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【第二章】
婚約破棄公爵令嬢リルオードは最後に第二王子の寵愛を受ける.09
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それから、二週間後。
離宮の庭園でパーティを開きました。
エングルフィールド王太子ご夫妻結婚三周年の華やかなパーティです。
三年前と違い、国王陛下と王妃様も主賓としてお越しになります。
「皆さま、ごきげんよう。ごきげんよう!」
クラリッサが来賓に上機嫌に手を振っています。
小さな息子も一緒です。
「あら、国王陛下、王妃様、ようこそお越しくださいました」
膝を曲げてたおやかにお辞儀をします。
とても、幸せそうに。
わたくしはそんなクララに、薔薇の植え込みの影から憎しみの眼差しを送り付けます。
──見てらっしゃい、クララ。あんたの罪を、最悪なタイミングで白日の下に晒してやりますわ。
……
「君の父上の努力を、踏みにじる者たちが王家の内部に存在する」
そう言って、アレクシス殿下はディナーの席で、謎のメイドさんからお受け取りになった紙をわたくしたちにお見せになりました。
「これは……」
一体なんなのでしょうか。
数字がたくさん。
何かの帳簿に見えます。
「あたり、帳簿だ。これは七年前に完成した水神の貯水池──所謂ダムだな、それの予算管理の為のものだ」
水神の貯水池。
父様が主導でお造りになられた、最も大きな公共事業。
完成式典にはわたくしも出席いたしました。
土を盛ってせき止めた人造の湖。
そのあまりの美しさと雄大さに、ヒトの創り出すモノの無限の可能性を、十四にして感じたのでした。
けれどその湖も今は……
その予算管理の書類に、何があるというのでしょうか。
「ここを見てほしい」
殿下はそう仰ると、支払い先の名前を指さしました。
「……アッカーソン土木建築組……七月度請求額……七十五万ゴルド」
普通の会社に見えます。
「ここもだ」
「……ルッテンホルム設計事業所……七月度請求額……二十四万ゴルド」
……特に、おかしいようには見えません。
「それに、ここも……あとここだ」
殿下は幾つか指しますが、商売の知識のない女のわたくしには、何が問題なのかすらわかりませんでした。
「ではこちらもお見せしようか」
そういうと、別の書類もお見せ下さいました。
離宮の庭園でパーティを開きました。
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三年前と違い、国王陛下と王妃様も主賓としてお越しになります。
「皆さま、ごきげんよう。ごきげんよう!」
クラリッサが来賓に上機嫌に手を振っています。
小さな息子も一緒です。
「あら、国王陛下、王妃様、ようこそお越しくださいました」
膝を曲げてたおやかにお辞儀をします。
とても、幸せそうに。
わたくしはそんなクララに、薔薇の植え込みの影から憎しみの眼差しを送り付けます。
──見てらっしゃい、クララ。あんたの罪を、最悪なタイミングで白日の下に晒してやりますわ。
……
「君の父上の努力を、踏みにじる者たちが王家の内部に存在する」
そう言って、アレクシス殿下はディナーの席で、謎のメイドさんからお受け取りになった紙をわたくしたちにお見せになりました。
「これは……」
一体なんなのでしょうか。
数字がたくさん。
何かの帳簿に見えます。
「あたり、帳簿だ。これは七年前に完成した水神の貯水池──所謂ダムだな、それの予算管理の為のものだ」
水神の貯水池。
父様が主導でお造りになられた、最も大きな公共事業。
完成式典にはわたくしも出席いたしました。
土を盛ってせき止めた人造の湖。
そのあまりの美しさと雄大さに、ヒトの創り出すモノの無限の可能性を、十四にして感じたのでした。
けれどその湖も今は……
その予算管理の書類に、何があるというのでしょうか。
「ここを見てほしい」
殿下はそう仰ると、支払い先の名前を指さしました。
「……アッカーソン土木建築組……七月度請求額……七十五万ゴルド」
普通の会社に見えます。
「ここもだ」
「……ルッテンホルム設計事業所……七月度請求額……二十四万ゴルド」
……特に、おかしいようには見えません。
「それに、ここも……あとここだ」
殿下は幾つか指しますが、商売の知識のない女のわたくしには、何が問題なのかすらわかりませんでした。
「ではこちらもお見せしようか」
そういうと、別の書類もお見せ下さいました。
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