黒い春 本編完結 (BL)

Oj

文字の大きさ
上 下
74 / 148

73

しおりを挟む
山田が立ち上がった。大翔を見に行くのだろう。一緒にいないと、きっと山田が大翔に怒られる。山田は怖いが、離れないほうがいい。
佳奈多は立ち上がろうとして、目の前に影ができた。体の大きな男子生徒が佳奈多の目の前に立ちはだかっていた。両隣にも生徒が腰掛けて、気づけば佳奈多は囲まれていた。山田は佳奈多の前に立つ男の隣で、美しい顔で笑っている。
「やーっと、二人でお話しできるね。ねぇ、かぁなちゃん?」
山田は歯を剥き出しにして笑った。佳奈多は山田のそんな表情を初めて見た。美しい顔なのに、ひどく醜い笑顔だった。
不穏な空気が流れている。逃げたいのに大きな男子生徒三人に密着されて逃げられない。
「いつもいつもいつもいつも、松…大翔様は、お前のことばっかり。本当に、本当に、腹が立つ。いい加減お前、空気読んで、さっさとどっか行けよ!」
バシッと音がして、頭がヒリヒリ痛くなった。佳奈多は山田に、頭を叩かれたらしい。思わぬ暴力に、佳奈多の全身に力がこもり、竦んでしまう。
「そんな、怒るなよぉ」
「可愛い顔が台無しだぞぉ?」
周りの男が猫なで声で山田を諌めた。楽しそうな声に、彼らが山田の取り巻きだと気づいた。気づいた時にはもう遅かった。
「さすが松本のお手付きだよな、こいつ。可愛い顔してるよ…あ、ヤマちゃんのほうがもちろん、可愛いよ?」
山田は舌打ちをした。
「うるせぇよ、脳筋ゴリラが…かなちゃん、安心してね。大翔様がいなくても、このお兄さん達が慰めてくれるから。だから淋しくないよね?ちょっとこいつらしつこいけど…この人数だから、お尻、いーっぱい、満足できると思うよぉ?」
山田と取り巻きがいやらしく笑う。意味を察して、佳奈多は頭を振って拒否した。彼らの話す意味はわかる。散々検索して調べたからだ。わかるからこそ、余計に怖かった。体が震えて歯が合わない。ガタガタと音を立てた。
彼らは佳奈多を蹂躙しようとしている。
「なんだよぉ、嫌がるなよぉ藤野君。どんなものが入るかなぁ?」
「どうせ松本君にいっぱいしてもらってんだろ?楽しみだな~」
「どんなプレイが、好きかなぁ。藤野君、一緒に、楽しもうよぉ」
彼らは勘違いしている。佳奈多と大翔が肉体関係にあると思っているらしい。佳奈多は怖くて何度も首を振った。
(違う。そんなこと、したことない!)
声も出せない佳奈多に、一人の男が尻に手を這わせる。割れ目を伝う指先が佳奈多の、まだ大翔にすら晒したことのない場所をぐりっと押した。瞬間、佳奈多は悲鳴を上げた。
「ひっ!い、いやだ!してない!やだ、いやだぁっ!」
「あっ、おい、黙らせろ!」
「ん、んぅ、ん”ーーー!!」
別の男が佳奈多の口を塞ぐ。佳奈多は振りほどこうとして頭と体を振り乱し、悲鳴を上げ続けた。
(怖い、怖い、助けて)
大翔の姿を思い浮かべても、彼は今ここにいない。コンビニのおじさんに襲われたあの夜、大翔の瞳が怒りで満ちたあの時と同じように、佳奈多の頭は真っ白になった。パニックになった佳奈多はもがき暴れたが、頭に痛みを感じて動きを止めた。佳奈多は山田に髪を掴まれていた。
「うるせぇな、黙れよ!してないってなんだよ、嘘つくならもっとマシな嘘つけ、ばぁ~か。あとでオススメのローション、プレゼントしてやるから。しっかりケツ穴ほぐしときな。こいつらでけぇから…くくっ……大翔様を見てくるから。お前ら、コイツ見張っとけ。あんま騒がせんなよ」
山田は佳奈多の頭をガクガクと振り動かして、乱暴に手を離した。ゴッと頭が揺れて、後から痛みがやってきた。山田は佳奈多の頭を拳で殴りつけた。山田は佳奈多を痛めつけることになんの躊躇もない。それは今佳奈多を拘束している彼らも、きっと同じだ。
大人しくしないと、もっとひどい目にあう。
佳奈多はぐっと声を殺した。静かになった佳奈多に、口を塞いでいた男が手を外した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

Oj
BL
オメガバースBLです。 受けが妊娠しますので、ご注意下さい。 コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。 ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。 アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。 ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。 菊島 華 (きくしま はな)   受 両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。 森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄  森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。 森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟 森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。 健司と裕司は二卵性の双子です。 オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。 男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。 アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。 その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。 この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。 また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。 独自解釈している設定があります。 第二部にて息子達とその恋人達です。 長男 咲也 (さくや) 次男 伊吹 (いぶき) 三男 開斗 (かいと) 咲也の恋人 朝陽 (あさひ) 伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう) 開斗の恋人 アイ・ミイ 本編完結しています。 今後は短編を更新する予定です。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

いつか愛してると言える日まで

なの
BL
幼馴染が大好きだった。 いつか愛してると言えると告白できると思ってた… でも彼には大好きな人がいた。 だから僕は君たち2人の幸せを祈ってる。いつまでも… 親に捨てられ施設で育った純平、大好きな彼には思い人がいた。 そんな中、問題が起こり… 2人の両片想い…純平は愛してるとちゃんと言葉で言える日は来るのか? オメガバースの世界観に独自の設定を加えています。 予告なしに暴力表現等があります。R18には※をつけます。ご自身の判断でお読み頂きたいと思います。 お読みいただきありがとうございました。 本編は完結いたしましたが、番外編に突入いたします。

とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~

無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。 自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

【運命】に捨てられ捨てたΩ

諦念
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

処理中です...