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甘えてくれる佳奈多に問う。
「かなちゃん…俺達、付き合ってるってことで、いいんだよね?」
「違う、の?」
佳奈多は俯いて、問うてきた。たまらなくなって抱きしめたら、佳奈多は胸に顔を頭を擦りつけてくれた。愛くるしい仕草に大翔は佳奈多の髪を梳いた。
佳奈多が好きだと言ってくれた。抱かせてくれると言っていた。今は嘘でもいい。佳奈多が心から愛してくれるよう、大翔はなんでもしよう。もう二度と、別の男を求めないよう。佳奈多にとって不足のない人間になれるように。
見知らぬ男と連絡を取っていた姿を見る前までの、あの熱い気持ちが、大翔の中で強く燃え上がった。
「お前はもう、いい。離れろ」
真横に立つ山田を振り払う。佳奈多と付き合うことになってからやってきた月曜日。最寄り駅から大翔と佳奈多を見つけて山田は駆け寄ってきた。
佳奈多との約束通り、大翔は山田を切ることにした。山田は目を見開いて大翔を見た。
「大翔、様?」
大翔は佳奈多に腕を引かれた。佳奈多が見ている手前、あまり無碍にするのも良くないだろう。大翔は思い直して立ち止まり、山田に笑顔を向ける。
「今まで、ありがとう。もう傍にいなくていい。さようなら。行こう、かなちゃん」
大翔は佳奈多を促して歩きだす。山田は慌てて大翔にすがりついた。
「待っ…大翔様!どうして、そんな…なにか、私に何か、落ち度が、ひろ」
「ないよ。今までありがとう」
「大翔様、お願いです、お話を…大翔様ぁあ!」
大翔は貼り付けた笑顔のまま、再度礼を告げる。これでもう、山田との関係は終わりだ。しかし山田は大翔の隣にはりついて、まだ騒いでいた。大翔は腕にはりつく山田を無視して歩く。隣の佳奈多は俯いて、怯えているように見えた。
「かなちゃん、大丈夫?どうしたの?」
「う、…あぅ…、」
佳奈多は何度も口の中で声を出していたが、最後は首を横に振った。
敵を増やしてしまうかもしれないという懸念はあったが、大翔は構わなかった。もう姫の存在はいらない。大翔が矢面に立てばいい。
佳奈多のことは大翔がずっと張り付いて見守ってあげれば良い。そうすればきっと、本当に大翔を好きになってくれる。
その日は山田を無視しつづけた。山田は何度も大翔にすがりついて騒いでいた。山田抜きでの、佳奈多と二人の時間を楽しみたかったのに。
佳奈多が好きだと言ってくれてからの連休はとても幸せだった。特に予定もないので自宅で二人、勉強をしたり佳奈多の好きなゲームをしたりして過ごす。佳奈多はずっと大翔から離れず、ずっと一緒にいてくれた。佳奈多の方からぴったりとくっついてくれていて、本当に可愛かった。例え嘘でも構わない。今もずっと、くっついていたい。早く二人きりになりたい。
それなのに、行く先々に現れては騒ぐ山田に邪魔された。大翔は山田を、引き際を弁えている人間だと思っていた。まさかここまでしつこく粘着してくるとは思わなかった。無視し続ける大翔に代わり、佳奈多が不安気に山田を気にしている。それも大翔には気に入らない。
どうやって打ちのめしてやるかと考えていたら放課後の教室に、山田は取り巻きを三人引き連れて大翔と佳奈多の前にやってきた。山田は泣いていた。まだ残った生徒は興味津々といった表情で見ていたが、取り巻きが追い出した。教室の中には佳奈多と大翔と、山田と取り巻きしかいなくなった。
「大翔様、お話を…納得できません。今まで、あんなに、尽くしてきたのに…好きなんです、大翔様、無視されたら、苦しいです………まさか、お前が…」
大翔は無視していたが、言葉を切った山田が気になった。横目に見ると山田は佳奈多を睨みつけていた。佳奈多に向けられた悪意に、大翔は大股で歩み寄って山田の髪を掴む。
「っひ!」
「なんだ、その顔は。言ったよな?彼のことは、俺以上に、丁重に扱えって」
「かなちゃん…俺達、付き合ってるってことで、いいんだよね?」
「違う、の?」
佳奈多は俯いて、問うてきた。たまらなくなって抱きしめたら、佳奈多は胸に顔を頭を擦りつけてくれた。愛くるしい仕草に大翔は佳奈多の髪を梳いた。
佳奈多が好きだと言ってくれた。抱かせてくれると言っていた。今は嘘でもいい。佳奈多が心から愛してくれるよう、大翔はなんでもしよう。もう二度と、別の男を求めないよう。佳奈多にとって不足のない人間になれるように。
見知らぬ男と連絡を取っていた姿を見る前までの、あの熱い気持ちが、大翔の中で強く燃え上がった。
「お前はもう、いい。離れろ」
真横に立つ山田を振り払う。佳奈多と付き合うことになってからやってきた月曜日。最寄り駅から大翔と佳奈多を見つけて山田は駆け寄ってきた。
佳奈多との約束通り、大翔は山田を切ることにした。山田は目を見開いて大翔を見た。
「大翔、様?」
大翔は佳奈多に腕を引かれた。佳奈多が見ている手前、あまり無碍にするのも良くないだろう。大翔は思い直して立ち止まり、山田に笑顔を向ける。
「今まで、ありがとう。もう傍にいなくていい。さようなら。行こう、かなちゃん」
大翔は佳奈多を促して歩きだす。山田は慌てて大翔にすがりついた。
「待っ…大翔様!どうして、そんな…なにか、私に何か、落ち度が、ひろ」
「ないよ。今までありがとう」
「大翔様、お願いです、お話を…大翔様ぁあ!」
大翔は貼り付けた笑顔のまま、再度礼を告げる。これでもう、山田との関係は終わりだ。しかし山田は大翔の隣にはりついて、まだ騒いでいた。大翔は腕にはりつく山田を無視して歩く。隣の佳奈多は俯いて、怯えているように見えた。
「かなちゃん、大丈夫?どうしたの?」
「う、…あぅ…、」
佳奈多は何度も口の中で声を出していたが、最後は首を横に振った。
敵を増やしてしまうかもしれないという懸念はあったが、大翔は構わなかった。もう姫の存在はいらない。大翔が矢面に立てばいい。
佳奈多のことは大翔がずっと張り付いて見守ってあげれば良い。そうすればきっと、本当に大翔を好きになってくれる。
その日は山田を無視しつづけた。山田は何度も大翔にすがりついて騒いでいた。山田抜きでの、佳奈多と二人の時間を楽しみたかったのに。
佳奈多が好きだと言ってくれてからの連休はとても幸せだった。特に予定もないので自宅で二人、勉強をしたり佳奈多の好きなゲームをしたりして過ごす。佳奈多はずっと大翔から離れず、ずっと一緒にいてくれた。佳奈多の方からぴったりとくっついてくれていて、本当に可愛かった。例え嘘でも構わない。今もずっと、くっついていたい。早く二人きりになりたい。
それなのに、行く先々に現れては騒ぐ山田に邪魔された。大翔は山田を、引き際を弁えている人間だと思っていた。まさかここまでしつこく粘着してくるとは思わなかった。無視し続ける大翔に代わり、佳奈多が不安気に山田を気にしている。それも大翔には気に入らない。
どうやって打ちのめしてやるかと考えていたら放課後の教室に、山田は取り巻きを三人引き連れて大翔と佳奈多の前にやってきた。山田は泣いていた。まだ残った生徒は興味津々といった表情で見ていたが、取り巻きが追い出した。教室の中には佳奈多と大翔と、山田と取り巻きしかいなくなった。
「大翔様、お話を…納得できません。今まで、あんなに、尽くしてきたのに…好きなんです、大翔様、無視されたら、苦しいです………まさか、お前が…」
大翔は無視していたが、言葉を切った山田が気になった。横目に見ると山田は佳奈多を睨みつけていた。佳奈多に向けられた悪意に、大翔は大股で歩み寄って山田の髪を掴む。
「っひ!」
「なんだ、その顔は。言ったよな?彼のことは、俺以上に、丁重に扱えって」
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