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頬や唇に触れてむずがる姿はあまりの可愛さに、動画で撮影したほどだった。いつまでも見ていられた。
でももう、今日で佳奈多は帰ってしまう。起きて動いている佳奈多が見たい。8時になって、大翔は佳奈多を起こす。勉強をして昼食をとって、あっという間佳奈多の帰る時間になってしまった。佳奈多はパジャマや勉強道具を鞄に詰め込んで身支度している。
もう少しいてほしい。いっそ、今日も泊まっていってくれたらいいのに。
佳奈多は首を横に振った。佳奈多は何度も窓の外を見ていた。
エントランスでも引き止める大翔を、佳奈多は困った顔で空をみた。夕暮れの空はもうすぐで暗くなる。怯えた表情をみせる佳奈多に気づく。怖がりな佳奈多は、薄暗い中を一人で帰るのが怖いのではないだろうか。家までついて行こうとしたが、これもまた佳奈多に拒否されてしまった。
「だめだよ、大翔君きたら、お母さんに、怒られちゃうから…お、お願い、ひろくん、」
何度も空を見上げる佳奈多はやんわりと、佳奈多の腕を握る大翔の手を押し返そうとしていた。
暗くなる前に早く帰りたい。
そう言われている気がして、大翔はやっと諦めて腕を離した。佳奈多は何度も振り返って手を振り早足で帰っていった。大翔は佳奈多の視界に入らないように注意しながら後を追った。
大翔のマンションから佳奈多の家までは大した距離じゃない。途中にコンビニがあり、この時間なら人通りも少なくない。無事に帰れるはずだ。佳奈多は何度も空を見上げている。
しばらく歩いて、佳奈多は道路を渡って反対側の道を歩いていった。なぜわざわざ道路を渡ったのか。佳奈多の家へはこの道を真っすぐ歩けば帰れる。真っすぐ行ったほうが、道路を横断する手間がない。自宅ではない別の場所に行こうとしているのだろうか。大翔は声をかけたい衝動を抑えて佳奈多を見守った。歩いた先の横断歩道でまた道路を渡って、元の道に戻ってきた。
大翔は、振り返り、佳奈多がわざわざ道路を渡った理由に気づく。
佳奈多が迂回した道の上にはコンビニがある。このコンビニは佳奈多がオジサンから被害を受けたコンビニじゃない。場所も、会社自体が違う。しかし佳奈多は恐れを抱いている。きっとあのオジサンを思い出して怖いんだろう。空を気にしているのも、暗くなると怖いのかもしれない。あの日を思い出すのではないだろうか。
佳奈多が自宅に到着したのを見届けて、大翔も自宅へ戻った。空にはまだ夕焼けが広がっている。
佳奈多の中であの事件とオジサンは深い傷になっている。どこにでもあるコンビニに近寄れなくなってしまうほど。
やっぱり、自分自身の手であのオジサンをどうにかすれば良かった。
大翔は暗い瞳で佳奈多を想う。
この日、佳奈多をもっと強く引き止めれば良かったと、大翔は後に深く後悔することになる。
それからしばらく、佳奈多がいてくれた日を思い出しては心穏やかに過ごせた。学校での周りの視線も一人きりの家も気にならない。またゲームがしたいという佳奈多に嬉しくなった。大翔は幸せな気持ちで満たされていた。
しかし浮かれる大翔に対して、佳奈多はどことなく暗い表情を浮かべていた。訪ねてもなんでもないという。学校でまた誰かに何かされたのかと思ったが、そうでもなさそうだ。まだ両親の帰りが遅いのだろうか。
しかし夜のランニングや空手の道場からの帰りに佳奈多の家を見ると、一階に明かりがついていた。両親かそのどちらかが家にいるのだろう。親がいるなら安心だ。佳奈多の暗い表情の原因がわからない。
間もなくその理由がわかった。
でももう、今日で佳奈多は帰ってしまう。起きて動いている佳奈多が見たい。8時になって、大翔は佳奈多を起こす。勉強をして昼食をとって、あっという間佳奈多の帰る時間になってしまった。佳奈多はパジャマや勉強道具を鞄に詰め込んで身支度している。
もう少しいてほしい。いっそ、今日も泊まっていってくれたらいいのに。
佳奈多は首を横に振った。佳奈多は何度も窓の外を見ていた。
エントランスでも引き止める大翔を、佳奈多は困った顔で空をみた。夕暮れの空はもうすぐで暗くなる。怯えた表情をみせる佳奈多に気づく。怖がりな佳奈多は、薄暗い中を一人で帰るのが怖いのではないだろうか。家までついて行こうとしたが、これもまた佳奈多に拒否されてしまった。
「だめだよ、大翔君きたら、お母さんに、怒られちゃうから…お、お願い、ひろくん、」
何度も空を見上げる佳奈多はやんわりと、佳奈多の腕を握る大翔の手を押し返そうとしていた。
暗くなる前に早く帰りたい。
そう言われている気がして、大翔はやっと諦めて腕を離した。佳奈多は何度も振り返って手を振り早足で帰っていった。大翔は佳奈多の視界に入らないように注意しながら後を追った。
大翔のマンションから佳奈多の家までは大した距離じゃない。途中にコンビニがあり、この時間なら人通りも少なくない。無事に帰れるはずだ。佳奈多は何度も空を見上げている。
しばらく歩いて、佳奈多は道路を渡って反対側の道を歩いていった。なぜわざわざ道路を渡ったのか。佳奈多の家へはこの道を真っすぐ歩けば帰れる。真っすぐ行ったほうが、道路を横断する手間がない。自宅ではない別の場所に行こうとしているのだろうか。大翔は声をかけたい衝動を抑えて佳奈多を見守った。歩いた先の横断歩道でまた道路を渡って、元の道に戻ってきた。
大翔は、振り返り、佳奈多がわざわざ道路を渡った理由に気づく。
佳奈多が迂回した道の上にはコンビニがある。このコンビニは佳奈多がオジサンから被害を受けたコンビニじゃない。場所も、会社自体が違う。しかし佳奈多は恐れを抱いている。きっとあのオジサンを思い出して怖いんだろう。空を気にしているのも、暗くなると怖いのかもしれない。あの日を思い出すのではないだろうか。
佳奈多が自宅に到着したのを見届けて、大翔も自宅へ戻った。空にはまだ夕焼けが広がっている。
佳奈多の中であの事件とオジサンは深い傷になっている。どこにでもあるコンビニに近寄れなくなってしまうほど。
やっぱり、自分自身の手であのオジサンをどうにかすれば良かった。
大翔は暗い瞳で佳奈多を想う。
この日、佳奈多をもっと強く引き止めれば良かったと、大翔は後に深く後悔することになる。
それからしばらく、佳奈多がいてくれた日を思い出しては心穏やかに過ごせた。学校での周りの視線も一人きりの家も気にならない。またゲームがしたいという佳奈多に嬉しくなった。大翔は幸せな気持ちで満たされていた。
しかし浮かれる大翔に対して、佳奈多はどことなく暗い表情を浮かべていた。訪ねてもなんでもないという。学校でまた誰かに何かされたのかと思ったが、そうでもなさそうだ。まだ両親の帰りが遅いのだろうか。
しかし夜のランニングや空手の道場からの帰りに佳奈多の家を見ると、一階に明かりがついていた。両親かそのどちらかが家にいるのだろう。親がいるなら安心だ。佳奈多の暗い表情の原因がわからない。
間もなくその理由がわかった。
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