隣人 (BL、完結)

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番外編

可愛い子 完

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今日の合コンについて、お互いあの会話がどうだった相手がこうだったと反省会が始まった。全裸でする会話ではないが、終いには男のレベルが低い、あの程度の男じゃだめだと相手の男性の悪口大会に発展していく。ひとしきり愚痴ってから舞はため息を付いた。
「あーあ。やっぱりキリヤさん以上の男ってなかなかいないですね~ただ金持ってるだけじゃダメだって、なんでわかんないんだろ。いちいちどんな仕事でどのくらい稼いでるのか言ってくるし…こっちは時計と靴で判断してるっつーの」
「あなた、そんなところで判断してるの…それより。今、別の男の名前を出すなんて、ひどいのね」
美幸はうつ伏せになって舞の顔を覗き込む。さっきまでの美幸と同じように仰向けになっていた舞は、胸をむき出しにしたまま笑った。
「だって好きなんですもん。は~、いっくんが羨ましい。あ、あの二人付き合ってるらしいんですけど知ってます?」
私は信じてませんけど。と、舞は笑う。信じていないというよりは、舞の中では二人が付き合っていようとどうでもいいのだろう。
「…知らないわ。男同士なんて、興味がないもの」
「いっくんが男で良かったですよぉ。女の子だったらギリだったと思うんですよね。ギリ、アタシの勝ち。男ならアタシの圧勝なんで。もうキリヤさんは頂いたも同然ですよね♡」
舞が両手に拳を作って振り上げた。むき出しの胸が激しく揺れる。恥じらいも何もない姿に、美幸は少し気持ちが萎えてしまった。郁美が女の子だったら、美幸は彼を愛しただろうか。
「美幸さん、合コンやめて女の子探したほうがいいんじゃないですかぁ?私としてる時の方が、生き生きしてますよ」
「じゃああなた、私のものになってくれる?」
「無理です。今はキリヤさん一筋なので。なのでごめんなさい。キリヤさんと付き合ったら、この関係はなしってことで」
舞は両手を合わせてペロッと舌を出した。美幸はその舌を舐める。
「どこが一筋なの?私と、こんなことをしておいて」
「まだ付き合ってないんで。どうせなら女同士も経験してみたいじゃないですかぁ。すっごく気持ちいいし。おっぱい最高~♡」
舞は美幸と舌を絡めながら美幸の胸を揉みしだいた。同性愛者ではないようだが、舞は積極的に美幸の肌に触れてくる。
「んっ、ちょっと…とんだ変態ね。あの人が知ったらどう思うかしら。女同士で、こんなこと…」
「キリヤさんは笑って許してくれますよ、優しいし。いっくんは倒れちゃいそう。お姉様大好きだしぃ。女同士とか男同士とか、気持ちよかったらどっちでも良いで~す」
舞は両手でピースサインを作って、また舌を出した。挑発するような生意気な、そしてちょっとブスな顔に美幸も笑った。
キリヤに好意を抱いて、本当は男性が好きなのかもしれないと思った。しかし合コンを繰り返して、やっぱり違うのかもしれないと思い直した。美幸の心はグラグラと揺れる。
気持ちよかったらどっちでも良い。
別に、決めつけなくてもいいのかもしれない。その時好きな相手が、美幸の愛すべき相手だ。性別はあとからついてくればいい。乱暴な舞の言葉に、美幸は少し救われていた。
「美幸、さん、っ…もし、いっくんが女の子、だったら…こんなこと、しま、す?」
「しないわ。絶対に」
美幸は断言した。自分でも驚くほどきっぱりと。言ってから腑に落ちた。郁美は大切な、可愛い従弟。性的な興奮を抱く対象ではない。
郁美がもしも女の子なら。もしも美幸が男性と恋愛をするなら。いずれにしても、美幸は郁美を選ばない。郁美は庇護すべき大切な存在であって、恋愛の対象にはなりえない。胸に浮かぶのはいつも、後をついて愛くるしい笑顔を浮かべる小さな郁美だ。姉として、時に母のように郁美と接してきた美幸には、郁美に対して恋愛感情は抱けない。男も女もなかったのだと、美幸は今自分の本心を知った。
羨んで憎んだこともあったけど、大事な存在であることに、今も変わりはない。
せめて彼が、ずっと笑っていられますように。美幸は心から、郁美の幸せを祈っている。



END

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