騎士を目標にしてたけど先立つものをどうしようか考えてたんだ、いちおう師匠にお金貰ったけど、これからの事考えたらね~」
トーマは「これからの事」の部分でちらっとエリィにアピールしてみた
「それならギルド登録が一番近道ですね、冒険者として名を挙げると騎士団から声が掛かります、トーマくんならそうするのが一番早いと思います」
エリィにアピールはスルーされたが期待はされてるようだ
「この街にはどれくらい滞在するの?」
「ニ、三日ですかね……準備?とかお買い物?……あっそうですトーマくんお洋服を買われたほうが、目立ちますし……」
――んっ?なんかエリィがしどろもどろに……なんかあるな……オレはエリィの挙動に敏感なのだ――
街に到着しここまで送ってくれたルーさんにお礼を言った
ルーさんはジェラさんの旦那さんでわざわざ馬車を出してくれたのだ
街の入り口では何やら行列が出来ている
「街に入るのもけっこう大変なんだね、セキュリティーとか厳しいのかな?」
トーマには身分証のような物は無い、髪は長いしラビスでは珍しい服を着ているのでちょっと怪しい、そう不安に思っているとエリィがその不安を取り除く
「わたしがコレを持っているので、心配しなくて大丈夫ですよ」
エリィはバッグから銀製のブローチを出した
そのブローチで同行すれば問題なく通過出来るそうだ
「そっか……ありがとう」
――エリィにいつもおんぶに抱っこで悪いなぁ……おんぶや抱っこはしたいけど――
順番待ちをしていると何やら前のほうで揉めているようだ
「なんでまた後ろに並び直さんといけんソ、ウチの順番っちゃ!」
揉めているのは薄いオレンジ色のクセ毛で獣耳のある獣人の女の子だ
肩が露出し胸が強調されるように服の上から防具のようなコルセットを着けて、ショートパンツを履いた活発な服装だ
「うるさい!獣人は最後だ!後ろに並べ!」
門兵が厳しい声で怒鳴る
「さっきもそう言ったソ!いつになったら入れてくれるんっちゃ!」
――凄い訛りだな……獣人初めて見た、けっこう可愛い……いやかなり可愛いぞ………いやいやオレにはエリィというものが――
「獣人ってもしかして差別されてるの?」
「残念ながら……グリディアでは十五年前まで奴隷として迫害を受けてました、今はもう奴隷は撤廃されたのですが……名残りはまだあるのです」
トーマの問いにエリィは暗い顔になる
――奴隷か……レイジンが言ってたのはこういう事も含めての事なのかなぁ――
「なんとかしてあげたいね」
トーマは優しくエリィに言うと「そう言うと思ってました」とエリィは微笑み返してくれる
獣人の子が渋々後ろに引き返す所を呼び止める
「良かったら一緒に入りますか?」
トーマが声を掛けると獣人の子はキョロキョロして「ウチ?」と声を掛けられた事に驚いている
「オレ達と一緒なら問題なく入れると思うよ」
獣人の子は「いいソ?」と不思議そうに「なんでっちゃ!」と胸を隠すように疑う
――いやいやいや、そんな目では見てな……い……いやいや見てない事もないけど……期待はしてないよ――
「トーマくんはそんなやましい事を考えたりしません」
エリィが獣人の子に頬を膨らませて可愛いく言う
――……うん――
「ゴメンゴメン冗談なソ!ありがとっちゃ!じゃあ……オネガイ!」
とりあえず先頭まで来た
「おい!お前また……」門兵は言いかけたが
「この方も連れです、一緒にお願いします」
エリィはブローチを門兵に見せる
「いっいやしかし……」
「お願いします!」エリィの口調が少し強い
「失礼しました……どうぞ」
門兵の横を通る時、獣人の子はベロベロバーみたいな感じで通る
それをトーマは「何やってんだ、バカ」と注意する、初対面でかなり絡みやすそうだ
3
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました
四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。
だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる