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111 ※暴力的・グロテスクな表現があります
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施設から大して時間はかからず倉庫についた。短い時間も気が気ではなかった。どこから入るべきか。表の大きなシャッターは閉まっていて、開けるにも大きな音が出てしまうだろう。情報をくれた男性は『やばいやつら』と言っていた。複数人いるはずだ。大翔は裏手にまわった。裏口から様子を見てから入ろうと思ったその時、裏口の扉が開いた。
「松本さん、やりすぎだろ…なんだ、コイツ?」
「やべぇ、サイレン聞こえね?パトカーじゃねぇ!?」
「さっさと行くぞ!」
男達は大翔を認識したが、構うことなく慌てて逃げて行く。男達の慌てぶりに大きな何かが起きたのだと知る。大翔は出てくる男をかき分けて中に入ると悲鳴が耳を貫いた。
「たすけて、おねがい!やだ、やだぁあっ!」
「じっと!してろよ!!!」
大翔の兄が佳奈多に被さり、何かを握っている。すぐに佳奈多から離さなければ危険だと判断して、大翔は兄に全身で突進した。大翔の兄は積まれた廃材に突っ込んだ。
佳奈多を抱き起こす。どこか怪我はしていないか何もされていないか。佳奈多は真っ青になって震えている。何かを伝えたいのだろうが歯が鳴って言葉にできないようだ。
音がして見ると、兄は立ち上がっていた。体重も筋力も落ちた大翔の突進では大したダメージを与えられなかった。落ちていた角材を手に向かってきた。迎え討とうとしたが、それよりも早く佳奈多が大翔に被さった。
「かなたちゃん!おクスリ、なくなった、なくなっちゃったよぉお!」
被さった佳奈多から振動が伝わってくる。佳奈多が兄に滅多打ちにされている。
「に、逃げて、ひろく…あぶな、から、薬…逃げ」
必死に伝えてくる佳奈多の顔面に赤い血が垂れていた。佳奈多の頬が腫れているのは誰かに殴られたからだ。さっき乾いた音がした。きっと大翔の兄が佳奈多を殴った音だ。暴力に晒されて、怖いだろうに、佳奈多は必死に大翔を守ろうとしてくれている。
大翔は角材を握り、兄に蹴りを入れた。兄はよろけて倒れ込む。
「かなちゃん、かなちゃんっ!」
佳奈多から返事はない。くったりと大翔に体を預ける佳奈多は、全身に力が入っていない。頭部の外傷は振動を与えてはいけなかったはずだ。佳奈多を、細心の注意を払って床に横たえる。大翔は佳奈多の首筋に触れた。脈はある。
「かなちゃん、起きて、起きてよ、かなちゃん」
「へ、へへ、…かなたちゃん、一緒、一緒にやろーよ。一緒に、行こ~」
兄が転がったまま笑っている。複数の足音が近づいてきた。大翔は立ち上がる。これ以上佳奈多に危害が及んでは危険だ。それだけではない憎しみを込めて、大翔は兄に近寄った。
「へへへ、はへ、ぇへ………ぁぎゃあああぁぁぁぁああ!!!」
大翔は、仰向けで大の字に転がった兄の股間を踏み潰した。この男が佳奈多の名前を口にするだけで虫唾が走る。
すぐさま佳奈多の元へ寄ると、裏口の扉が開いた。
「警察です!何がありましたか!今の悲鳴は…」
「怪我人がっ、救急車を!」
数人の警察官が倉庫に入ってきた。大翔は大越で警察官を呼ぶ。
「どうしました、何がありました?」
「怪我人あり、救急車要請!」
「なぐ、殴られ、早く、」
「この方のお名前わかりますか」
「ふっ、藤野、佳奈多!助けて、助けてくれ、早く!」
「藤野さん聞こえますかー?藤野さーん」
「おい、こっちも怪我人だ!救急車もう一台!」
バタバタと騒がしい中、大翔はただ佳奈多だけを見ていた。うつ伏せに寝かせた佳奈多の背中が小さく上下している。
(助けて、助けてくれ、かなちゃん、いかないで、)
大翔は胸の中で祈り続けた。
「松本さん、やりすぎだろ…なんだ、コイツ?」
「やべぇ、サイレン聞こえね?パトカーじゃねぇ!?」
「さっさと行くぞ!」
男達は大翔を認識したが、構うことなく慌てて逃げて行く。男達の慌てぶりに大きな何かが起きたのだと知る。大翔は出てくる男をかき分けて中に入ると悲鳴が耳を貫いた。
「たすけて、おねがい!やだ、やだぁあっ!」
「じっと!してろよ!!!」
大翔の兄が佳奈多に被さり、何かを握っている。すぐに佳奈多から離さなければ危険だと判断して、大翔は兄に全身で突進した。大翔の兄は積まれた廃材に突っ込んだ。
佳奈多を抱き起こす。どこか怪我はしていないか何もされていないか。佳奈多は真っ青になって震えている。何かを伝えたいのだろうが歯が鳴って言葉にできないようだ。
音がして見ると、兄は立ち上がっていた。体重も筋力も落ちた大翔の突進では大したダメージを与えられなかった。落ちていた角材を手に向かってきた。迎え討とうとしたが、それよりも早く佳奈多が大翔に被さった。
「かなたちゃん!おクスリ、なくなった、なくなっちゃったよぉお!」
被さった佳奈多から振動が伝わってくる。佳奈多が兄に滅多打ちにされている。
「に、逃げて、ひろく…あぶな、から、薬…逃げ」
必死に伝えてくる佳奈多の顔面に赤い血が垂れていた。佳奈多の頬が腫れているのは誰かに殴られたからだ。さっき乾いた音がした。きっと大翔の兄が佳奈多を殴った音だ。暴力に晒されて、怖いだろうに、佳奈多は必死に大翔を守ろうとしてくれている。
大翔は角材を握り、兄に蹴りを入れた。兄はよろけて倒れ込む。
「かなちゃん、かなちゃんっ!」
佳奈多から返事はない。くったりと大翔に体を預ける佳奈多は、全身に力が入っていない。頭部の外傷は振動を与えてはいけなかったはずだ。佳奈多を、細心の注意を払って床に横たえる。大翔は佳奈多の首筋に触れた。脈はある。
「かなちゃん、起きて、起きてよ、かなちゃん」
「へ、へへ、…かなたちゃん、一緒、一緒にやろーよ。一緒に、行こ~」
兄が転がったまま笑っている。複数の足音が近づいてきた。大翔は立ち上がる。これ以上佳奈多に危害が及んでは危険だ。それだけではない憎しみを込めて、大翔は兄に近寄った。
「へへへ、はへ、ぇへ………ぁぎゃあああぁぁぁぁああ!!!」
大翔は、仰向けで大の字に転がった兄の股間を踏み潰した。この男が佳奈多の名前を口にするだけで虫唾が走る。
すぐさま佳奈多の元へ寄ると、裏口の扉が開いた。
「警察です!何がありましたか!今の悲鳴は…」
「怪我人がっ、救急車を!」
数人の警察官が倉庫に入ってきた。大翔は大越で警察官を呼ぶ。
「どうしました、何がありました?」
「怪我人あり、救急車要請!」
「なぐ、殴られ、早く、」
「この方のお名前わかりますか」
「ふっ、藤野、佳奈多!助けて、助けてくれ、早く!」
「藤野さん聞こえますかー?藤野さーん」
「おい、こっちも怪我人だ!救急車もう一台!」
バタバタと騒がしい中、大翔はただ佳奈多だけを見ていた。うつ伏せに寝かせた佳奈多の背中が小さく上下している。
(助けて、助けてくれ、かなちゃん、いかないで、)
大翔は胸の中で祈り続けた。
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