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「ひろくんの、お父さん、が、依存してるって言ってたのは、そうだと思います。僕も、ひろくんに、依存してる…僕、ひろくんに、ひろくんの大学に、行ってほしいです」
だからこそ、大翔と佳奈多は離れたほうがいい。ただ、どうしたら離れられるだろうか。大翔の父と秘書の提案を承諾したものの、進路について大翔にどう伝えるか。勘の良い大翔にはバレてしまう気がする。
それに、佳奈多がいなくなったときの大翔を思うと背筋が寒くなる。大翔は一体どうなってしまうのか。
佳奈多がいなくなったあとは、大翔の父と秘書が大翔を監視するはすだ。大翔の父と秘書は大切な松本家の跡取りを失うような真似はしないはず。そう信じるしかない。
「思っていた以上に、君達は複雜だな………藤野君が就職を希望していることはわかった。ご実家に戻りたくないことも。寮付きの就職先をいくつか探してみよう。それから松本君だが…」
担任は口を閉ざした。考え込んでいる姿に、佳奈多はじっと言葉を待った。信頼して良いのかどうかわからないが、今、話しを聞いてくれている担任の考えを聞きたかった。
「藤野君は、卒業後に松本君と離れるということで、いいのかな。納得はしてるのか?」
佳奈多は頷く。担任はまた少し考えて口を開いた。
「松本君に、進学をやめて一緒に暮らすと伝えてみるのはどうだろう…藤野君は、進学も就職もせずに松本君の家にいると話して、松本君には自身の志望校への進学を目差してもらう。折を見て藤野君は就職活動を進める…恐らく、松本君が受験に専念してくれたほうが、藤野君は就職活動をしやすくなると思うんだが…どうだろう?」
担任の提案を、佳奈多は頭の中で復唱した。佳奈多が進学せず傍にいると言えば、大翔は心配するだろう。しかしそれ以上に喜んでくれるのではないだろうか。大翔の自宅で、佳奈多は大翔の帰りを待つ。一緒に大学へ通えなくても、佳奈多が常に大翔の目の届くところにいる。大翔の心の安定が保たれるだろう。
進学をしない佳奈多は受験の模試や試験の必要がなくなる。大翔は参加しなければならないその時間を、就職活動に充てることができる。
佳奈多は担任に頷いた。うまくいくかはわからないが、今はそれが最善のように思えた。
「就職について、藤野君のお父様には私から伝えておく。松本君のお父様にも、今の話を伝えておこう。どうなるかわからないが…何かあれば、先生に教えてほしい。悪かった。話を聞くのが、遅すぎたな…」
佳奈多は首を横に振った。少なくとも今、佳奈多が進む道が少し見えてきた。佳奈多にとっては大きな一歩だ。
佳奈多がいなくなったあとの大翔や、就職が現実味を帯びてきたこと。
これからを思い、佳奈多はとても怖かった。
大翔と合流して帰宅する。不安気な大翔に進路について話すと、強く抱きしめられた。
「う、嬉しい、かなちゃん、本当に…」
「ひろ、く…苦し…」
大翔が心底喜んでいるとわかる。高揚している大翔に、佳奈多は唇を噛んだ。大切な存在が目の前からいなくなる辛さを、佳奈多も知っている。大翔にまた、あの苦しみを味わわせることになる。
佳奈多は大翔に笑いかけた。
「受験、しない。けど、卒業したいから、僕も、勉強する」
うまく笑えただろうか。嘘に気づかれないように。せめて傍にいる間、大翔が安心していられるように。佳奈多が大翔を守れるように。
佳奈多は深い口づけを受けながら、嘘をついている現状に心が痛くて仕方がない。でも、これはきっと、今まで大翔を利用してきたことへの罰だ。
佳奈多は甘んじて受け入れなければならない。
だからこそ、大翔と佳奈多は離れたほうがいい。ただ、どうしたら離れられるだろうか。大翔の父と秘書の提案を承諾したものの、進路について大翔にどう伝えるか。勘の良い大翔にはバレてしまう気がする。
それに、佳奈多がいなくなったときの大翔を思うと背筋が寒くなる。大翔は一体どうなってしまうのか。
佳奈多がいなくなったあとは、大翔の父と秘書が大翔を監視するはすだ。大翔の父と秘書は大切な松本家の跡取りを失うような真似はしないはず。そう信じるしかない。
「思っていた以上に、君達は複雜だな………藤野君が就職を希望していることはわかった。ご実家に戻りたくないことも。寮付きの就職先をいくつか探してみよう。それから松本君だが…」
担任は口を閉ざした。考え込んでいる姿に、佳奈多はじっと言葉を待った。信頼して良いのかどうかわからないが、今、話しを聞いてくれている担任の考えを聞きたかった。
「藤野君は、卒業後に松本君と離れるということで、いいのかな。納得はしてるのか?」
佳奈多は頷く。担任はまた少し考えて口を開いた。
「松本君に、進学をやめて一緒に暮らすと伝えてみるのはどうだろう…藤野君は、進学も就職もせずに松本君の家にいると話して、松本君には自身の志望校への進学を目差してもらう。折を見て藤野君は就職活動を進める…恐らく、松本君が受験に専念してくれたほうが、藤野君は就職活動をしやすくなると思うんだが…どうだろう?」
担任の提案を、佳奈多は頭の中で復唱した。佳奈多が進学せず傍にいると言えば、大翔は心配するだろう。しかしそれ以上に喜んでくれるのではないだろうか。大翔の自宅で、佳奈多は大翔の帰りを待つ。一緒に大学へ通えなくても、佳奈多が常に大翔の目の届くところにいる。大翔の心の安定が保たれるだろう。
進学をしない佳奈多は受験の模試や試験の必要がなくなる。大翔は参加しなければならないその時間を、就職活動に充てることができる。
佳奈多は担任に頷いた。うまくいくかはわからないが、今はそれが最善のように思えた。
「就職について、藤野君のお父様には私から伝えておく。松本君のお父様にも、今の話を伝えておこう。どうなるかわからないが…何かあれば、先生に教えてほしい。悪かった。話を聞くのが、遅すぎたな…」
佳奈多は首を横に振った。少なくとも今、佳奈多が進む道が少し見えてきた。佳奈多にとっては大きな一歩だ。
佳奈多がいなくなったあとの大翔や、就職が現実味を帯びてきたこと。
これからを思い、佳奈多はとても怖かった。
大翔と合流して帰宅する。不安気な大翔に進路について話すと、強く抱きしめられた。
「う、嬉しい、かなちゃん、本当に…」
「ひろ、く…苦し…」
大翔が心底喜んでいるとわかる。高揚している大翔に、佳奈多は唇を噛んだ。大切な存在が目の前からいなくなる辛さを、佳奈多も知っている。大翔にまた、あの苦しみを味わわせることになる。
佳奈多は大翔に笑いかけた。
「受験、しない。けど、卒業したいから、僕も、勉強する」
うまく笑えただろうか。嘘に気づかれないように。せめて傍にいる間、大翔が安心していられるように。佳奈多が大翔を守れるように。
佳奈多は深い口づけを受けながら、嘘をついている現状に心が痛くて仕方がない。でも、これはきっと、今まで大翔を利用してきたことへの罰だ。
佳奈多は甘んじて受け入れなければならない。
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