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「わかった。かなちゃん、すぐに行くから」
大翔は教室に戻っていった。佳奈多はあとを追いたかったが、動けなかった。山田が大翔に見えないように、佳奈多の脇腹を掴んでいた。山田の指がギリギリと食い込んでくる。
「かなちゃ~ん。空気って、読める?」
山田は笑って、目を釣り上げて佳奈多を見ていた。恐怖に竦んで佳奈多はますます動けない。そんな佳奈多の脇腹を、山田は容赦なく殴った。
「歩けよ、グズ。大翔様にべったりくっつきやがって、さっさとどっか行けよクソグズ!…そうそう、あいつらがね、来週遊ぼうねって。ホテル取ったから、放課後に。俺は大翔様と隣の部屋でするから…ふふ。喜んで下さるといいなぁ」
山田はうっとりと何かを夢見ている。山田と大翔がどうなるかはわからないが、あの3人に連れ込まれたら佳奈多は抵抗できないだろう。恐怖が思ったよりも早く眼の前にやってきた。佳奈多は足が止まりそうになって、懸命に動かした。
「馬鹿だよねぇ。さっさと大翔様から離れてりゃこんなことになんなかったのに。それともぉ、あいつらにやられること、期待してたぁ?ホテルが駄目でも来週、どっかであいつらと楽しんで。穴だらけにされちまえ♡」
佳奈多は山田から顔を背けた。山田はとても楽しそうで、心底佳奈多を憎んでいるのだと思い知らされた。
移動教室に入ると視線が突き刺さった。大翔はまだ来ない。山田に乱暴に席に座らされて、周りの生徒が笑った。
「ついに、松本君に…」
「捨てられたんだぁ」
クスクスと笑う声が聞こえる。佳奈多は俯いて顔を上げなかった。こんな状況を招いたのは全て佳奈多自身のせいだ。
どうにか大翔を繋ぎ止めなくては。大翔に捨てられたら、山田の取り巻きに蹂躙されて、クラスでも孤立してしまうだろう。クラスメイトからもきっと何かされる。何をされるかわからない。
もう、時間の猶予がない。
それからやってきた金曜日。佳奈多は大翔よりも後に風呂に入り、後ろを綺麗にして裸で寝室に向かった。明るい寝室とこちらを向いている大翔に驚いたが、大翔は目を閉じていた。ベッドに上がり、布団に入って大翔の隣りに横たわる。全裸でいることが恥ずかしく、怖くて明かりを落とした。大翔はとても静かで、佳奈多から背中を向けているせいで寝ているのか起きているのかわからない。どうしたらいいのかわからず逡巡していると、大翔が寝返りをうった。
大翔の左手が佳奈多の剥き出しの脇腹に触れる。大翔は何かを確かめるように佳奈多の脇腹をなで上げた。するすると肌の上を滑る大翔の手がくすぐったい。大翔は起きているのだろうか。佳奈多は大翔にのしかかり、顔を覗いた。
「ん…」
声を掛けると、大翔は眉をひそめてゆっくり目を開けた。どうやら眠っていたようだ。大翔は佳奈多を見て、何度か目を瞬かせる。
「どう…したの、かなちゃん。服、着て」
服を着ることを拒否して、離れようとする大翔にすがりついた。
佳奈多は意を決して喉から絞り出した。大翔と何をしようとしていたのか。
「…セックス、する」
『えっちなことたくさんしようね』
『藤野君、…処女なの?』
『ガッバガバにされちゃえ』
口に出した途端、頭の中に様々な声が反響した。佳奈多は震えた。本当にこれでいいのか。大翔と行為を行って良いのだろうか。恐怖と不安で胸が押しつぶされそうになる。
「今度は、何?なに、したの?」
大翔の怒気を含んだ声で、佳奈多は限界を超えてしまった。大翔が怒っている。どうしたらいいのか、どういえばいいのか。頭の中で、プチリと音がした。考える前に口が動いていた。
「したいの、ひろくん、す…す、き、だから」
大翔の気持ちを利用して、佳奈多の都合の良いようにしようとしている。こんなことを、してはいけない。大翔の想いを踏みにじるような行為だ。頭ではわかっているのに、佳奈多は後戻りできなくなっていた。
大翔は教室に戻っていった。佳奈多はあとを追いたかったが、動けなかった。山田が大翔に見えないように、佳奈多の脇腹を掴んでいた。山田の指がギリギリと食い込んでくる。
「かなちゃ~ん。空気って、読める?」
山田は笑って、目を釣り上げて佳奈多を見ていた。恐怖に竦んで佳奈多はますます動けない。そんな佳奈多の脇腹を、山田は容赦なく殴った。
「歩けよ、グズ。大翔様にべったりくっつきやがって、さっさとどっか行けよクソグズ!…そうそう、あいつらがね、来週遊ぼうねって。ホテル取ったから、放課後に。俺は大翔様と隣の部屋でするから…ふふ。喜んで下さるといいなぁ」
山田はうっとりと何かを夢見ている。山田と大翔がどうなるかはわからないが、あの3人に連れ込まれたら佳奈多は抵抗できないだろう。恐怖が思ったよりも早く眼の前にやってきた。佳奈多は足が止まりそうになって、懸命に動かした。
「馬鹿だよねぇ。さっさと大翔様から離れてりゃこんなことになんなかったのに。それともぉ、あいつらにやられること、期待してたぁ?ホテルが駄目でも来週、どっかであいつらと楽しんで。穴だらけにされちまえ♡」
佳奈多は山田から顔を背けた。山田はとても楽しそうで、心底佳奈多を憎んでいるのだと思い知らされた。
移動教室に入ると視線が突き刺さった。大翔はまだ来ない。山田に乱暴に席に座らされて、周りの生徒が笑った。
「ついに、松本君に…」
「捨てられたんだぁ」
クスクスと笑う声が聞こえる。佳奈多は俯いて顔を上げなかった。こんな状況を招いたのは全て佳奈多自身のせいだ。
どうにか大翔を繋ぎ止めなくては。大翔に捨てられたら、山田の取り巻きに蹂躙されて、クラスでも孤立してしまうだろう。クラスメイトからもきっと何かされる。何をされるかわからない。
もう、時間の猶予がない。
それからやってきた金曜日。佳奈多は大翔よりも後に風呂に入り、後ろを綺麗にして裸で寝室に向かった。明るい寝室とこちらを向いている大翔に驚いたが、大翔は目を閉じていた。ベッドに上がり、布団に入って大翔の隣りに横たわる。全裸でいることが恥ずかしく、怖くて明かりを落とした。大翔はとても静かで、佳奈多から背中を向けているせいで寝ているのか起きているのかわからない。どうしたらいいのかわからず逡巡していると、大翔が寝返りをうった。
大翔の左手が佳奈多の剥き出しの脇腹に触れる。大翔は何かを確かめるように佳奈多の脇腹をなで上げた。するすると肌の上を滑る大翔の手がくすぐったい。大翔は起きているのだろうか。佳奈多は大翔にのしかかり、顔を覗いた。
「ん…」
声を掛けると、大翔は眉をひそめてゆっくり目を開けた。どうやら眠っていたようだ。大翔は佳奈多を見て、何度か目を瞬かせる。
「どう…したの、かなちゃん。服、着て」
服を着ることを拒否して、離れようとする大翔にすがりついた。
佳奈多は意を決して喉から絞り出した。大翔と何をしようとしていたのか。
「…セックス、する」
『えっちなことたくさんしようね』
『藤野君、…処女なの?』
『ガッバガバにされちゃえ』
口に出した途端、頭の中に様々な声が反響した。佳奈多は震えた。本当にこれでいいのか。大翔と行為を行って良いのだろうか。恐怖と不安で胸が押しつぶされそうになる。
「今度は、何?なに、したの?」
大翔の怒気を含んだ声で、佳奈多は限界を超えてしまった。大翔が怒っている。どうしたらいいのか、どういえばいいのか。頭の中で、プチリと音がした。考える前に口が動いていた。
「したいの、ひろくん、す…す、き、だから」
大翔の気持ちを利用して、佳奈多の都合の良いようにしようとしている。こんなことを、してはいけない。大翔の想いを踏みにじるような行為だ。頭ではわかっているのに、佳奈多は後戻りできなくなっていた。
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