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短編・番外編
ふたりの秘密 1
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同棲開始から一週間とちょっと。この日は佳奈多も大翔も帰宅が同じような時間だった。一緒に夕飯を終えて入浴も終え、ベッドに入る。
翌日がお互い仕事なこともあり、そういうことはお預けと佳奈多から言われてしまった。大翔は最後、渋々納得した。本当に渋々で、何度も聞こえないふりをしたり話を反らしたりしていたが、佳奈多から根気強く「今日はダメ」を繰り返された。大翔はガックリと肩を落とした。がっかりアピールがあからさま過ぎたかとは思うが、本当に、ガックリと肩が落ちてしまった。
土日祝日関係なくその上夜勤もある佳奈多と、カレンダー通りに働く大翔とでは中々時間が合わない。こうして帰宅時間が合うだけでも珍しい。大翔が大学生の頃はなんとか佳奈多に合わせて時間を捻出していたものの、会う日取りを決めるのも一苦労だった。佳奈多に仕事が入ってしまったことも一度や二度ではない。
テーマパークで佳奈多から一緒に暮らしたいと告白してくれた時から、恋人同士として甘い日々が再開されたが、社会人となった大翔と佳奈多は増々時間が合わなくなってしまった。
部屋を探したり話し合う中でようやく、佳奈多と再び体を重ねることができた。佳奈多が離れていってしまった頃から数えて、何年ぶりだったのだろうか。数えたくもないが、数年ぶりのみだれる佳奈多を、大翔はその後何度も反芻した。それから今日まで致した回数は数回しか無い。一緒に暮らして顔を合わせる時間が以前より増えたものの、とにかく時間が合わない。
布団に入ってすぐ、佳奈多のまぶたはとろとろととろけてしまっている。安心しきっているのか、可愛らしい油断しきった眠た顔に、正直ムラついてしまう。今にも眠りに落ちてしまいそうな佳奈多の手を取り、大翔は問いかけた。
「そういえばかなちゃん。気になってたことあるんだけど」
佳奈多の落ちかけていた意識が浮上したようだ。が、既に半分夢の中にいるらしい佳奈多はもそりと頭を動かして首を傾げる。その瞳は半分しか開いていない。大翔は佳奈多の手の甲を撫でた。
「初めての時さ、なんで後ろ、準備してきてくれたの?」
「………う?」
佳奈多はぱちぱちと瞳を瞬かせた。佳奈多は急激に覚醒したようだ。大翔が何を言っているのか理解したようで、顔どんどんが赤くなっていく。あんなことをしている関係なのに、未だに初々しい反応を見せてくれる。大翔の下半身はイライラし始めていた。
「な、なんで、って…」
「なんで受け入れる側になってくれたの?かなちゃんも同じ男性なのに。どっちでも良かったはずでしょ?」
佳奈多は目を泳がせて何度も口ごもった。少しいじわるな聞き方な気もする。下半身のイライラが上半身にあらわれてしまったようだ。
あの時佳奈多は「好きだからしたい」と言ってくれた。佳奈多が抱くという選択肢もあったはずだ。なぜ受け入れる準備の方をして来てくれたのだろう。
佳奈多は上目遣いで首を傾げる。
「あ、あの、う……あの、ひ、ひろくん、が、あの、する側が、いいのかなって、思ってた、から…たくさん、ぼくの、からだ、あの、う、ぅ…さ、触っ、て…ち、違った?」
佳奈多の手をさわさわと撫でていたら、佳奈多からきゅっと握られてしまった。涙目で不安げに見つめてくる佳奈多のなんと可愛らしいことか。
しかし大翔の下半身は少しシュンと大人しくなった。
「違くないです」
まったくもってその通りだった。大翔も多分佳奈多も、初めてした時以前を思い出していた。脳が下半身に支配されていたあの頃。大翔は佳奈多に触りたくてシたくて仕方がなかった。一分一秒でも長く触れていたくて、怖い思いをさせていたことは不徳の致すところで。深く猛省している。しかし今も時々こうして、佳奈多に触れたくて下半身がイラ立ってしまう。自身の幼さに大翔自身もシュンと反省する。佳奈多はあっ、と声を上げた。
「あと、ぼく、ちっちゃいし、からだ、」
「体の大きさは関係ないよ。大事なのはどっちがいいかだよ」
佳奈多はまた目を丸くした。今度は驚きよりも納得のほうが強かったようだ。「そっか。そうなんだ」と何度か口の中で繰り返していた。なにか、佳奈多の中で腑に落ちたようだ。
多分佳奈多は『自分は受け入れる側だ』と思い込んでいたのだろう。確かに佳奈多は可愛く、大翔もそういう目で見ていた。コンビニのおじさんに目をつけられた過去もある。
「あ!あのね、あの時、ぼくね、動画、見たんだ。男同士の、してるやつ。こっそり」
「動画、男同士の…見たの?こっそり?」
「う。動画、見て、ひろくんしたいの、こっちかな、って。あとね、本当かなって、思ってた。入るのかなぁ、て。動画、モザイクで、見えなかったし、おしり、だし、」
「おしり…こっそり」
翌日がお互い仕事なこともあり、そういうことはお預けと佳奈多から言われてしまった。大翔は最後、渋々納得した。本当に渋々で、何度も聞こえないふりをしたり話を反らしたりしていたが、佳奈多から根気強く「今日はダメ」を繰り返された。大翔はガックリと肩を落とした。がっかりアピールがあからさま過ぎたかとは思うが、本当に、ガックリと肩が落ちてしまった。
土日祝日関係なくその上夜勤もある佳奈多と、カレンダー通りに働く大翔とでは中々時間が合わない。こうして帰宅時間が合うだけでも珍しい。大翔が大学生の頃はなんとか佳奈多に合わせて時間を捻出していたものの、会う日取りを決めるのも一苦労だった。佳奈多に仕事が入ってしまったことも一度や二度ではない。
テーマパークで佳奈多から一緒に暮らしたいと告白してくれた時から、恋人同士として甘い日々が再開されたが、社会人となった大翔と佳奈多は増々時間が合わなくなってしまった。
部屋を探したり話し合う中でようやく、佳奈多と再び体を重ねることができた。佳奈多が離れていってしまった頃から数えて、何年ぶりだったのだろうか。数えたくもないが、数年ぶりのみだれる佳奈多を、大翔はその後何度も反芻した。それから今日まで致した回数は数回しか無い。一緒に暮らして顔を合わせる時間が以前より増えたものの、とにかく時間が合わない。
布団に入ってすぐ、佳奈多のまぶたはとろとろととろけてしまっている。安心しきっているのか、可愛らしい油断しきった眠た顔に、正直ムラついてしまう。今にも眠りに落ちてしまいそうな佳奈多の手を取り、大翔は問いかけた。
「そういえばかなちゃん。気になってたことあるんだけど」
佳奈多の落ちかけていた意識が浮上したようだ。が、既に半分夢の中にいるらしい佳奈多はもそりと頭を動かして首を傾げる。その瞳は半分しか開いていない。大翔は佳奈多の手の甲を撫でた。
「初めての時さ、なんで後ろ、準備してきてくれたの?」
「………う?」
佳奈多はぱちぱちと瞳を瞬かせた。佳奈多は急激に覚醒したようだ。大翔が何を言っているのか理解したようで、顔どんどんが赤くなっていく。あんなことをしている関係なのに、未だに初々しい反応を見せてくれる。大翔の下半身はイライラし始めていた。
「な、なんで、って…」
「なんで受け入れる側になってくれたの?かなちゃんも同じ男性なのに。どっちでも良かったはずでしょ?」
佳奈多は目を泳がせて何度も口ごもった。少しいじわるな聞き方な気もする。下半身のイライラが上半身にあらわれてしまったようだ。
あの時佳奈多は「好きだからしたい」と言ってくれた。佳奈多が抱くという選択肢もあったはずだ。なぜ受け入れる準備の方をして来てくれたのだろう。
佳奈多は上目遣いで首を傾げる。
「あ、あの、う……あの、ひ、ひろくん、が、あの、する側が、いいのかなって、思ってた、から…たくさん、ぼくの、からだ、あの、う、ぅ…さ、触っ、て…ち、違った?」
佳奈多の手をさわさわと撫でていたら、佳奈多からきゅっと握られてしまった。涙目で不安げに見つめてくる佳奈多のなんと可愛らしいことか。
しかし大翔の下半身は少しシュンと大人しくなった。
「違くないです」
まったくもってその通りだった。大翔も多分佳奈多も、初めてした時以前を思い出していた。脳が下半身に支配されていたあの頃。大翔は佳奈多に触りたくてシたくて仕方がなかった。一分一秒でも長く触れていたくて、怖い思いをさせていたことは不徳の致すところで。深く猛省している。しかし今も時々こうして、佳奈多に触れたくて下半身がイラ立ってしまう。自身の幼さに大翔自身もシュンと反省する。佳奈多はあっ、と声を上げた。
「あと、ぼく、ちっちゃいし、からだ、」
「体の大きさは関係ないよ。大事なのはどっちがいいかだよ」
佳奈多はまた目を丸くした。今度は驚きよりも納得のほうが強かったようだ。「そっか。そうなんだ」と何度か口の中で繰り返していた。なにか、佳奈多の中で腑に落ちたようだ。
多分佳奈多は『自分は受け入れる側だ』と思い込んでいたのだろう。確かに佳奈多は可愛く、大翔もそういう目で見ていた。コンビニのおじさんに目をつけられた過去もある。
「あ!あのね、あの時、ぼくね、動画、見たんだ。男同士の、してるやつ。こっそり」
「動画、男同士の…見たの?こっそり?」
「う。動画、見て、ひろくんしたいの、こっちかな、って。あとね、本当かなって、思ってた。入るのかなぁ、て。動画、モザイクで、見えなかったし、おしり、だし、」
「おしり…こっそり」
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