18 / 29
番外編
バイクに乗りたい 1
しおりを挟む
ある休日の朝。ソファで並んで座り、キリヤはタブレットを眺めて郁美は携帯ゲーム機で遊んでいた。見るでもなく流していた映画で、主人公がバイクの後ろにヒロインを乗せて走り去る。
「バイク、かっこよー」
郁美は、ゲーム機を横に置いて画面に見入っていた。嫌な予感がして、キリヤは恐る恐る聞いてみる。
「…また、免許取るとか言う?」
「言わない。運転は諦めた」
郁美は言い切った。キリヤは気づかれないよう、安堵のため息をつく。せっかくの休日にまた揉めたくはない。
「すごくない?なんであんなスピードで走れるんだろ」
「ある程度スピード出したほうが安定するよ。さすがにここまでは出さないけど」
キリヤは収支の確認が終わって画面を閉じる。今回の建物もいい買い物だった。思った以上に収益が出ている。現状維持か不動産を買い足すか。とりあえず車でも買い替えるかなと考えていると、郁美に腕をつつかれた。
「バイク、乗れんの?」
「乗れるけど」
「すごい!今初めてキリヤのこと、かっこいいって思った!すごーい!」
「今初めてなんだ。ありがと」
今までにもう少しときめくタイミングはなかったのか。追求したかったが、郁美は目を輝かせている。幼い表情が非常に可愛らしい。してる時はあんなにエロいのに。
「二人乗りもできる?」
「できるよ」
キリヤは答えてから後悔した。
「乗りたい!」
「だよねぇ。今の流れはそうなるよね」
ついうっかり。かっこいいと言われて口が滑ってしまった。郁美があんまり可愛い顔をしているので脳が油断してしまった。
とはいえ今、バイクがない。ここに引っ越してくるときに売却してしまった。何よりも気になる点がひとつある。
「郁美さ、ちゃんと捕まってられる?振り返ったらいなくなってそうで怖いんだよ。信号で振り返ったらあれ?っつって」
「大丈夫。安全運転してくれれば、たぶん。え、俺吹っ飛ぶの?」
タブレットで大型バイクを検索してみる。多数の画像が並んだ。その中で、郁美がビッグスクーターを指さした。
「これ後ろ、乗りやすそう」
「それなぁ。俺が乗るのはちょっと…似合いすぎちゃうのかな?怖がられるっていうか、ね。嫌いじゃないんだけどなぁ」
「あー!わかる。コンビニで店員さんに煙草を銘柄で指定して困らせてそう。そんでオラついてそう。やだ、最低。番号で言えよ」
「しねぇわ、そんなこと。何その具体的な妄想」
郁美は左腕にもたれかかってタブレットを見ている。横からスワイプさせていると、何台か気になるバイクがあった。郁美がそれらを指さしていく。
「これとかこれ、格好いい」
「すげーわかる。こっちは?」
「あ、それもいい。好き」
「趣味合うのめっちゃいい。好きぃ」
キリヤは郁美に抱きついた。郁美は気にせずタブレットをいじっている。
「あ、これ良い」
郁美の差し出すタブレットには、黒の大型バイクが表示されていた。メーカーの公式サイトだ。キリヤはスワイプさせて性能を確認する。今見た中では一番、欲しいと思えるバイクだった。
「最初出たの赤色だったけど、黒のが良くない?」
「これは、赤より黒だな」
「なー」
よく見ると、近くの販売店で展示されているらしい。しかも即納車可能と書いてある。
「近くのバイク屋に実物あるなぁ」
「まじで?どこ?」
「車で30分くらいかな」
キリヤと郁美は顔を見合わせる。
「行こうか」
「行こ」
二人は頷いて、バタバタと外出の準備にとりかかった。
「バイク、かっこよー」
郁美は、ゲーム機を横に置いて画面に見入っていた。嫌な予感がして、キリヤは恐る恐る聞いてみる。
「…また、免許取るとか言う?」
「言わない。運転は諦めた」
郁美は言い切った。キリヤは気づかれないよう、安堵のため息をつく。せっかくの休日にまた揉めたくはない。
「すごくない?なんであんなスピードで走れるんだろ」
「ある程度スピード出したほうが安定するよ。さすがにここまでは出さないけど」
キリヤは収支の確認が終わって画面を閉じる。今回の建物もいい買い物だった。思った以上に収益が出ている。現状維持か不動産を買い足すか。とりあえず車でも買い替えるかなと考えていると、郁美に腕をつつかれた。
「バイク、乗れんの?」
「乗れるけど」
「すごい!今初めてキリヤのこと、かっこいいって思った!すごーい!」
「今初めてなんだ。ありがと」
今までにもう少しときめくタイミングはなかったのか。追求したかったが、郁美は目を輝かせている。幼い表情が非常に可愛らしい。してる時はあんなにエロいのに。
「二人乗りもできる?」
「できるよ」
キリヤは答えてから後悔した。
「乗りたい!」
「だよねぇ。今の流れはそうなるよね」
ついうっかり。かっこいいと言われて口が滑ってしまった。郁美があんまり可愛い顔をしているので脳が油断してしまった。
とはいえ今、バイクがない。ここに引っ越してくるときに売却してしまった。何よりも気になる点がひとつある。
「郁美さ、ちゃんと捕まってられる?振り返ったらいなくなってそうで怖いんだよ。信号で振り返ったらあれ?っつって」
「大丈夫。安全運転してくれれば、たぶん。え、俺吹っ飛ぶの?」
タブレットで大型バイクを検索してみる。多数の画像が並んだ。その中で、郁美がビッグスクーターを指さした。
「これ後ろ、乗りやすそう」
「それなぁ。俺が乗るのはちょっと…似合いすぎちゃうのかな?怖がられるっていうか、ね。嫌いじゃないんだけどなぁ」
「あー!わかる。コンビニで店員さんに煙草を銘柄で指定して困らせてそう。そんでオラついてそう。やだ、最低。番号で言えよ」
「しねぇわ、そんなこと。何その具体的な妄想」
郁美は左腕にもたれかかってタブレットを見ている。横からスワイプさせていると、何台か気になるバイクがあった。郁美がそれらを指さしていく。
「これとかこれ、格好いい」
「すげーわかる。こっちは?」
「あ、それもいい。好き」
「趣味合うのめっちゃいい。好きぃ」
キリヤは郁美に抱きついた。郁美は気にせずタブレットをいじっている。
「あ、これ良い」
郁美の差し出すタブレットには、黒の大型バイクが表示されていた。メーカーの公式サイトだ。キリヤはスワイプさせて性能を確認する。今見た中では一番、欲しいと思えるバイクだった。
「最初出たの赤色だったけど、黒のが良くない?」
「これは、赤より黒だな」
「なー」
よく見ると、近くの販売店で展示されているらしい。しかも即納車可能と書いてある。
「近くのバイク屋に実物あるなぁ」
「まじで?どこ?」
「車で30分くらいかな」
キリヤと郁美は顔を見合わせる。
「行こうか」
「行こ」
二人は頷いて、バタバタと外出の準備にとりかかった。
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる