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第五部 続・みんなでわちゃわちゃ編
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「同級生の親っつーか、紅葉の親に会うのまじで緊張すんだけど…今日はご両親二人共いんの?」
「いえ、両親は二人共いません。執事に説明をしていただけたらと思います」
「え、そうなん?親いないんだ、助かる~ちなみに、帰りも送っていただけたりなんかは…」
「もちろん、最寄りまでお送りします」
「あざーっす」
松寿はあからさまにほっとして笑っている。先程よりもより堂々とリラックスして表情も柔和になった。そんな松寿の姿にときめく紅葉は心臓を抑えた。
紅葉の自宅につき、紅葉と松寿は執事と向き合った。
「今日の話し合いは大変有意義でした。まず私以外に二人、同じ症状の方がいます。身体の変化はそれぞれですが月経がくるまでは…」
紅葉は饒舌に執事に今日の話し合いについて語っている。
(俺、いらねぇじゃん)
口を挟む隙がなく、松寿は紅葉と執事の会話、というより紅葉の一方的な話を聞いていた。
「松寿さん、何か補足はありますでしょうか」
「ないです」
「では以上です。要約して、両親にもお伝え下さい」
「かしこまりました」
執事は頭を下げた。ここは以前も通された応接室だ。話も終わったようなので松寿は腰を上げる。
「じゃ、俺はここで」
「松寿さん、私の部屋に行きませんか?」
「えー?…行こうかなぁ」
帰ろうと思ったが、金持ちお坊ちゃまの自室に興味が湧いた。しかも両親がいない。普通ならやれるチャンスだが、この家はそうもいかないことに気づいていた。
「どうせ扉の外に誰かいてなんもできないんだよね。わかってますよ。しかも今日、男だしね」
松寿がため息をついて愚痴っていると、紅葉の部屋に通された。わかってはいたが、松寿の自室の倍じゃきかない広さだった。改めて佐々木家の財力のでかさを思い知る。見える範囲にテーブルやらソファやらがおいてあり、壁一面の本棚に大量の書籍が綺麗にはめ込まれている。
「広さえぐ…ベッドないけど、まさか」
「寝室は奥です。そちらの扉は衣装部屋です」
松寿は気を失いそうになった。3室設えられているらしい。一般庶民の松寿には想像つかなかった世界が広がっていた。紅葉はガチガチのお坊ちゃまだ。なぜあの大学に来ているのか不思議だった。
「こっわ。こんなん見せつけられて据え膳食えねぇわ」
「…扉の外は人払いができますし、寝室は奥です」
「ないない。だから今日、男でしょ?できないじゃん」
松寿はソファにどっかりと座り込み、笑いながら手を振って否定した。ついて数秒で、まるで自宅かのようなリラックスぶりに紅葉は驚く。しかしそれよりも松寿の発言がひっかかった。
「松寿さんは、男の子に恋をしたと言っていました。私が男でも問題ないはずです」
松寿の前に立ち、紅葉は問うた。男であることは些末な問題のはずだ。松寿は「んー」と声を上げて考えている。
「それね。その子とは、そういうことをしたいわけじゃなかったっぽい。さっき黒木に言われて気づいたわ。親みたいな?やるやらない以前に、傍で大事に守ってやりたかったんだよなぁ」
紅葉は唇を噛み締めた。松寿にとっての彼、楓は、性欲を超えて大切な存在だったようだ。一方紅葉は男か女か、やれるかやれないかで松寿に区別されている。彼の特別になるためにはどうしたらいいのだろうか。松寿はふ、と笑う。
「男がイケるかどうかより、俺たち友達でしょ?セフレ拒否ったの、紅葉じゃん」
笑いながら見上げてくる松寿は意地悪なのに、とても様になっている。紅葉は松寿から目を反らした。このまま彼のペースに飲まれてしまってはよくない。紅葉が女性の体なら、関係を結ぶのはきっと簡単だ。しかし女性の体で松寿としたら、たぶん一度きりの関係になる。もう少し高いハードルが必要だ。男の紅葉とすることで、松寿の中に深く存在を刻み込みたい。
紅葉は本棚から数冊取り出してソファに置いた。
「いえ、両親は二人共いません。執事に説明をしていただけたらと思います」
「え、そうなん?親いないんだ、助かる~ちなみに、帰りも送っていただけたりなんかは…」
「もちろん、最寄りまでお送りします」
「あざーっす」
松寿はあからさまにほっとして笑っている。先程よりもより堂々とリラックスして表情も柔和になった。そんな松寿の姿にときめく紅葉は心臓を抑えた。
紅葉の自宅につき、紅葉と松寿は執事と向き合った。
「今日の話し合いは大変有意義でした。まず私以外に二人、同じ症状の方がいます。身体の変化はそれぞれですが月経がくるまでは…」
紅葉は饒舌に執事に今日の話し合いについて語っている。
(俺、いらねぇじゃん)
口を挟む隙がなく、松寿は紅葉と執事の会話、というより紅葉の一方的な話を聞いていた。
「松寿さん、何か補足はありますでしょうか」
「ないです」
「では以上です。要約して、両親にもお伝え下さい」
「かしこまりました」
執事は頭を下げた。ここは以前も通された応接室だ。話も終わったようなので松寿は腰を上げる。
「じゃ、俺はここで」
「松寿さん、私の部屋に行きませんか?」
「えー?…行こうかなぁ」
帰ろうと思ったが、金持ちお坊ちゃまの自室に興味が湧いた。しかも両親がいない。普通ならやれるチャンスだが、この家はそうもいかないことに気づいていた。
「どうせ扉の外に誰かいてなんもできないんだよね。わかってますよ。しかも今日、男だしね」
松寿がため息をついて愚痴っていると、紅葉の部屋に通された。わかってはいたが、松寿の自室の倍じゃきかない広さだった。改めて佐々木家の財力のでかさを思い知る。見える範囲にテーブルやらソファやらがおいてあり、壁一面の本棚に大量の書籍が綺麗にはめ込まれている。
「広さえぐ…ベッドないけど、まさか」
「寝室は奥です。そちらの扉は衣装部屋です」
松寿は気を失いそうになった。3室設えられているらしい。一般庶民の松寿には想像つかなかった世界が広がっていた。紅葉はガチガチのお坊ちゃまだ。なぜあの大学に来ているのか不思議だった。
「こっわ。こんなん見せつけられて据え膳食えねぇわ」
「…扉の外は人払いができますし、寝室は奥です」
「ないない。だから今日、男でしょ?できないじゃん」
松寿はソファにどっかりと座り込み、笑いながら手を振って否定した。ついて数秒で、まるで自宅かのようなリラックスぶりに紅葉は驚く。しかしそれよりも松寿の発言がひっかかった。
「松寿さんは、男の子に恋をしたと言っていました。私が男でも問題ないはずです」
松寿の前に立ち、紅葉は問うた。男であることは些末な問題のはずだ。松寿は「んー」と声を上げて考えている。
「それね。その子とは、そういうことをしたいわけじゃなかったっぽい。さっき黒木に言われて気づいたわ。親みたいな?やるやらない以前に、傍で大事に守ってやりたかったんだよなぁ」
紅葉は唇を噛み締めた。松寿にとっての彼、楓は、性欲を超えて大切な存在だったようだ。一方紅葉は男か女か、やれるかやれないかで松寿に区別されている。彼の特別になるためにはどうしたらいいのだろうか。松寿はふ、と笑う。
「男がイケるかどうかより、俺たち友達でしょ?セフレ拒否ったの、紅葉じゃん」
笑いながら見上げてくる松寿は意地悪なのに、とても様になっている。紅葉は松寿から目を反らした。このまま彼のペースに飲まれてしまってはよくない。紅葉が女性の体なら、関係を結ぶのはきっと簡単だ。しかし女性の体で松寿としたら、たぶん一度きりの関係になる。もう少し高いハードルが必要だ。男の紅葉とすることで、松寿の中に深く存在を刻み込みたい。
紅葉は本棚から数冊取り出してソファに置いた。
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