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翌日、いつもは振り払う愛くるしい男子生徒を大翔は受け入れた。いつも通り手を繋いで歩いてくれる大翔に、許されたのかと佳奈多は思った。しかし、愛くるしい男子生徒を受け入れるということは、きっともう佳奈多はいらないんだろう。これからどうしたらいいのか。佳奈多は怖くなった。
佳奈多とは大翔を挟んで反対隣を歩く男子生徒は佳奈多を見て笑った。勝ち誇った彼の顔に、ここにいるべきではないのだと佳奈多は悟った。二人から離れようと大翔と繋いだ手を緩める。しかし強く握り返されて、その場から離れることができなかった。
大翔がどうしたいのか意図がわからず、佳奈多は手を引かれるまま二人のあとをついて教室へ向かった。
それから何人かの姫と呼ばれる男子生徒が大翔の隣にいた。佳奈多と大翔と、3人で過ごすことが増えた。大翔は姫を、優しくするでもなく傍においた。大翔がなにをしたいのか、佳奈多にはわからない。それは姫達も同じだったようだ。少し怖い姫達はすぐに傍からいなくなった。佳奈多に親しくしてくれる姫も、時間が経つと離れていってしまう。大翔が追い払ったり別の姫を置いたりしていた。とても居心地が悪かった。佳奈多も大翔から離れようとしたが、それも大翔は許さなかった。
「かなちゃん。一人でどこ行くの?」
トイレに行くのも移動教室も常に大翔と姫と一緒だった。学校で見放されないだけ、家を追い出されないだけましなんだと佳奈多は自分に言い聞かせた。学校では姫と過ごす大翔の邪魔にならないように、家では佳奈多をないものとして扱う大翔に付かず離れず、気配を殺して過ごしていた。
それからすぐに、大翔は決まった姫を傍に置いた。山田という名の彼は美しく、いつも静かに大翔の隣りにいた。佳奈多に意地悪をするわけではなく、かといって優しくしてくれるわけでもない。基本的に、佳奈多と山田はお互い触れ合うことはなかった。しかし時々佳奈多に見せる暗い瞳が怖かった。
打って変わって、大翔のことはとても熱の籠もった瞳で見つめる。今までの姫達の中でも特に大翔に心酔しているように見えた。山田はいつも大翔の傍にいた。しかし熱心に大翔を見ているからか、大翔が離れてほしいときを見極めてそっと傍から離れていく。甲斐甲斐しく大翔の世話をするものの、引く時はきちんと引く。大翔は彼に信頼を寄せているように思えた。他の姫達といる時と、表情と雰囲気が違う。
今までと変わらず、佳奈多は息を殺して過ごした。そんな生活が大きく変わったのは、あの体育祭からだった。
その年の体育祭で、大翔はリレーの選手に選ばれていた。普段なら参加しないが、今年は学長交代があるため参加してほしいと依頼があったらしい。
「かなちゃん。アイツがいるから、大丈夫だよね」
アイツ、とは、山田のことだろう。大翔がいない間、二人きりにさせられる。大翔は佳奈多の顔を見ずに言う。佳奈多に話をすることもなく決めてしまった。まして、大翔以外の人間と佳奈多を二人きりにしておくなんて、今までなら絶対になかった。佳奈多は黙って頷いた。
今までずっと大翔と一緒だった。大翔から離れたら、学校でどう過ごしたら良いのかわからない。全て自分の撒いた種で、自業自得だ。
山田は佳奈多を好いていない。当然だろう。佳奈多は大翔の傍にいる、異物でしかない。大翔が不在の時間、山田と二人でいなければならない。
佳奈多は唇を噛み締めて、恐怖に耐えることにした。
体育祭で、大翔が競技に出ている時。運動場からは少し離れた校舎への入口の階段に佳奈多達は座っていた。競技は見えないが日陰になっていて居心地が良い。とはいえ山田とともにいる空間は非常に居心地が悪い。何をされたわけでもないのに、佳奈多は山田が怖かった。時折見せるじっとりとした暗い瞳が恐ろしかった。
佳奈多とは大翔を挟んで反対隣を歩く男子生徒は佳奈多を見て笑った。勝ち誇った彼の顔に、ここにいるべきではないのだと佳奈多は悟った。二人から離れようと大翔と繋いだ手を緩める。しかし強く握り返されて、その場から離れることができなかった。
大翔がどうしたいのか意図がわからず、佳奈多は手を引かれるまま二人のあとをついて教室へ向かった。
それから何人かの姫と呼ばれる男子生徒が大翔の隣にいた。佳奈多と大翔と、3人で過ごすことが増えた。大翔は姫を、優しくするでもなく傍においた。大翔がなにをしたいのか、佳奈多にはわからない。それは姫達も同じだったようだ。少し怖い姫達はすぐに傍からいなくなった。佳奈多に親しくしてくれる姫も、時間が経つと離れていってしまう。大翔が追い払ったり別の姫を置いたりしていた。とても居心地が悪かった。佳奈多も大翔から離れようとしたが、それも大翔は許さなかった。
「かなちゃん。一人でどこ行くの?」
トイレに行くのも移動教室も常に大翔と姫と一緒だった。学校で見放されないだけ、家を追い出されないだけましなんだと佳奈多は自分に言い聞かせた。学校では姫と過ごす大翔の邪魔にならないように、家では佳奈多をないものとして扱う大翔に付かず離れず、気配を殺して過ごしていた。
それからすぐに、大翔は決まった姫を傍に置いた。山田という名の彼は美しく、いつも静かに大翔の隣りにいた。佳奈多に意地悪をするわけではなく、かといって優しくしてくれるわけでもない。基本的に、佳奈多と山田はお互い触れ合うことはなかった。しかし時々佳奈多に見せる暗い瞳が怖かった。
打って変わって、大翔のことはとても熱の籠もった瞳で見つめる。今までの姫達の中でも特に大翔に心酔しているように見えた。山田はいつも大翔の傍にいた。しかし熱心に大翔を見ているからか、大翔が離れてほしいときを見極めてそっと傍から離れていく。甲斐甲斐しく大翔の世話をするものの、引く時はきちんと引く。大翔は彼に信頼を寄せているように思えた。他の姫達といる時と、表情と雰囲気が違う。
今までと変わらず、佳奈多は息を殺して過ごした。そんな生活が大きく変わったのは、あの体育祭からだった。
その年の体育祭で、大翔はリレーの選手に選ばれていた。普段なら参加しないが、今年は学長交代があるため参加してほしいと依頼があったらしい。
「かなちゃん。アイツがいるから、大丈夫だよね」
アイツ、とは、山田のことだろう。大翔がいない間、二人きりにさせられる。大翔は佳奈多の顔を見ずに言う。佳奈多に話をすることもなく決めてしまった。まして、大翔以外の人間と佳奈多を二人きりにしておくなんて、今までなら絶対になかった。佳奈多は黙って頷いた。
今までずっと大翔と一緒だった。大翔から離れたら、学校でどう過ごしたら良いのかわからない。全て自分の撒いた種で、自業自得だ。
山田は佳奈多を好いていない。当然だろう。佳奈多は大翔の傍にいる、異物でしかない。大翔が不在の時間、山田と二人でいなければならない。
佳奈多は唇を噛み締めて、恐怖に耐えることにした。
体育祭で、大翔が競技に出ている時。運動場からは少し離れた校舎への入口の階段に佳奈多達は座っていた。競技は見えないが日陰になっていて居心地が良い。とはいえ山田とともにいる空間は非常に居心地が悪い。何をされたわけでもないのに、佳奈多は山田が怖かった。時折見せるじっとりとした暗い瞳が恐ろしかった。
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