25 / 40
【第二章】
婚約破棄公爵令嬢リルオードは最後に第二王子の寵愛を受ける.10
しおりを挟む
「ではこちらもお見せしようか」
そういうと、別の書類もお見せ下さいました。
八月度献金額。
アッカーソン家、千百六十七万ゴルド。
ルッテンホルム家、九百八十一万ゴルド。
……あれ。
貯水池でもらったよりうんと多い金額を払っています。
こんな金額、いったいどこから……
「ここを見てご覧」
ウェントワース家 収支報告書。
「えっ!」
その名を見たわたくしも母様も、驚きの声を上げてしまいました。
「これは……もしかして父の払ったお金の一部が……」
「その通りだ。ウェントワース家に流れている。それもかなりの金額だ」
「え……じゃあ働いていた人には……」
「あまり行き渡らないだろうな。厳しい工事に、雀の涙ほどの賃金。すると当然? どうなると思う?」
「……手抜き工事……」
わたくしはハッとします。
水神の貯水池は……
「そう、だから決壊した。下流の村に流れ込んだ濁流で」
「千六百の村人が犠牲になりました。その責任は、全て父が負いました。イングラム家の没落は、決定的なものになりました」
「父君は、特に西部の民のため、インフラ整備に注力しておられた。それが民への雇用を産むと信じて。だが実際は……」
「ウェントワース家が一部を吸い上げていた」
だんだん、パズルのピースがはまるようにわたくしの周囲で起こってきた不幸の闇が晴れていきます。
「ああ。私は父上──国王陛下直々に、決壊事件の調査に当たるよう仰せつかった。さっきのメイドも、密偵のひとりだ。さっきのアッカーソン家の当主にも尋問をかけたよ。あっという間に吐いたさ。ウェントワース家との繋がりを。……かの家に行き着いたのが三年前。そして時を同じくして」
「わたくしが婚約破棄を言い渡された」
「その通りだ」
そういうと、別の書類もお見せ下さいました。
八月度献金額。
アッカーソン家、千百六十七万ゴルド。
ルッテンホルム家、九百八十一万ゴルド。
……あれ。
貯水池でもらったよりうんと多い金額を払っています。
こんな金額、いったいどこから……
「ここを見てご覧」
ウェントワース家 収支報告書。
「えっ!」
その名を見たわたくしも母様も、驚きの声を上げてしまいました。
「これは……もしかして父の払ったお金の一部が……」
「その通りだ。ウェントワース家に流れている。それもかなりの金額だ」
「え……じゃあ働いていた人には……」
「あまり行き渡らないだろうな。厳しい工事に、雀の涙ほどの賃金。すると当然? どうなると思う?」
「……手抜き工事……」
わたくしはハッとします。
水神の貯水池は……
「そう、だから決壊した。下流の村に流れ込んだ濁流で」
「千六百の村人が犠牲になりました。その責任は、全て父が負いました。イングラム家の没落は、決定的なものになりました」
「父君は、特に西部の民のため、インフラ整備に注力しておられた。それが民への雇用を産むと信じて。だが実際は……」
「ウェントワース家が一部を吸い上げていた」
だんだん、パズルのピースがはまるようにわたくしの周囲で起こってきた不幸の闇が晴れていきます。
「ああ。私は父上──国王陛下直々に、決壊事件の調査に当たるよう仰せつかった。さっきのメイドも、密偵のひとりだ。さっきのアッカーソン家の当主にも尋問をかけたよ。あっという間に吐いたさ。ウェントワース家との繋がりを。……かの家に行き着いたのが三年前。そして時を同じくして」
「わたくしが婚約破棄を言い渡された」
「その通りだ」
10
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる