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数日後。帰宅した佳奈多は鞄の中に、見慣れない容器が入っているのを見つけた。ラベルにはローションと書かれていて、もう一つは浣腸だった。きっと山田が入れたのだろう。
体育祭でのあの話は本気らしい。山田は佳奈多を傷つけることを躊躇しない。きっと本当に、あの3人に乱暴される。
佳奈多は必死に考えた。あの3人から、山田から逃れるためにどうしたらいいのか。山田は大翔が好きで、邪魔な佳奈多を排除したくてこんなことをしている。かといって大翔から離れたら、佳奈多はすぐに彼らに蹂躙されるだろう。彼らだけではない。今まで大翔を独占してきた佳奈多に恨みを持つものは多い。大翔から離れることは悪手だ。佳奈多はソファの上で体を丸めて小さくなった。
まさか山田からこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。いつも暗い瞳で佳奈多を見つめていた彼は、思っていた以上に佳奈多に対して深い闇を抱えていた。
「かなちゃん。お風呂、先にどうぞ」
大翔はぼんやりとスマホを眺めながら佳奈多に声をかけた。佳奈多が見知らぬ男と会話したあの時から、大翔とまともに目が合わなくなった。どこかぼんやりとした大翔は如実に成績が落ちている。先日受けた小テストで、見たことのない点数を取っていた。
全部、自分のせいだ。大翔の心が離れたのも、山田や他の人間から恨みを買っているのも、今このような状況になっていることも。男同士の行為を調べなければ良かった。あんなアプリを入れなければ良かった。
佳奈多は立ち上がり、寝室に向かう。下着とパジャマと、山田からの贈り物を手にとって部屋を出た。
男同士での仕方を調べた理由。何かあったときの最終手段として、佳奈多自身を使うためだ。
佳奈多はトイレで中を洗浄して風呂場に入った。ローションを使って、なんとか蕾を割り開く。痛みが走り、指一本も入らない。佳奈多の性器はくったりと力を無くしている。以前見た動画では行為をしている男性二人共楽しそうだった。こんなに痛いのに、どうしてあんなに楽しそうだったのだろう。あれはフィクションだからだろうか。やっぱり男同士でするなんて、本当は嘘なんだろうか。
『こいつらでけぇから』
『どんなものが入るかな?』
『ガッバガバにされちゃえ』
現実逃避していた佳奈多の頭の中に、山田と取り巻きの声が響く。
『藤野君、…処女なの?』
佳奈多は叫びだしそうになって、歯を食いしばった。おぞましい彼らの手が体を這う。感触が生々しく思い出された。
佳奈多は頭を振って再度ローションを塗りたくった指を後ろにあてがった。
ここを使えるようにして、大翔と行為を行う。体を使って、大翔に守ってもらう。もう佳奈多に興味を失っているように見える大翔が守ってくれるかはわからない。
佳奈多が大翔のものになれば、きっと彼らは佳奈多に手を出せない。処女じゃなくなれば、取り巻きは佳奈多に対して興味をなくすはずだ。
佳奈多は涙が止まらなかった。佳奈多がしようとしていることは、大翔を利用したあまりに酷い行為だ。
でももう、後には戻れなかった。
それから一週間。必死に拡張をして指が入るまでになった。とてもじゃないが、気持ちが良いとは思えない。しかし、佳奈多自身の快楽はどうでも良かった。大翔が気持ち良いと思えればそれでいい。どう誘えばいいのかわからず、まだ、大翔と体を重ねるまでに至っていない。
学校では今まで以上に大翔の傍にいた。山田の視線を感じながら、佳奈多は大翔から離れなかった。
「ノート…」
しかしその日、珍しく大翔が教室に忘れ物をした。移動教室に移動中に気づいた。最近の大翔は佳奈多が心配になる程ぼんやりとしている。大翔と共に引き返そうとして、山田が声を上げた。
「大翔様、先に行ってます。藤野様、いきましょう」
山田はにっこりと佳奈多に笑いかける。しかし目は笑っていない。
体育祭でのあの話は本気らしい。山田は佳奈多を傷つけることを躊躇しない。きっと本当に、あの3人に乱暴される。
佳奈多は必死に考えた。あの3人から、山田から逃れるためにどうしたらいいのか。山田は大翔が好きで、邪魔な佳奈多を排除したくてこんなことをしている。かといって大翔から離れたら、佳奈多はすぐに彼らに蹂躙されるだろう。彼らだけではない。今まで大翔を独占してきた佳奈多に恨みを持つものは多い。大翔から離れることは悪手だ。佳奈多はソファの上で体を丸めて小さくなった。
まさか山田からこんな仕打ちを受けるとは思わなかった。いつも暗い瞳で佳奈多を見つめていた彼は、思っていた以上に佳奈多に対して深い闇を抱えていた。
「かなちゃん。お風呂、先にどうぞ」
大翔はぼんやりとスマホを眺めながら佳奈多に声をかけた。佳奈多が見知らぬ男と会話したあの時から、大翔とまともに目が合わなくなった。どこかぼんやりとした大翔は如実に成績が落ちている。先日受けた小テストで、見たことのない点数を取っていた。
全部、自分のせいだ。大翔の心が離れたのも、山田や他の人間から恨みを買っているのも、今このような状況になっていることも。男同士の行為を調べなければ良かった。あんなアプリを入れなければ良かった。
佳奈多は立ち上がり、寝室に向かう。下着とパジャマと、山田からの贈り物を手にとって部屋を出た。
男同士での仕方を調べた理由。何かあったときの最終手段として、佳奈多自身を使うためだ。
佳奈多はトイレで中を洗浄して風呂場に入った。ローションを使って、なんとか蕾を割り開く。痛みが走り、指一本も入らない。佳奈多の性器はくったりと力を無くしている。以前見た動画では行為をしている男性二人共楽しそうだった。こんなに痛いのに、どうしてあんなに楽しそうだったのだろう。あれはフィクションだからだろうか。やっぱり男同士でするなんて、本当は嘘なんだろうか。
『こいつらでけぇから』
『どんなものが入るかな?』
『ガッバガバにされちゃえ』
現実逃避していた佳奈多の頭の中に、山田と取り巻きの声が響く。
『藤野君、…処女なの?』
佳奈多は叫びだしそうになって、歯を食いしばった。おぞましい彼らの手が体を這う。感触が生々しく思い出された。
佳奈多は頭を振って再度ローションを塗りたくった指を後ろにあてがった。
ここを使えるようにして、大翔と行為を行う。体を使って、大翔に守ってもらう。もう佳奈多に興味を失っているように見える大翔が守ってくれるかはわからない。
佳奈多が大翔のものになれば、きっと彼らは佳奈多に手を出せない。処女じゃなくなれば、取り巻きは佳奈多に対して興味をなくすはずだ。
佳奈多は涙が止まらなかった。佳奈多がしようとしていることは、大翔を利用したあまりに酷い行為だ。
でももう、後には戻れなかった。
それから一週間。必死に拡張をして指が入るまでになった。とてもじゃないが、気持ちが良いとは思えない。しかし、佳奈多自身の快楽はどうでも良かった。大翔が気持ち良いと思えればそれでいい。どう誘えばいいのかわからず、まだ、大翔と体を重ねるまでに至っていない。
学校では今まで以上に大翔の傍にいた。山田の視線を感じながら、佳奈多は大翔から離れなかった。
「ノート…」
しかしその日、珍しく大翔が教室に忘れ物をした。移動教室に移動中に気づいた。最近の大翔は佳奈多が心配になる程ぼんやりとしている。大翔と共に引き返そうとして、山田が声を上げた。
「大翔様、先に行ってます。藤野様、いきましょう」
山田はにっこりと佳奈多に笑いかける。しかし目は笑っていない。
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