黒い春 本編完結 (BL)

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※暴力、流血するシーンがあります。苦手な方はご注意下さい。





リーダー格の男は大翔と少女の兄を指さした。オジサンはピンと来ていないようだ。大翔はともかく、少女の兄のことも知らなかったようだ。
少女の写真にあんなタイトルをつけていた。
彼女の家族構成を調べて兄の存在も顔も認識しているものだと思っていた。このオジサンは詰めが甘いようだ。だからこそ手当たり次第狙いをつけて少年少女に手を出していたのだろう。
その結果がこれだ。
少女の兄が大翔の前に出た。
「てめぇ…よくも、うちの妹、手ぇ出してくれたな」
「い、妹?なんのことだ、人違いじゃ」
「てめぇがな、妹やってる動画見てんだよ。その声も、顔も、動画の男に間違いねぇわ」
「動画!?お、おい、やめ、んぐぉっ!」
少女の兄はオジサンの少ない髪を掴んで引き上げ、右の拳を顔面に叩き込んだ。オジサンが鼻血を拭き上げる。オジサンは叫んで少女の兄に懇願した。
「まっへ、まっへくらはい、それ、合意です、合意で、やって、」
「あいつな、びびると声が出ねぇんだよ。声出せねぇで、びびりきってたあいつが、あれが合意だ?ふざけんじゃねぇぞ!」
少女の兄は連続して拳を浴びせた。オジサンはカエルの鳴き声ような声を上げてされるがままになっている。
佳奈多も同じだった。普段は怖いことがあると固まって動けなくなってしまう。なのにあの夜、壊れたように泣き叫んでいた。カラオケで泣く少女の姿と佳奈多が重なる。佳奈多も少女も、オジサンに深く傷つけられた。
「おいおい、まだ殺すな。聞かなきゃなんねぇことあっから。ほれ、お前はおしまいだ。終~了~」
リーダー格の男が言いながら顎で示すと、仲間の男が少女の兄をオジサンから引き離した。オジサンは涙を流して震えている。
「坊っちゃん、お前はちょっと待ってろ。オッサン、ちょっと聞いていいかな。お前さ、もう一人仲間がいるだろ。そいつの情報、くんねぇかな。どこにある?」
「うっ、はぅ、ぅっ、たしゅけて、たしゅけて下さ」
「そいつの名前と連絡先ぃ~。早く言わねぇと殺すぞぉ~?」
「す、スマホに!連絡先、名前、入ってましゅ!な、名前は」
オジサンは名前を叫んだ。リーダー格の男はスマホを取り出してオジサンの指に押し付け、ロックを解除する。オジサンのスマホで電話をかけて、リーダー格の男が話し始めた。 
「もしもーし?俺、俺~。間違いねぇわ、そいつで。電話代われ。………はい。こっちは滞りなくやっときますんで。そっちは後程…じゃっ」
リーダー格の男は通話を終えると、オジサンのスマホを操作して自身のポケットにしまった。通話相手は恐らくリーダー格の男の仲間だ。既にオジサンの仲間はこの男達の手に落ちている。たぶん、少年を相手にしていた男だ。そして恐らく彼らの本命はオジサンの仲間の方だ。オジサンの仲間は、既に依頼主ところにいる。
リーダー格の男は大翔を見た。
「坊っちゃん。お前の番だ。好きにしていいけどトドメは刺すなよ?それは俺等の仕事だ。痕跡の心配もいらねぇから。こっちで綺麗にしといてやる」
大翔はオジサンに向き合った。オジサンは真っ青になって鼻血を垂れ流している。
コイツが佳奈多をあそこまで怯えさせた元凶だ。コイツが佳奈多の体を見た。別の男と弄ぶために脅した。コイツも佳奈多をどうにかするつもりだった。殺しちゃいけない。佳奈多に性的興奮を覚えただろうコイツに死以上の苦痛を味わわせなければならない。殺してやりたい。殺しちゃいけない。どうしたら、より激しい苦痛を与えられるだろう。
大翔はオジサンに歩み寄り、座り込んでいるオジサンの股間を踏みつける。
「ここを潰したら、人は死ぬか?」
「…最高だねぇ、坊っちゃん。死なねぇよ。おい、手伝ってやれ」
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