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「やっと、みつけた…」
ボサボサの髪で、髭も剃っていない大翔がそこにいた。
思ったよりも、遅かった。大翔ならどうにかして、もっと早く佳奈多の居場所を突き止めると思っていた。
そして大翔の姿に佳奈多は動けなかった。まるで病人のように不健康な姿。今までどんな生活を送ってきたのか。彼の父とその秘書は、一体何をしていたのか。
大翔は足取りも危うく佳奈多に近づき、抱きついた。
「会い、たかった。かな、ちゃ…」
「だ、だめだよ、ここ、入ってきちゃ…だめだよ、ひろくん…ひろくん、そう、なっちゃうから、」
佳奈多がいないと大翔は何もできなくなる。きっとろくに食事も取らず、見た目に気も使わずに佳奈多を探していたのだろう。
黙っていなくなったことが原因だ。ひどくボロボロになった大翔に胸が詰まる。佳奈多一人の存在で、大翔はここまで落ちてしまう。
きっと事前に伝えていたら、佳奈多は就職できなかった。だから黙っていなくなった。大翔が探しに来ることも、怒るか落ち込んでしまうだろうことも予想していた。
しかし、大翔の姿は佳奈多の想像していた以上だった。ここまで打ちひしがれてしまうとは思っていなかった。
「ふじ君、ゴミ捨てまだあるよ~……ふじ、君?」
「鬼嶋、せんぱ、っ、佐藤さん、呼んで、下さい!」
「さ、と?…あ、さっ、さと、さん!さとーさん!!こっち来て、早く!!」
鬼嶋が施設内に向かって叫んでくれた。佐藤が転がるように駆けつける。鬼嶋は大翔を指さした。
「さとーさん、あの人、写真の人!」
「大翔!」
鬼嶋の叫びと同時に、裏門から声が聞こえた。大翔の父親が、大翔に近づいてきた。大翔は何も耳に入っていないのか、佳奈多を抱きしめる手を緩めない。
「かなちゃん、かえろ、かなちゃんは…俺が、守って、あげないと」
大翔はうわ言のように呟いた。佳奈多の両手が抱き返そうと動く。しかし両手を握りしめて、必死に止めた。
大翔の父が、佳奈多にしがみついている大翔の肩を掴む。
「触るな!」
大翔は怒鳴って父親の腕を振り払った。振り返り、大翔が拳を振り上げる。佳奈多は叫んだ。
「だめだよ、ひろくん!だめ!」
今度は佳奈多が大翔にしがみつく。大翔は体を支えきれなかったのか、地面に倒れ込んだ。大翔にのしかかる形になった佳奈多は慌てて飛び退く。大翔が上半身を起こして両手を佳奈多に伸ばしたが、佳奈多は首を横に振った。
「…ひろくん、だめだよ、……お父さんと、帰って…」
大翔の両手がぱたりと地面に落ちた。大翔の父の秘書も駆け寄ってくる。
腕を引かれて顔を上げると、鬼嶋が佳奈多の腕を掴んでいた。
「行こう、ふじ君。中、戻ってって、さとーさんが」
佐藤は佳奈多と鬼嶋を背にして大翔に立ち塞がっていた。佳奈多が大翔を見ると、大翔は項垂れたまま動かない。佳奈多は振り払うように、鬼嶋と施設内に戻った。休憩室に入り、鬼嶋と二人、息を整える。
「あの人…ふじ君、知り合い?」
佳奈多は迷ったが頷いた。鬼嶋は『写真の人』と佐藤に伝えていた。職員全員に伝達されているのだろう。
佳奈多は驚いた。しかし、思ったよりも遅かったな、とも思った。やっぱり大翔の父とその秘書に、彼を止めることはできなかった。
「ぅ…と、友達、です」
「友、達……友達なら、ちゃんと、お話したほうがいいと思う…」
鬼嶋はポツリと呟いた。大きな瞳が佳奈多を見つめている。
「事情、わかんないけど…話せばあの人、ちゃんとわかってくれる気がする」
佳奈多は俯いた。佳奈多を断ち切るために、何も言わずに大翔の前から去れと大翔の父と秘書に言われた。話しても大翔はきっと納得しない。話したら余計に離れられなくなる。そう思った佳奈多は大翔の父の条件を飲んだ。大翔の父に監視してもらえば大翔は、少なくとも自死はしないだろう。
ボサボサの髪で、髭も剃っていない大翔がそこにいた。
思ったよりも、遅かった。大翔ならどうにかして、もっと早く佳奈多の居場所を突き止めると思っていた。
そして大翔の姿に佳奈多は動けなかった。まるで病人のように不健康な姿。今までどんな生活を送ってきたのか。彼の父とその秘書は、一体何をしていたのか。
大翔は足取りも危うく佳奈多に近づき、抱きついた。
「会い、たかった。かな、ちゃ…」
「だ、だめだよ、ここ、入ってきちゃ…だめだよ、ひろくん…ひろくん、そう、なっちゃうから、」
佳奈多がいないと大翔は何もできなくなる。きっとろくに食事も取らず、見た目に気も使わずに佳奈多を探していたのだろう。
黙っていなくなったことが原因だ。ひどくボロボロになった大翔に胸が詰まる。佳奈多一人の存在で、大翔はここまで落ちてしまう。
きっと事前に伝えていたら、佳奈多は就職できなかった。だから黙っていなくなった。大翔が探しに来ることも、怒るか落ち込んでしまうだろうことも予想していた。
しかし、大翔の姿は佳奈多の想像していた以上だった。ここまで打ちひしがれてしまうとは思っていなかった。
「ふじ君、ゴミ捨てまだあるよ~……ふじ、君?」
「鬼嶋、せんぱ、っ、佐藤さん、呼んで、下さい!」
「さ、と?…あ、さっ、さと、さん!さとーさん!!こっち来て、早く!!」
鬼嶋が施設内に向かって叫んでくれた。佐藤が転がるように駆けつける。鬼嶋は大翔を指さした。
「さとーさん、あの人、写真の人!」
「大翔!」
鬼嶋の叫びと同時に、裏門から声が聞こえた。大翔の父親が、大翔に近づいてきた。大翔は何も耳に入っていないのか、佳奈多を抱きしめる手を緩めない。
「かなちゃん、かえろ、かなちゃんは…俺が、守って、あげないと」
大翔はうわ言のように呟いた。佳奈多の両手が抱き返そうと動く。しかし両手を握りしめて、必死に止めた。
大翔の父が、佳奈多にしがみついている大翔の肩を掴む。
「触るな!」
大翔は怒鳴って父親の腕を振り払った。振り返り、大翔が拳を振り上げる。佳奈多は叫んだ。
「だめだよ、ひろくん!だめ!」
今度は佳奈多が大翔にしがみつく。大翔は体を支えきれなかったのか、地面に倒れ込んだ。大翔にのしかかる形になった佳奈多は慌てて飛び退く。大翔が上半身を起こして両手を佳奈多に伸ばしたが、佳奈多は首を横に振った。
「…ひろくん、だめだよ、……お父さんと、帰って…」
大翔の両手がぱたりと地面に落ちた。大翔の父の秘書も駆け寄ってくる。
腕を引かれて顔を上げると、鬼嶋が佳奈多の腕を掴んでいた。
「行こう、ふじ君。中、戻ってって、さとーさんが」
佐藤は佳奈多と鬼嶋を背にして大翔に立ち塞がっていた。佳奈多が大翔を見ると、大翔は項垂れたまま動かない。佳奈多は振り払うように、鬼嶋と施設内に戻った。休憩室に入り、鬼嶋と二人、息を整える。
「あの人…ふじ君、知り合い?」
佳奈多は迷ったが頷いた。鬼嶋は『写真の人』と佐藤に伝えていた。職員全員に伝達されているのだろう。
佳奈多は驚いた。しかし、思ったよりも遅かったな、とも思った。やっぱり大翔の父とその秘書に、彼を止めることはできなかった。
「ぅ…と、友達、です」
「友、達……友達なら、ちゃんと、お話したほうがいいと思う…」
鬼嶋はポツリと呟いた。大きな瞳が佳奈多を見つめている。
「事情、わかんないけど…話せばあの人、ちゃんとわかってくれる気がする」
佳奈多は俯いた。佳奈多を断ち切るために、何も言わずに大翔の前から去れと大翔の父と秘書に言われた。話しても大翔はきっと納得しない。話したら余計に離れられなくなる。そう思った佳奈多は大翔の父の条件を飲んだ。大翔の父に監視してもらえば大翔は、少なくとも自死はしないだろう。
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