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何が起きたのかわからないまま佳奈多は周りを見渡す。男が佳奈多を抱えたまま正門の外へ出た。施設の前の歩道で、こちらへ歩いてくる鬼嶋と目が合う。
「ふ、ふじ君!?」
鬼嶋の声に返事をしたかったが、佳奈多は車に連れ込まれて、扉を閉められた。そして大きなエンジンの音と共に、車は動き出してしまった。広い車内には男が数人乗っている。見た目が怖そうな男ばかりだった。なぜこんなことになったのか。佳奈多は扉に向けて手を伸ばしたが、隣の男に止められた。佳奈多の両隣に男が座っている。
「こらこら、じっとしてろや」
「誰か松本さんに連絡入れたか?」
「さっき入れた。倉庫に連れてこいって」
「今日、金もらえんだよね?助かるぅ」
「とっとと借金返せよ~」
男達はそれぞれに話し合っている。佳奈多の名前を知っていた。佳奈多を狙ってきたということだろう。松本、と聞いて大翔を思い浮かべた。しかし大翔なら第三者にこんなことはさせない。それに、佳奈多にこんな乱暴なことをさせるはずがない。一体なんの理由があって佳奈多を連れ去ったのか。
「どこ、い、行く、ですか?ぼく、…お、お仕事、戻らなきゃ」
「どこ行くかは内緒だ」
「お仕事な、今日はもういいんじゃね?でも松本さん、こいつ誘拐して何すんだろうな」
「さぁな。…おい。逃げようなんて考えんなよ」
隣に座る男に強く手首を握られて、佳奈多は身を固くした。手首に強い痛みが走る。抵抗したら折られるのではないだろうか。男は体つきががっしりしている。高校生の頃の、山田の取り巻きを思い出させた。
「あの人、いい年して俺等にこんなこと頼んでよぉ…金払いいいからしょーがねぇけど」
「お前、なんでこんな目に合ってんの?なにやったらこんなことになんだよ。まじ、だっるいわ」
向かいに座る男が、足を伸ばして佳奈多の足を蹴った。佳奈多は首を横に振った。大翔の父の指示なのだろうか。しかしあの人がこんなことを指示するとは思えない。身に覚えがない。
佳奈多は小さくなって震えた。暴力に晒されるのは久しぶりで、恐怖に体が支配されていく。どうにかして逃げないといけないと思うのに、どうしらいいのかわからない。
隣に座る男が佳奈多の腕に太いベルトを巻いた。片腕同士のベルトは金具でつながっていて、両手が拘束されてしまった。
「プレイかて!」
「ないよりマシだろ。SMグッズだからわりとしっかりしてるぞ」
男達はゲラゲラ大声で笑った。今まで周りにいたことのない人種に佳奈多は益々萎縮してしまう。
拐われてからすぐに車は到着した。男達は車を降り、佳奈多も降ろされた。狭い空間にこの男達といるのが怖かった佳奈多は外に出られてほっとした。
しかし眼の前の建物に、安堵はどこかへ消し飛んだ。
近くに波の音が聞こえる。海辺の倉庫のようだ。倉庫は大きく、両隣の倉庫に人が出入りしているが距離があるせいで顔まで判別できない。男達に囲まれた佳奈多の姿は見えないだろう。
人気のない大きな倉庫の裏手に連れて行かれ、中に入る。周りを囲まれて腕の自由を奪われた佳奈多は逃げ出すことができなかった。佳奈多が連れてこられた裏口の近くにソファが置いてある。そこに見知らぬ男が座っていた。男は佳奈多達を見て立ち上がった。
「おせぇよ!何時間かかってんだよ!!」
「すんません松本さん。中々連れ出すチャンスなくて」
「言い訳してんじゃねぇよゴミが!こっち連れてこい!」
松本と呼ばれた男は足元にあったバケツを蹴り飛ばした。金属製のそれは大きな音をたてて吹っ飛んでいく。佳奈多は首を竦めた。耳をふさごうとしたが、手首が拘束されていてできなかった。大きな音が苦手な佳奈多は恐怖で足の力が抜けてしまう。座り込みそうになるがしかし、隣にいた男がそれを許さなかった。
「歩け」
佳奈多は引きずられて松本と呼ばれている男の前に連れ出された。その人は大翔よりも年上で、大翔の父よりも若い。薄々感づいていたが佳奈多は確信した。大翔にはあまり似ていないが、大翔の父の面影がある。
「こんにちはぁ、藤野、佳奈多君。大翔君の、お兄ちゃんだよぉ~」
大翔の兄と名乗る男はニタリと笑った。笑顔は大翔と似ても似つかなかった。
「ふ、ふじ君!?」
鬼嶋の声に返事をしたかったが、佳奈多は車に連れ込まれて、扉を閉められた。そして大きなエンジンの音と共に、車は動き出してしまった。広い車内には男が数人乗っている。見た目が怖そうな男ばかりだった。なぜこんなことになったのか。佳奈多は扉に向けて手を伸ばしたが、隣の男に止められた。佳奈多の両隣に男が座っている。
「こらこら、じっとしてろや」
「誰か松本さんに連絡入れたか?」
「さっき入れた。倉庫に連れてこいって」
「今日、金もらえんだよね?助かるぅ」
「とっとと借金返せよ~」
男達はそれぞれに話し合っている。佳奈多の名前を知っていた。佳奈多を狙ってきたということだろう。松本、と聞いて大翔を思い浮かべた。しかし大翔なら第三者にこんなことはさせない。それに、佳奈多にこんな乱暴なことをさせるはずがない。一体なんの理由があって佳奈多を連れ去ったのか。
「どこ、い、行く、ですか?ぼく、…お、お仕事、戻らなきゃ」
「どこ行くかは内緒だ」
「お仕事な、今日はもういいんじゃね?でも松本さん、こいつ誘拐して何すんだろうな」
「さぁな。…おい。逃げようなんて考えんなよ」
隣に座る男に強く手首を握られて、佳奈多は身を固くした。手首に強い痛みが走る。抵抗したら折られるのではないだろうか。男は体つきががっしりしている。高校生の頃の、山田の取り巻きを思い出させた。
「あの人、いい年して俺等にこんなこと頼んでよぉ…金払いいいからしょーがねぇけど」
「お前、なんでこんな目に合ってんの?なにやったらこんなことになんだよ。まじ、だっるいわ」
向かいに座る男が、足を伸ばして佳奈多の足を蹴った。佳奈多は首を横に振った。大翔の父の指示なのだろうか。しかしあの人がこんなことを指示するとは思えない。身に覚えがない。
佳奈多は小さくなって震えた。暴力に晒されるのは久しぶりで、恐怖に体が支配されていく。どうにかして逃げないといけないと思うのに、どうしらいいのかわからない。
隣に座る男が佳奈多の腕に太いベルトを巻いた。片腕同士のベルトは金具でつながっていて、両手が拘束されてしまった。
「プレイかて!」
「ないよりマシだろ。SMグッズだからわりとしっかりしてるぞ」
男達はゲラゲラ大声で笑った。今まで周りにいたことのない人種に佳奈多は益々萎縮してしまう。
拐われてからすぐに車は到着した。男達は車を降り、佳奈多も降ろされた。狭い空間にこの男達といるのが怖かった佳奈多は外に出られてほっとした。
しかし眼の前の建物に、安堵はどこかへ消し飛んだ。
近くに波の音が聞こえる。海辺の倉庫のようだ。倉庫は大きく、両隣の倉庫に人が出入りしているが距離があるせいで顔まで判別できない。男達に囲まれた佳奈多の姿は見えないだろう。
人気のない大きな倉庫の裏手に連れて行かれ、中に入る。周りを囲まれて腕の自由を奪われた佳奈多は逃げ出すことができなかった。佳奈多が連れてこられた裏口の近くにソファが置いてある。そこに見知らぬ男が座っていた。男は佳奈多達を見て立ち上がった。
「おせぇよ!何時間かかってんだよ!!」
「すんません松本さん。中々連れ出すチャンスなくて」
「言い訳してんじゃねぇよゴミが!こっち連れてこい!」
松本と呼ばれた男は足元にあったバケツを蹴り飛ばした。金属製のそれは大きな音をたてて吹っ飛んでいく。佳奈多は首を竦めた。耳をふさごうとしたが、手首が拘束されていてできなかった。大きな音が苦手な佳奈多は恐怖で足の力が抜けてしまう。座り込みそうになるがしかし、隣にいた男がそれを許さなかった。
「歩け」
佳奈多は引きずられて松本と呼ばれている男の前に連れ出された。その人は大翔よりも年上で、大翔の父よりも若い。薄々感づいていたが佳奈多は確信した。大翔にはあまり似ていないが、大翔の父の面影がある。
「こんにちはぁ、藤野、佳奈多君。大翔君の、お兄ちゃんだよぉ~」
大翔の兄と名乗る男はニタリと笑った。笑顔は大翔と似ても似つかなかった。
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