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昼間の、女子に声をかけられていた大翔を思い出す。系列校の女子もそうじゃない女性も、たくさん声をかけてきた。背が高くて格好いい。本物の王子様のような大翔。そんな彼と今まで何度も体を重ねてきた。
王子様と、なんてことをしてしまったのだろう。
今更。背後から抱きしめられているだけで佳奈多の胸は早鐘を打った。
次の日も園内を回りながら、佳奈多は大翔の顔が直視できなかった。可愛らしいキャラクターの飾りを頭につけても様になっている大翔が羨ましくて眩しい。佳奈多はあれこれ周りながら気を紛らわせて、ポップコーンを頬張った。
「かなちゃん。そんなに焦って食べたらむせちゃうよ」
愛おしげに佳奈多を見る大翔に口を拭われて、佳奈多はうつむいた。耳まで熱くなってしまった。
大翔は佳奈多が好き。
だいぶ前に気づいたことで、その気持ちを散々利用してきた。体を重ねるようになって、佳奈多は佳奈多なりに大翔を大切にしてきたつもりだった。好きかと問われれば、佳奈多は大翔のことが好きだった。昔からずっと。ただその好きは恋愛感情じゃなくて友情の延長だった。
(どうしよう)
佳奈多に不安が過ぎる。
(セックス、できるかな)
修学旅行が終わって大翔の自宅に帰った後、大翔とすることができるだろうか。唐突に、修学旅行のこの数日で、佳奈多は大翔を意識してしまった。
朝から何度も、大翔は女性から声をかけられている。大翔はにべもなく断っている。佳奈多は胸辺りがざわざわした。女性が大翔に声をかけてくることが不快だった。
佳奈多は大翔の繋いだ手を解き、指を絡めて繋ぎ直した。この繋ぎ方は、佳奈多からはしたことがない。大翔は驚いきながら佳奈多を見た。
「かなちゃん?」
顔を見られるのが恥ずかしくて佳奈多は下を向く。
『可愛い~恋人同士かな?』
小学生の頃の修学旅行で、大翔と手を繋いでいて他の観光客にからかわれたことがある。今大翔に声をかけようとする女性達が、佳奈多と大翔の手のつなぎ方に気付いてくれたらいいと願う。
大翔の指が佳奈多の指を擦るように動く。気づけば大翔は佳奈多の耳に唇を当てていた。
「可愛い。かなちゃん…」
耳を吸い上げられて、佳奈多は吐息を漏らしそうになる。口を空いた手で押さえて堪えた。いやらしく動く大翔の指を諌めるように、佳奈多は大翔の手を握る手に力を込める。
(どうしよう………ひろくんと、セックス、したい)
ついさっきまで不安に思っていたのに、今度は真逆のことを考えている。恥ずかしいことを考えて、佳奈多は益々顔が上げられなくなった。
それから帰りまで、佳奈多はふわふわと浮ついた気持ちのままだった。今までは大翔が触れてくることが多かったが、パーク内でもホテルの部屋の中でも、特に意味もなく何度も大翔の体に触れた。
「あんまりくすぐらないで。駄目って言ったの、かなちゃんでしょ」
佳奈多は黙って頷いて、大翔の体に触れることをやめなかった。口を尖らせていた大翔はついに、しょうがないな、と笑ってくれた。
きっとあの頃が一番『恋人同士』だったのだろうと、佳奈多は思う。
甘くて幸せな時間はあっという間に過ぎ去った。
修学旅行が終わり、クラスの様子は一変した。みな受験に向けて勉強に励んでいる。佳奈多達の通う学園は進学校だ。志望校が決まっていないのは、おそらく佳奈多だけだろう。学年主任を交えての面談が決まった。大翔が同席すると言ってくれたが、珍しく学年主任が頭を下げて断った。
「今回は将来のことや守秘義務もあって…誠に、申し訳ない」
深々と頭を下げる学年主任を前に、佳奈多は大翔に声をかけた。
「大丈夫だよ、ひろくん。も、もう、決めなくちゃ、だめだよね」
待っている間に少しでも大翔が勉強できるように、佳奈多は大翔に図書館にいてほしいとお願いした。大翔の模試は全てA判定だったが、貴重な時間をただ佳奈多を待つだけに使ってほしくない。周りの受験の空気に佳奈多も飲まれていた。
王子様と、なんてことをしてしまったのだろう。
今更。背後から抱きしめられているだけで佳奈多の胸は早鐘を打った。
次の日も園内を回りながら、佳奈多は大翔の顔が直視できなかった。可愛らしいキャラクターの飾りを頭につけても様になっている大翔が羨ましくて眩しい。佳奈多はあれこれ周りながら気を紛らわせて、ポップコーンを頬張った。
「かなちゃん。そんなに焦って食べたらむせちゃうよ」
愛おしげに佳奈多を見る大翔に口を拭われて、佳奈多はうつむいた。耳まで熱くなってしまった。
大翔は佳奈多が好き。
だいぶ前に気づいたことで、その気持ちを散々利用してきた。体を重ねるようになって、佳奈多は佳奈多なりに大翔を大切にしてきたつもりだった。好きかと問われれば、佳奈多は大翔のことが好きだった。昔からずっと。ただその好きは恋愛感情じゃなくて友情の延長だった。
(どうしよう)
佳奈多に不安が過ぎる。
(セックス、できるかな)
修学旅行が終わって大翔の自宅に帰った後、大翔とすることができるだろうか。唐突に、修学旅行のこの数日で、佳奈多は大翔を意識してしまった。
朝から何度も、大翔は女性から声をかけられている。大翔はにべもなく断っている。佳奈多は胸辺りがざわざわした。女性が大翔に声をかけてくることが不快だった。
佳奈多は大翔の繋いだ手を解き、指を絡めて繋ぎ直した。この繋ぎ方は、佳奈多からはしたことがない。大翔は驚いきながら佳奈多を見た。
「かなちゃん?」
顔を見られるのが恥ずかしくて佳奈多は下を向く。
『可愛い~恋人同士かな?』
小学生の頃の修学旅行で、大翔と手を繋いでいて他の観光客にからかわれたことがある。今大翔に声をかけようとする女性達が、佳奈多と大翔の手のつなぎ方に気付いてくれたらいいと願う。
大翔の指が佳奈多の指を擦るように動く。気づけば大翔は佳奈多の耳に唇を当てていた。
「可愛い。かなちゃん…」
耳を吸い上げられて、佳奈多は吐息を漏らしそうになる。口を空いた手で押さえて堪えた。いやらしく動く大翔の指を諌めるように、佳奈多は大翔の手を握る手に力を込める。
(どうしよう………ひろくんと、セックス、したい)
ついさっきまで不安に思っていたのに、今度は真逆のことを考えている。恥ずかしいことを考えて、佳奈多は益々顔が上げられなくなった。
それから帰りまで、佳奈多はふわふわと浮ついた気持ちのままだった。今までは大翔が触れてくることが多かったが、パーク内でもホテルの部屋の中でも、特に意味もなく何度も大翔の体に触れた。
「あんまりくすぐらないで。駄目って言ったの、かなちゃんでしょ」
佳奈多は黙って頷いて、大翔の体に触れることをやめなかった。口を尖らせていた大翔はついに、しょうがないな、と笑ってくれた。
きっとあの頃が一番『恋人同士』だったのだろうと、佳奈多は思う。
甘くて幸せな時間はあっという間に過ぎ去った。
修学旅行が終わり、クラスの様子は一変した。みな受験に向けて勉強に励んでいる。佳奈多達の通う学園は進学校だ。志望校が決まっていないのは、おそらく佳奈多だけだろう。学年主任を交えての面談が決まった。大翔が同席すると言ってくれたが、珍しく学年主任が頭を下げて断った。
「今回は将来のことや守秘義務もあって…誠に、申し訳ない」
深々と頭を下げる学年主任を前に、佳奈多は大翔に声をかけた。
「大丈夫だよ、ひろくん。も、もう、決めなくちゃ、だめだよね」
待っている間に少しでも大翔が勉強できるように、佳奈多は大翔に図書館にいてほしいとお願いした。大翔の模試は全てA判定だったが、貴重な時間をただ佳奈多を待つだけに使ってほしくない。周りの受験の空気に佳奈多も飲まれていた。
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