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「先生、就職のこと、相談したいです。住むところがある、働ける所」
「………私からも、お願いします。卒業までは二人を、引き離さないであげて下さい。今藤野君がいなくなれば、松本君は大学受験をしないと思います。藤野君は、それをとても心配し、懸念していました。ずっと、藤野君自身の、進路を決めることができなかった。二人を一緒に、卒業させてあげて下さい」
担任は大翔の父に頭を下げた。しばらくの沈黙のあと、大翔の父の秘書が口を開く。
「そのような我儘を、なぜ我々が…」
「わかった。卒業まではあの家で暮らしていい。卒業の後に、出ていってもらう」
秘書の言葉を遮って、大翔の父は佳奈多と担任から目を逸らせて答えた。卒業まで、と、確約が取れた。それまでに、佳奈多は就職先と、大翔と離れる方法を探らなければならない。
パンパンと乾いた音が響いた。学年主任が手を叩いて拍手をしている。満面の笑顔を浮かべていた。
「いや~良かった!話はまとまりましたね。藤野、もっと早く承諾しろよ!まったく…さ、お二方、学園長室の方へ。学園長がお待ちですので。先生はここで藤野の就職相談をするように。さぁさぁ、こちらです」
学年主任は大げさに、両手で部屋から出るようにアピールしている。佳奈多の担任に、佳奈多に就職指導をするように指示して扉を開けた。
大翔の父は立ち上がった。去ろうとする二人に佳奈多は声を掛ける。
「大翔君の、お父さん、秘書さん。僕がいなくなったら、大翔君、死んじゃいます。絶対、大翔君が、死なないように、見てて、あげて下さい」
大翔の父は青ざめて、秘書は憎々しげに佳奈多を見た。
この人達は駄目だ。きっと大翔を駄目にする。
自立して、佳奈多が大翔を迎えに行く。
今は大翔が自身のために進学をして、大翔自身のために日々を過ごせるように。そのために、あえて彼らの条件を飲んで大翔をこの人達に見張らせて、佳奈多は自立することを決意した。
「藤野君、すまなかった。こんなことになって…申し訳ない」
担任と残された応接室で、担任は青い顔で深々と頭を下げた。佳奈多は首を横に振る。
「どうして、今日、この部屋、に」
「学年主任から、面談は応接室だとしか聞かされてなかった。もっと、理由を聞くべきだった。すまない………本当にいいのか?進学は」
ここは、松本家の息のかかった学園だ。教師の中にも松本家側の人間がいるということだろう。
担任は佳奈多に問う。佳奈多は頷いた。
「ずっと、相談したかったです。どうやって、就職先、探したらいいか…僕、家に、帰りたくないです。お父さん、お母さんを殴って、お母さんいなくて」
学年主任がいなくなってくれて良かった。大翔の父に、佳奈多の家のことがどう伝わっているのかわからないが、大翔の父や秘書にも聞かれたくなかった。
「ひ…松本君を、説得して、就職、しようと思って…どうしたら、説得、できるか、相談したかったです」
担任は佳奈多の隣に座り、何度も頷いて佳奈多の話に聞き入っていた。佳奈多が話し終えると深いため息をついた。
「ご両親のことは…わかった。確認なんだが、藤野君は、松本君から、その…いじめというか、ひどいことはされていないのか?説得しなければならないという状況は、その…普通ではないと思うんだ」
佳奈多は首を横に振る。
「ないです。ひどいこと、されて、ないです。僕の、お父さんのこと知って、守ってくれて、他にもたくさん…僕を、大切にしてくれる、人です。ひろくん、心配性、で…」
佳奈多の父親のこと、担任には言えないがコンビニのオジサンのこと。佳奈多は何度も大翔の手を煩わせてきた。きっと大翔の中に『佳奈多は守ってあげなければいけない存在』という想いが強くあるのだろう。
佳奈多がそう、させてしまった。
「………私からも、お願いします。卒業までは二人を、引き離さないであげて下さい。今藤野君がいなくなれば、松本君は大学受験をしないと思います。藤野君は、それをとても心配し、懸念していました。ずっと、藤野君自身の、進路を決めることができなかった。二人を一緒に、卒業させてあげて下さい」
担任は大翔の父に頭を下げた。しばらくの沈黙のあと、大翔の父の秘書が口を開く。
「そのような我儘を、なぜ我々が…」
「わかった。卒業まではあの家で暮らしていい。卒業の後に、出ていってもらう」
秘書の言葉を遮って、大翔の父は佳奈多と担任から目を逸らせて答えた。卒業まで、と、確約が取れた。それまでに、佳奈多は就職先と、大翔と離れる方法を探らなければならない。
パンパンと乾いた音が響いた。学年主任が手を叩いて拍手をしている。満面の笑顔を浮かべていた。
「いや~良かった!話はまとまりましたね。藤野、もっと早く承諾しろよ!まったく…さ、お二方、学園長室の方へ。学園長がお待ちですので。先生はここで藤野の就職相談をするように。さぁさぁ、こちらです」
学年主任は大げさに、両手で部屋から出るようにアピールしている。佳奈多の担任に、佳奈多に就職指導をするように指示して扉を開けた。
大翔の父は立ち上がった。去ろうとする二人に佳奈多は声を掛ける。
「大翔君の、お父さん、秘書さん。僕がいなくなったら、大翔君、死んじゃいます。絶対、大翔君が、死なないように、見てて、あげて下さい」
大翔の父は青ざめて、秘書は憎々しげに佳奈多を見た。
この人達は駄目だ。きっと大翔を駄目にする。
自立して、佳奈多が大翔を迎えに行く。
今は大翔が自身のために進学をして、大翔自身のために日々を過ごせるように。そのために、あえて彼らの条件を飲んで大翔をこの人達に見張らせて、佳奈多は自立することを決意した。
「藤野君、すまなかった。こんなことになって…申し訳ない」
担任と残された応接室で、担任は青い顔で深々と頭を下げた。佳奈多は首を横に振る。
「どうして、今日、この部屋、に」
「学年主任から、面談は応接室だとしか聞かされてなかった。もっと、理由を聞くべきだった。すまない………本当にいいのか?進学は」
ここは、松本家の息のかかった学園だ。教師の中にも松本家側の人間がいるということだろう。
担任は佳奈多に問う。佳奈多は頷いた。
「ずっと、相談したかったです。どうやって、就職先、探したらいいか…僕、家に、帰りたくないです。お父さん、お母さんを殴って、お母さんいなくて」
学年主任がいなくなってくれて良かった。大翔の父に、佳奈多の家のことがどう伝わっているのかわからないが、大翔の父や秘書にも聞かれたくなかった。
「ひ…松本君を、説得して、就職、しようと思って…どうしたら、説得、できるか、相談したかったです」
担任は佳奈多の隣に座り、何度も頷いて佳奈多の話に聞き入っていた。佳奈多が話し終えると深いため息をついた。
「ご両親のことは…わかった。確認なんだが、藤野君は、松本君から、その…いじめというか、ひどいことはされていないのか?説得しなければならないという状況は、その…普通ではないと思うんだ」
佳奈多は首を横に振る。
「ないです。ひどいこと、されて、ないです。僕の、お父さんのこと知って、守ってくれて、他にもたくさん…僕を、大切にしてくれる、人です。ひろくん、心配性、で…」
佳奈多の父親のこと、担任には言えないがコンビニのオジサンのこと。佳奈多は何度も大翔の手を煩わせてきた。きっと大翔の中に『佳奈多は守ってあげなければいけない存在』という想いが強くあるのだろう。
佳奈多がそう、させてしまった。
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