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短編・番外編
ふたりの秘密 完
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「うん。ひろくんにね、いじわる、してたとき。それでね、あの、男の人が、好きな、男の人と、お話できるアプリ、入れた。本当ですかって、聞きたくて」
どうやら佳奈多は不安定だったあの頃、大翔に隠れてそんな動画を見ていたらしい。そして動画をフィクションだと思っていたらしい。モザイクでハッキリは見えないものの、薄っすらと見えるアレにコレを入れている映像が、CGかなにかだと佳奈多は思っていたようだ。本当なのかを確認するため、経験者に話を聞くためにあのアプリを入れていた。
確かにあの時も言っていた。
『調べてた、ひろくんとするの』
あの話は本当だった。佳奈多は全て大翔のためにしてくれていた。健気に大翔を想ってくれていた佳奈多が愛おしい。大翔は胸の奥がじんと熱くなった。下半身も少し元気になった。
「かなちゃん…かなちゃんが俺にしたいときは、準備するから言ってね。俺はどっちでもいいから」
大翔の言葉に佳奈多は目を丸くして、それから目を泳がせた。佳奈多は首を傾げて何か考えている。
大翔は一緒に暮らしていたあの頃、抱く側が良かったので自分から言い出さなかった。自分がしてあげたい気持ちが大きかった。正直今もその気持ちの方が大きい。ただ、一緒に暮らすようになって、大翔だけが佳奈多を抱くのはフェアではないような気がしていた。同性同士で佳奈多も男性だ。
まして今の話を聞くと、幼い大翔が欲をぶつけていたせいで佳奈多は自分が抱かれる側だと思い込んでしまったように感じる。もしかしたら本当は、佳奈多も抱く側がしてみたいんじゃないだろうか。佳奈多のしたいことなら叶えてあげたい。
佳奈多が少し目を伏せる。大翔はゆっくり答えを待とうと思った。また、その答えがどんなものでも受け入れようと思っていた。
佳奈多がしてみたいのであれば、準備を指南してもらおう。手取り足取り佳奈多にあれやこれやしてもらって…などと考えていたら、佳奈多は思ったよりも早く口を開いた。
「あの、ぼく、ひろくんみたいに、上手にする、自信ない」
「上手なの?俺」
「うん。あと、ぼく、してもらうほうが、いいから、いまのままがいい」
佳奈多はこっくりと頷いて答えてくれた。佳奈多は視線をそらしたまま恥ずかしそうに、でも躊躇いなく答えてくれた。
大翔はぐっと唇を噛みしめて顔面に力を込めた。
なんて可愛いことを言ってくれるのか。少し震えながら耐えていたら、佳奈多が笑った。
「ふへっ…ひろくん、変な顔」
「そうね。自覚ある。だってかなちゃん、嬉しいこと言ってくれるから…」
「あ、…ひろくん、だめ…あの、準備、してない、し…」
「うん。触りっこしよう。入れなくても幸せだから」
「だめ、だめだよ…明日、お仕事、だから」
「真面目で、かなちゃん、えらい。可愛い、かなちゃ」
「ひろくん。だめ」
佳奈多の体を弄っていたら、ぐっと腕を止められた。佳奈多は真剣な顔で大翔を見ていた。
同棲していた学生時代、佳奈多は非力だった。乱暴なことをしたことはないが、簡単にねじ伏せることができただろう。
だがしかし、今の佳奈多の腕の力ときたらどうだろう。佳奈多よりも体格が良く格闘技の心得もある大翔ががっちり腕を固められている。本気で力を入れないと振りほどけないが、大翔が本気で振り払えば、佳奈多に怪我をさせてしまうかもしれない。そんなことはしたくない。それは本意ではない。
ごちゃごちゃ大翔は考えているが、今、本当に動けない。どこからこんな力が出ているのか。あの可愛い佳奈多がパワー系になってしまったというのか。由々しき事態だ。
膠着状態が続いて、大翔は力を抜いた。佳奈多も腕の力を緩めた。
「かなちゃん」
「う。おやすみ、ひろくん」
佳奈多はにっこり笑って目を閉じた。あっという間にすやすやと規則正しい寝息を立てて、佳奈多は眠ってしまった。
大翔は起き上がる。眠る佳奈多をおかずにしようか。いつかのように。と考えていたら、視界の端に自分の腕が入った。
「ひぇっ」
大翔の喉から変な音が出た。大翔の腕にはくっきり手形がついていた。
可愛い佳奈多は今、とんでもない力を隠し持っているようだ。
こっそりおかずにした流れで佳奈多にあれこれしてそういう空気に持ち込むつもりだった。しかしこれは。そんなことをしたら「駄目って言ったよね?」と骨の2、3本いかれる気がする。この手形は佳奈多からの警告だ。そんな禍々しい空気を手形は放っている。
大翔の下半身はイライラを収め、しんなり力を失った。佳奈多の匂いを嗅ぎながら、上半身もしょんぼり目を閉じた。
END
どうやら佳奈多は不安定だったあの頃、大翔に隠れてそんな動画を見ていたらしい。そして動画をフィクションだと思っていたらしい。モザイクでハッキリは見えないものの、薄っすらと見えるアレにコレを入れている映像が、CGかなにかだと佳奈多は思っていたようだ。本当なのかを確認するため、経験者に話を聞くためにあのアプリを入れていた。
確かにあの時も言っていた。
『調べてた、ひろくんとするの』
あの話は本当だった。佳奈多は全て大翔のためにしてくれていた。健気に大翔を想ってくれていた佳奈多が愛おしい。大翔は胸の奥がじんと熱くなった。下半身も少し元気になった。
「かなちゃん…かなちゃんが俺にしたいときは、準備するから言ってね。俺はどっちでもいいから」
大翔の言葉に佳奈多は目を丸くして、それから目を泳がせた。佳奈多は首を傾げて何か考えている。
大翔は一緒に暮らしていたあの頃、抱く側が良かったので自分から言い出さなかった。自分がしてあげたい気持ちが大きかった。正直今もその気持ちの方が大きい。ただ、一緒に暮らすようになって、大翔だけが佳奈多を抱くのはフェアではないような気がしていた。同性同士で佳奈多も男性だ。
まして今の話を聞くと、幼い大翔が欲をぶつけていたせいで佳奈多は自分が抱かれる側だと思い込んでしまったように感じる。もしかしたら本当は、佳奈多も抱く側がしてみたいんじゃないだろうか。佳奈多のしたいことなら叶えてあげたい。
佳奈多が少し目を伏せる。大翔はゆっくり答えを待とうと思った。また、その答えがどんなものでも受け入れようと思っていた。
佳奈多がしてみたいのであれば、準備を指南してもらおう。手取り足取り佳奈多にあれやこれやしてもらって…などと考えていたら、佳奈多は思ったよりも早く口を開いた。
「あの、ぼく、ひろくんみたいに、上手にする、自信ない」
「上手なの?俺」
「うん。あと、ぼく、してもらうほうが、いいから、いまのままがいい」
佳奈多はこっくりと頷いて答えてくれた。佳奈多は視線をそらしたまま恥ずかしそうに、でも躊躇いなく答えてくれた。
大翔はぐっと唇を噛みしめて顔面に力を込めた。
なんて可愛いことを言ってくれるのか。少し震えながら耐えていたら、佳奈多が笑った。
「ふへっ…ひろくん、変な顔」
「そうね。自覚ある。だってかなちゃん、嬉しいこと言ってくれるから…」
「あ、…ひろくん、だめ…あの、準備、してない、し…」
「うん。触りっこしよう。入れなくても幸せだから」
「だめ、だめだよ…明日、お仕事、だから」
「真面目で、かなちゃん、えらい。可愛い、かなちゃ」
「ひろくん。だめ」
佳奈多の体を弄っていたら、ぐっと腕を止められた。佳奈多は真剣な顔で大翔を見ていた。
同棲していた学生時代、佳奈多は非力だった。乱暴なことをしたことはないが、簡単にねじ伏せることができただろう。
だがしかし、今の佳奈多の腕の力ときたらどうだろう。佳奈多よりも体格が良く格闘技の心得もある大翔ががっちり腕を固められている。本気で力を入れないと振りほどけないが、大翔が本気で振り払えば、佳奈多に怪我をさせてしまうかもしれない。そんなことはしたくない。それは本意ではない。
ごちゃごちゃ大翔は考えているが、今、本当に動けない。どこからこんな力が出ているのか。あの可愛い佳奈多がパワー系になってしまったというのか。由々しき事態だ。
膠着状態が続いて、大翔は力を抜いた。佳奈多も腕の力を緩めた。
「かなちゃん」
「う。おやすみ、ひろくん」
佳奈多はにっこり笑って目を閉じた。あっという間にすやすやと規則正しい寝息を立てて、佳奈多は眠ってしまった。
大翔は起き上がる。眠る佳奈多をおかずにしようか。いつかのように。と考えていたら、視界の端に自分の腕が入った。
「ひぇっ」
大翔の喉から変な音が出た。大翔の腕にはくっきり手形がついていた。
可愛い佳奈多は今、とんでもない力を隠し持っているようだ。
こっそりおかずにした流れで佳奈多にあれこれしてそういう空気に持ち込むつもりだった。しかしこれは。そんなことをしたら「駄目って言ったよね?」と骨の2、3本いかれる気がする。この手形は佳奈多からの警告だ。そんな禍々しい空気を手形は放っている。
大翔の下半身はイライラを収め、しんなり力を失った。佳奈多の匂いを嗅ぎながら、上半身もしょんぼり目を閉じた。
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