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短編・番外編
5 END
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佳奈多はフィギュアを見つめて再び首を傾げた。大翔は佳奈多とフィギュアの間に体を入れる。佳奈多と向き合って両肩を掴んだ。何故疑問形なのか。確かに今まで、格好悪いところをたくさん見せた。見せてしまった。大翔のあれやこれやを、佳奈多は思い出してしまっているのかもしれない。
余計な質問をして佳奈多を混乱させてしまったようだ。大翔に似て格好良くてこのキャラが好きなら、佳奈多にとっては大翔も格好いいはずだ。それでいいじゃないか。こんなキラキラの何かを放出して格好良さを増している男よりも、生身でこの顔面を持つ大翔のほうが格好良いはずだ。
「格好いいは、顔の良さだけじゃ、ないよ?」
「かなちゃん!」
佳奈多は大きな曇りなき瞳で、じっと大翔を見つめていた。大翔の脳内を読んだのだろうか。見透かされてしまった。
大翔は正論でぶん殴られた。思わず口を捻じ曲げて顔面をひしゃげる大翔に、佳奈多は笑う。
「へふっ!ひろく、変な、顔…ふふ、へふふっ……格好悪いとこも、ひろくん、好きだよ。全部、好き」
佳奈多は嬉しそうに、楽しそうに笑う。大翔は佳奈多を抱きしめて、佳奈多の胸に顔を埋めた。
「かなちゃんが俺を弄んでくる」
「もて?」
「魔性のかなちゃんも、いい。好き」
「ま、ましょ…?う、あ、ありが、と…?」
佳奈多の戸惑う声が頭上から聞こえて、大翔は頭を撫でられた。佳奈多は大翔が何を行ってるのか、理解できなかったようだ。大翔自身も何を言ってるのかわからない。
甘える大翔を迷わず甘えさせてくれる佳奈多に、大翔はちらりと横目でフィギュアを見た。人形の彼では佳奈多に甘えることも頭を撫でてもらうこともできまい。
今は佳奈多の『格好良い』という称号をお前にくれてやる。
しかし、今佳奈多に触れて、触ってもらえるのは大翔だけだ。
「ふふ…ひろくん、よしよし。へふっ!くすぐっ、たい、よ」
佳奈多がぎゅっと大翔の頭を抱えてくれた。大翔は佳奈多の体中をまんべんなく撫で回して滑らかな皮膚の感触を味わった。
翌日。出勤するため、大翔は佳奈多と共に玄関に向かった。時間が合うときはこうして二人で家を出る。少しでも長く一緒にいたい大翔としては、なくてはならない時間だ。忘れ物はないか、今日は忙しそうだと他愛のない言葉を交わしながら靴を履く。
玄関の靴箱の上に例のフィギュアが鎮座している。
やはり、改めて見ても、彼はキラキラエフェクトで格好良さを増している。ずるい。素の状態であれば拮抗した格好良さのはずだ。それか大翔もキラキラエフェクトが出せればこいつに勝てる。キラキラな演出をするべきか。LEDを全身に取り付ければ、あるいは。
「い、いって、きます」
佳奈多はフィギュアに手を振った。頬を薄っすらと桃色に染めて。
大翔の眉間に深い皺が寄る。
(やっぱり、もごうかな。頭)
物騒なことを考えながら、大翔は佳奈多の手を取った。
END
おまけ
大翔は佳奈多からスマホを借りて漫画を読んでいる。
「かなちゃん。この漫画、結構暴力的だけど…こういうの、平気になったの?」
少年漫画と呼ばれるもののようで、各々敵対する相手がいて超能力を使って戦っている。が、超能力以外にも殴る蹴るして流血しているし、武器も出てくる。これは命がないのでは?と思うシーンもあったりする。しかし生きている。安心するが、痛そうである。
佳奈多はぶんぶんと首を横に振った。
「う…全然、だめ。にがて。だからね、そういうところは、こうやって、スマホを遠くして、薄目で見てる」
佳奈多はスマホを遠ざける仕草をして薄目になった。佳奈多の険しい顔つきに思わず大翔は吹き出してしまう。
「ぶはっ。かなちゃ…うちの常務みたい。老眼かな?ぶふぅっ」
「う、ひ、ひどい、笑いすぎ!…ふ、へふふっ…でもね、戦ってるの、かっこいいからね、頑張って見るときも、あるよ」
「んっ?」
「あのね、戦ってるのがね、ほら、超能力出て、格好いいでしょ?キラキラ~って…だからね、フィギュア、欲しかったの」
「………」
佳奈多は吹き出した大翔に笑いながら教えてくれた。薄目でしか見てもらえない彼に『ずっと戦ってろ』と思ったが、頑張って見ているらしい。キラキラを両手で表現してくれる佳奈多は非常に可愛らしいが、大翔は例のキャラに改めて思う。
(クソが…絶対もいでやる)
END
余計な質問をして佳奈多を混乱させてしまったようだ。大翔に似て格好良くてこのキャラが好きなら、佳奈多にとっては大翔も格好いいはずだ。それでいいじゃないか。こんなキラキラの何かを放出して格好良さを増している男よりも、生身でこの顔面を持つ大翔のほうが格好良いはずだ。
「格好いいは、顔の良さだけじゃ、ないよ?」
「かなちゃん!」
佳奈多は大きな曇りなき瞳で、じっと大翔を見つめていた。大翔の脳内を読んだのだろうか。見透かされてしまった。
大翔は正論でぶん殴られた。思わず口を捻じ曲げて顔面をひしゃげる大翔に、佳奈多は笑う。
「へふっ!ひろく、変な、顔…ふふ、へふふっ……格好悪いとこも、ひろくん、好きだよ。全部、好き」
佳奈多は嬉しそうに、楽しそうに笑う。大翔は佳奈多を抱きしめて、佳奈多の胸に顔を埋めた。
「かなちゃんが俺を弄んでくる」
「もて?」
「魔性のかなちゃんも、いい。好き」
「ま、ましょ…?う、あ、ありが、と…?」
佳奈多の戸惑う声が頭上から聞こえて、大翔は頭を撫でられた。佳奈多は大翔が何を行ってるのか、理解できなかったようだ。大翔自身も何を言ってるのかわからない。
甘える大翔を迷わず甘えさせてくれる佳奈多に、大翔はちらりと横目でフィギュアを見た。人形の彼では佳奈多に甘えることも頭を撫でてもらうこともできまい。
今は佳奈多の『格好良い』という称号をお前にくれてやる。
しかし、今佳奈多に触れて、触ってもらえるのは大翔だけだ。
「ふふ…ひろくん、よしよし。へふっ!くすぐっ、たい、よ」
佳奈多がぎゅっと大翔の頭を抱えてくれた。大翔は佳奈多の体中をまんべんなく撫で回して滑らかな皮膚の感触を味わった。
翌日。出勤するため、大翔は佳奈多と共に玄関に向かった。時間が合うときはこうして二人で家を出る。少しでも長く一緒にいたい大翔としては、なくてはならない時間だ。忘れ物はないか、今日は忙しそうだと他愛のない言葉を交わしながら靴を履く。
玄関の靴箱の上に例のフィギュアが鎮座している。
やはり、改めて見ても、彼はキラキラエフェクトで格好良さを増している。ずるい。素の状態であれば拮抗した格好良さのはずだ。それか大翔もキラキラエフェクトが出せればこいつに勝てる。キラキラな演出をするべきか。LEDを全身に取り付ければ、あるいは。
「い、いって、きます」
佳奈多はフィギュアに手を振った。頬を薄っすらと桃色に染めて。
大翔の眉間に深い皺が寄る。
(やっぱり、もごうかな。頭)
物騒なことを考えながら、大翔は佳奈多の手を取った。
END
おまけ
大翔は佳奈多からスマホを借りて漫画を読んでいる。
「かなちゃん。この漫画、結構暴力的だけど…こういうの、平気になったの?」
少年漫画と呼ばれるもののようで、各々敵対する相手がいて超能力を使って戦っている。が、超能力以外にも殴る蹴るして流血しているし、武器も出てくる。これは命がないのでは?と思うシーンもあったりする。しかし生きている。安心するが、痛そうである。
佳奈多はぶんぶんと首を横に振った。
「う…全然、だめ。にがて。だからね、そういうところは、こうやって、スマホを遠くして、薄目で見てる」
佳奈多はスマホを遠ざける仕草をして薄目になった。佳奈多の険しい顔つきに思わず大翔は吹き出してしまう。
「ぶはっ。かなちゃ…うちの常務みたい。老眼かな?ぶふぅっ」
「う、ひ、ひどい、笑いすぎ!…ふ、へふふっ…でもね、戦ってるの、かっこいいからね、頑張って見るときも、あるよ」
「んっ?」
「あのね、戦ってるのがね、ほら、超能力出て、格好いいでしょ?キラキラ~って…だからね、フィギュア、欲しかったの」
「………」
佳奈多は吹き出した大翔に笑いながら教えてくれた。薄目でしか見てもらえない彼に『ずっと戦ってろ』と思ったが、頑張って見ているらしい。キラキラを両手で表現してくれる佳奈多は非常に可愛らしいが、大翔は例のキャラに改めて思う。
(クソが…絶対もいでやる)
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