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第一章
聴啞の騎士と盲目の少女⑤
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三日間の稽古も終わり家に帰ると、エリィとサラはお疲れ様ですと拍手で迎えてくれた
――たったの四日間一緒に過ごしただけなのに……何かを目指すって……なんか感じたことない……褒められた感じ?分かんないけど、なんかいい!――
「トーマくん、なんだか…たくましくなりましたね」
エリィがご褒美のような笑顔で微笑む
――眩しい……トーマくん!たくましくてなんか筋肉スゴいです、そう?、はい!とても頼りがいがあります、だって守りたい人がいるから、えっそれって、うん、エリィ君の事だよ、トーマくん……エリィ……――
「うん、ありがとう!師匠にいっぱい鍛えてもらえたからね!」
妄想を振り払いトーマは今回の事でラビスで自分がどうありたいかを考えた
この短期間だけでも人と向き合っている事で自分がどんどん変わっている実感がある
エリィはもちろんサラやドイル、村のみんなに対してする事が自分に影響を与えるということ
感謝なんて感じたことなかったのに真剣に向き合えばこんなにもみんなに対して「ありがとう」と思える
自分にこんな感情を感じさせてくれたことに感謝した
たまに妄想が暴走するので気を付けないといけない
ラビスに来て五日目の朝
いよいよカリヨンの森に行ってネクロシープを探す
作戦はこうだ
一.トーマがエリィからアーティファクトを預かり魔物を引き付けて「呪い」をかけた魔獣を探す
トーマは魔物の位置がある程度分かるので把握する
ニ.なるべく魔獣を誘導して少し離れた所に待機しているドイルと合流する、その時トーマは無理して戦わないこと
三.ドイルが魔獣を討伐してサラと村のみんなの「呪い」を解く、完璧な作戦!
エリィは治癒が使えるのでトーマのフォローをすると言った
トーマは最初止めたが「アーティファクト」の事もあるので承諾した
最悪アーティファクトだけでもエリィに渡して自分がしんがりを務めればエリィの「大事なモノ」は守れると考えたのだ
「では、行きましょうか!」
朝食を摂り準備万端で家を出ると「気をつけてね」とサラは玄関で三人を見送った
おそらく一日中かかるだろうと予想している
「アーティファクト」がどこまで引き付けるのかわからないので森の中をくまなく探すことになる
「アーティファクト」のことはドイルには告げていない、エリィがそのほうがいいと言うから内緒にしている
何故魔物を引き付けるのかはトーマの体質だと納得してもらった
「師匠!この剣ありがとうございます!」
トーマの腰にはドイルの家の倉庫にあった長剣が下がってる、剣の稽古をして少し認めてくれたのか無言で渡されたのだ
「……」
リンリンと鈴が鳴る
トーマの腰には長剣とライトセーバー(スタンガン)がぶら下がっている
ライトセーバーはバッテリーがあるから温存する予定だ
ポケットには布でグルグルに包んだ大事な「アーティファクト」が入っている
「良かったですね、ドイルさんもトーマくんを認めてくれたみたいで」
エリィがそんなことを言う
――も?今もって言ったよな……わたしトーマくんの事認めてるんです!エリィ、最初オレは君のこと襲おうとしてたんだよ、だってこんなに頑張ってるトーマくんを見てたら、エリィ……トーマくん……――
「うん!師匠直伝の剣技で死なないように頑張る!」
トーマはグッと拳を握った
カリヨンの森の入り口に到着した、ここからはトーマとエリィが先行する
なるべくドイルと距離を開けないと警戒されると思い相当距離を開けている
奥に進むと案の定魔物がトーマを襲う!
フラッディークだ!
「エリィ離れて!」「はい!」
トーマは剣を抜く
エリィは少し離れる
トーマは気配を感じるのでどの位置からフラッディークが飛んでくるか分かる!
ドイルとの稽古で立ち回りも、剣の使い方も格段に上達している!
素早い動きで三体の魔物が左右、正面からとトーマに襲いかかる!
しっかり腰を落とし剣を三閃!
空気を裂くほどの剣速が出る!
トーマ自身は試し斬りの感覚で振ったのだがあっさりと三体のフラッディークを瞬殺!
――ふぅ毒があるから気をつけないといけないけど自分が強くなった実感がある……毒か…ちょっと噛まれてもよかったかも……そしたらまたエリィが……いやいやちょっと思考が……今はダメだ――
「凄いです!トーマくん!騎士様です!」
エリィはパチパチと手を叩く
「――っ」
――騎士様!……トーマくん!騎士様になっても側にいて下さい、エリィ……何を言ってるんだい、オレは君だけの騎士だよ、トーマくん……エリィ……――
「エリィは大丈夫?」
エリィに怪我が無いのを確認し探索を続ける
それから何体か倒してかなり奥まで歩いて行くと、先のほうで感じた事のない気配を感じる
ドイルは遠目から二人を見守る
――本当に魔物が寄ってくるんだな……それにしてもなかなかいい動きだ……トーマはいったい何者なんだ、服装もこの国の者ではない……まさか……いやそれはありえない――
「この先に気配を感じる……エリィ気をつけて」
エリィは頷きそれを確認してトーマは気配のほうに近づく、アーティファクトのせいで完全に殺気立ってこちらを睨んでる
シュルルル……と空気を吸う音がする
「えっヒツジ?いや手足が人間だけど……怖っ」
前方に見えるのはヒツジの顔にグルっと巻いた角があり体は毛で覆われてるが手足が人間の魔物、体長は一メートルくらいある
「ヘルシープです!凶暴なので気をつけて下さい」
ヘルシープは距離を詰めて鋭い爪を振り抜く
――スピードはツチノコほどじゃないな左側から攻撃してくるから右下段に構えて相手の攻撃に合わせて斜めに振り上げるようにカウンター………こう!――
ヘルシープの腕を切り落とす!
――振り上げた剣を袈裟斬りに…………こう!――
あっさりヘルシープを初見攻略
トーマはドイルとの稽古により相手の行動を考えて戦うようになっていた
――うわ~魔物の体が人間っぽいとちょっと罪悪感があるな~……ヒツジ男と名付けよう――
「エリィ!魔物が左から来るからオレの右後ろに!」
エリィもしっかりトーマの指示に従って動く
もう一体のヘルシープを倒した時、トーマの体に悪寒が走る!右後ろに下がらせたエリィの右の影から唸りを上げて何かが飛び出して来る!
「――っ!」
エリィを狙って大きな「影」が襲う!
「なっ!」
――これは間に合わない!――
振り向いたトーマは咄嗟に持っている剣を投げる!
剣はその「影」の手の平に突き刺さる!
奇声を上げ動きが一瞬止まったところにトーマはエリィの前に体を投げ出す!
大きな「影」は逆の拳で打ち下ろす!
トーマは咄嗟に右腕でガードするが押し潰すようなパワーで鈍い音が響き、意識が飛びそうになる!
腕が折れて頭を揺さぶられ、グロッキー状態のトーマ!
先程トーマが投げた剣を「影」は自ら引き抜きトーマの腹に突き刺した!
「――――――っ!」
トーマは膝をつき虚な目で見上げる、体長ニメートル以上ある「魔獣ネクロシープ」が立っている
ヘルシープを巨大化したような出立ちでトーマにトドメを刺そうと振りかぶる!
――これはやばいっ――
トーマは反応出来ない
エリィは目の前の惨状があまりに一瞬で何が起こったのか理解出来なかったが、無我夢中で俯いたトーマの体を庇うように抱きしめた!
「――――!」
飛ぶ斬撃がネクロシープの腕を斬る!
切り落とせてはないが深く傷付けた!
後方から物凄い形相で突っ込んで来るのは遥か後方にいたドイルだ!
「キサマカ……イツモ…サラノソバニイルヤツハ」
ネクロシープはそう呟くと
「ダークネスフィールド!」
ネクロシープが闇魔法を唱えた!
半径十メートル程の闇の世界、前後左右が分からないほどの暗闇が辺りを包む!――――――――――――――
数十秒で魔獣の気配が無くなり、暗闇が晴れた
トーマは意識はあるが朦朧としており、自ら腹の剣を抜き吐血した
ボロボロの体でドイルに伝える
「あ……アイツです……サラちゃんの名前……言ってました……追って下さい…村の方です……禍々しい気配が村の方に……急いでください……」
トーマの肩にそっと手を置きドイルは駆け出した
「トーマくん……トーマくん……」
エリィは泣きながら治癒魔法をかける!呼吸を整えて、心が乱れると魔法が乱れる、トーマの頭を膝に乗せ目を瞑り集中する
――……ひざまくらキタ~……死ぬほど痛いけど死ぬほど嬉しい……――
――たったの四日間一緒に過ごしただけなのに……何かを目指すって……なんか感じたことない……褒められた感じ?分かんないけど、なんかいい!――
「トーマくん、なんだか…たくましくなりましたね」
エリィがご褒美のような笑顔で微笑む
――眩しい……トーマくん!たくましくてなんか筋肉スゴいです、そう?、はい!とても頼りがいがあります、だって守りたい人がいるから、えっそれって、うん、エリィ君の事だよ、トーマくん……エリィ……――
「うん、ありがとう!師匠にいっぱい鍛えてもらえたからね!」
妄想を振り払いトーマは今回の事でラビスで自分がどうありたいかを考えた
この短期間だけでも人と向き合っている事で自分がどんどん変わっている実感がある
エリィはもちろんサラやドイル、村のみんなに対してする事が自分に影響を与えるということ
感謝なんて感じたことなかったのに真剣に向き合えばこんなにもみんなに対して「ありがとう」と思える
自分にこんな感情を感じさせてくれたことに感謝した
たまに妄想が暴走するので気を付けないといけない
ラビスに来て五日目の朝
いよいよカリヨンの森に行ってネクロシープを探す
作戦はこうだ
一.トーマがエリィからアーティファクトを預かり魔物を引き付けて「呪い」をかけた魔獣を探す
トーマは魔物の位置がある程度分かるので把握する
ニ.なるべく魔獣を誘導して少し離れた所に待機しているドイルと合流する、その時トーマは無理して戦わないこと
三.ドイルが魔獣を討伐してサラと村のみんなの「呪い」を解く、完璧な作戦!
エリィは治癒が使えるのでトーマのフォローをすると言った
トーマは最初止めたが「アーティファクト」の事もあるので承諾した
最悪アーティファクトだけでもエリィに渡して自分がしんがりを務めればエリィの「大事なモノ」は守れると考えたのだ
「では、行きましょうか!」
朝食を摂り準備万端で家を出ると「気をつけてね」とサラは玄関で三人を見送った
おそらく一日中かかるだろうと予想している
「アーティファクト」がどこまで引き付けるのかわからないので森の中をくまなく探すことになる
「アーティファクト」のことはドイルには告げていない、エリィがそのほうがいいと言うから内緒にしている
何故魔物を引き付けるのかはトーマの体質だと納得してもらった
「師匠!この剣ありがとうございます!」
トーマの腰にはドイルの家の倉庫にあった長剣が下がってる、剣の稽古をして少し認めてくれたのか無言で渡されたのだ
「……」
リンリンと鈴が鳴る
トーマの腰には長剣とライトセーバー(スタンガン)がぶら下がっている
ライトセーバーはバッテリーがあるから温存する予定だ
ポケットには布でグルグルに包んだ大事な「アーティファクト」が入っている
「良かったですね、ドイルさんもトーマくんを認めてくれたみたいで」
エリィがそんなことを言う
――も?今もって言ったよな……わたしトーマくんの事認めてるんです!エリィ、最初オレは君のこと襲おうとしてたんだよ、だってこんなに頑張ってるトーマくんを見てたら、エリィ……トーマくん……――
「うん!師匠直伝の剣技で死なないように頑張る!」
トーマはグッと拳を握った
カリヨンの森の入り口に到着した、ここからはトーマとエリィが先行する
なるべくドイルと距離を開けないと警戒されると思い相当距離を開けている
奥に進むと案の定魔物がトーマを襲う!
フラッディークだ!
「エリィ離れて!」「はい!」
トーマは剣を抜く
エリィは少し離れる
トーマは気配を感じるのでどの位置からフラッディークが飛んでくるか分かる!
ドイルとの稽古で立ち回りも、剣の使い方も格段に上達している!
素早い動きで三体の魔物が左右、正面からとトーマに襲いかかる!
しっかり腰を落とし剣を三閃!
空気を裂くほどの剣速が出る!
トーマ自身は試し斬りの感覚で振ったのだがあっさりと三体のフラッディークを瞬殺!
――ふぅ毒があるから気をつけないといけないけど自分が強くなった実感がある……毒か…ちょっと噛まれてもよかったかも……そしたらまたエリィが……いやいやちょっと思考が……今はダメだ――
「凄いです!トーマくん!騎士様です!」
エリィはパチパチと手を叩く
「――っ」
――騎士様!……トーマくん!騎士様になっても側にいて下さい、エリィ……何を言ってるんだい、オレは君だけの騎士だよ、トーマくん……エリィ……――
「エリィは大丈夫?」
エリィに怪我が無いのを確認し探索を続ける
それから何体か倒してかなり奥まで歩いて行くと、先のほうで感じた事のない気配を感じる
ドイルは遠目から二人を見守る
――本当に魔物が寄ってくるんだな……それにしてもなかなかいい動きだ……トーマはいったい何者なんだ、服装もこの国の者ではない……まさか……いやそれはありえない――
「この先に気配を感じる……エリィ気をつけて」
エリィは頷きそれを確認してトーマは気配のほうに近づく、アーティファクトのせいで完全に殺気立ってこちらを睨んでる
シュルルル……と空気を吸う音がする
「えっヒツジ?いや手足が人間だけど……怖っ」
前方に見えるのはヒツジの顔にグルっと巻いた角があり体は毛で覆われてるが手足が人間の魔物、体長は一メートルくらいある
「ヘルシープです!凶暴なので気をつけて下さい」
ヘルシープは距離を詰めて鋭い爪を振り抜く
――スピードはツチノコほどじゃないな左側から攻撃してくるから右下段に構えて相手の攻撃に合わせて斜めに振り上げるようにカウンター………こう!――
ヘルシープの腕を切り落とす!
――振り上げた剣を袈裟斬りに…………こう!――
あっさりヘルシープを初見攻略
トーマはドイルとの稽古により相手の行動を考えて戦うようになっていた
――うわ~魔物の体が人間っぽいとちょっと罪悪感があるな~……ヒツジ男と名付けよう――
「エリィ!魔物が左から来るからオレの右後ろに!」
エリィもしっかりトーマの指示に従って動く
もう一体のヘルシープを倒した時、トーマの体に悪寒が走る!右後ろに下がらせたエリィの右の影から唸りを上げて何かが飛び出して来る!
「――っ!」
エリィを狙って大きな「影」が襲う!
「なっ!」
――これは間に合わない!――
振り向いたトーマは咄嗟に持っている剣を投げる!
剣はその「影」の手の平に突き刺さる!
奇声を上げ動きが一瞬止まったところにトーマはエリィの前に体を投げ出す!
大きな「影」は逆の拳で打ち下ろす!
トーマは咄嗟に右腕でガードするが押し潰すようなパワーで鈍い音が響き、意識が飛びそうになる!
腕が折れて頭を揺さぶられ、グロッキー状態のトーマ!
先程トーマが投げた剣を「影」は自ら引き抜きトーマの腹に突き刺した!
「――――――っ!」
トーマは膝をつき虚な目で見上げる、体長ニメートル以上ある「魔獣ネクロシープ」が立っている
ヘルシープを巨大化したような出立ちでトーマにトドメを刺そうと振りかぶる!
――これはやばいっ――
トーマは反応出来ない
エリィは目の前の惨状があまりに一瞬で何が起こったのか理解出来なかったが、無我夢中で俯いたトーマの体を庇うように抱きしめた!
「――――!」
飛ぶ斬撃がネクロシープの腕を斬る!
切り落とせてはないが深く傷付けた!
後方から物凄い形相で突っ込んで来るのは遥か後方にいたドイルだ!
「キサマカ……イツモ…サラノソバニイルヤツハ」
ネクロシープはそう呟くと
「ダークネスフィールド!」
ネクロシープが闇魔法を唱えた!
半径十メートル程の闇の世界、前後左右が分からないほどの暗闇が辺りを包む!――――――――――――――
数十秒で魔獣の気配が無くなり、暗闇が晴れた
トーマは意識はあるが朦朧としており、自ら腹の剣を抜き吐血した
ボロボロの体でドイルに伝える
「あ……アイツです……サラちゃんの名前……言ってました……追って下さい…村の方です……禍々しい気配が村の方に……急いでください……」
トーマの肩にそっと手を置きドイルは駆け出した
「トーマくん……トーマくん……」
エリィは泣きながら治癒魔法をかける!呼吸を整えて、心が乱れると魔法が乱れる、トーマの頭を膝に乗せ目を瞑り集中する
――……ひざまくらキタ~……死ぬほど痛いけど死ぬほど嬉しい……――
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