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「…ひひ…ちょっと、怖かった…全然、気づかないし…」
大翔はしゃがみ込み腹を抱えて笑った。いつから見ていたのだろう。突然目の前に人がいた佳奈多のほうが怖かった。楽しそうな大翔に、佳奈多は少し口を尖らせる。
「ひどい、ぼく、びっくり、したのに」
「ごめん、ごめんね。驚かせるつもりは、なかったんだけど…かなちゃん、布団の中入ってれば良かったのに。体も冷えてるよ」
「僕、あの、ソファで寝るから、それで、起き」
「駄目だよ。あっち、エアコン切ったから寒いし。ほら、布団入って」
笑っていた大翔は立ち上がり、タブレットを机の上に置いて佳奈多を布団へ横たわらせた。佳奈多に触れる大翔の手も冷えている。本当に、いつから見ていたのだろう。そのまま大翔も横になり、佳奈多は大翔に抱きしめられた。身動きが取れず、佳奈多は固まる。部屋の明かりが消えた。
「おやすみ、かなちゃん」
大翔の手は佳奈多の背中や肩を擦っている。くすぐったさに身を捩っても、大翔は開放してくれなかった。徐々に擦られている部分と布団の中に熱がこもっていく。大翔の手が佳奈多の腰や太ももを擦る頃には、人が二人入っている布団はあっという間に温かくなった。
大翔の胸に置いた佳奈多の手を大翔がとった。温かい手に包まれて、佳奈多の指先にも熱が灯る。大翔が佳奈多の足に自身の足を絡める。足先も、二人の体温が混じり合って温もっていた。
「…このまま、朝が来なかったらいいのに」
胸に抱きとめられた佳奈多は、大翔の表情を伺うことはできない。温めてくれる大翔のおかげで、佳奈多は寒さを感じなかった。体が温まってくると、佳奈多に急激に眠気が襲ってきた。普段ならとっくに眠っている時間だ。佳奈多は大翔に抱きしめられたまま、ゆっくり眠りの中に落ちていった。
背中に気配を感じて、佳奈多は目を覚ました。見慣れぬ景色は大翔の部屋の壁だ。寝返りを打とうとして佳奈多は思いとどまった。背後の大翔から荒い呼吸と、小刻みな振動を感じる。
佳奈多が目覚めたことに気づいているのだろうか。大翔の動きも呼吸も早まっていく。何をしているのか、性に疎い佳奈多でもわかる。大翔は自慰をしている。
「かなちゃ、ん…かな、ちゃん……っ、」
名前を呼ばれて佳奈多は息を止めた。大翔の呼吸は大きくなり、動きが止まった。少し間を開けて、大翔が動いた。紙の擦れる音がして、佳奈多の背後で気配が揺れる。暫くして大翔は大きなため息をついた。
「かなちゃん…」
背中に何かが当たる。ぐりっと押し付けられたのは大翔の頭のようだ。おそらく額を佳奈多に擦り付けている。佳奈多は動かないように、起きていると知られないようにぎゅっと体を固めた。佳奈多はあまりしないが、同性なので自慰をする意味も理由もわかる。もしかしたら目覚めて固くなっていたのかもしれない。発散するためだけの行為なのではないだろうか。
しかし、大翔は佳奈多の名前を繰り返し呼んでいた。
大翔の手が、佳奈多の体を肩からなぞっていく。佳奈多はぐっと唇を噛み締めた。これは夢だ。佳奈多はきっと夢を見ている。大翔が佳奈多の名前を呼んでいた理由を認めたくなかった。認めてしまったら、きっと大翔とは友達でいられなくなってしまう。佳奈多は目を閉じて再び眠ってしまおうと思った。恐怖で心臓が早まっている。佳奈多は大翔が怖かった。
「かなちゃん」
肩を揺さぶられて、佳奈多は体を大きく震わせた。
時計を見ると8時をとっくに過ぎている。大翔はパジャマから部屋着に着替えていた。いつの間にか眠っていたらしい。
大翔はしゃがみ込み腹を抱えて笑った。いつから見ていたのだろう。突然目の前に人がいた佳奈多のほうが怖かった。楽しそうな大翔に、佳奈多は少し口を尖らせる。
「ひどい、ぼく、びっくり、したのに」
「ごめん、ごめんね。驚かせるつもりは、なかったんだけど…かなちゃん、布団の中入ってれば良かったのに。体も冷えてるよ」
「僕、あの、ソファで寝るから、それで、起き」
「駄目だよ。あっち、エアコン切ったから寒いし。ほら、布団入って」
笑っていた大翔は立ち上がり、タブレットを机の上に置いて佳奈多を布団へ横たわらせた。佳奈多に触れる大翔の手も冷えている。本当に、いつから見ていたのだろう。そのまま大翔も横になり、佳奈多は大翔に抱きしめられた。身動きが取れず、佳奈多は固まる。部屋の明かりが消えた。
「おやすみ、かなちゃん」
大翔の手は佳奈多の背中や肩を擦っている。くすぐったさに身を捩っても、大翔は開放してくれなかった。徐々に擦られている部分と布団の中に熱がこもっていく。大翔の手が佳奈多の腰や太ももを擦る頃には、人が二人入っている布団はあっという間に温かくなった。
大翔の胸に置いた佳奈多の手を大翔がとった。温かい手に包まれて、佳奈多の指先にも熱が灯る。大翔が佳奈多の足に自身の足を絡める。足先も、二人の体温が混じり合って温もっていた。
「…このまま、朝が来なかったらいいのに」
胸に抱きとめられた佳奈多は、大翔の表情を伺うことはできない。温めてくれる大翔のおかげで、佳奈多は寒さを感じなかった。体が温まってくると、佳奈多に急激に眠気が襲ってきた。普段ならとっくに眠っている時間だ。佳奈多は大翔に抱きしめられたまま、ゆっくり眠りの中に落ちていった。
背中に気配を感じて、佳奈多は目を覚ました。見慣れぬ景色は大翔の部屋の壁だ。寝返りを打とうとして佳奈多は思いとどまった。背後の大翔から荒い呼吸と、小刻みな振動を感じる。
佳奈多が目覚めたことに気づいているのだろうか。大翔の動きも呼吸も早まっていく。何をしているのか、性に疎い佳奈多でもわかる。大翔は自慰をしている。
「かなちゃ、ん…かな、ちゃん……っ、」
名前を呼ばれて佳奈多は息を止めた。大翔の呼吸は大きくなり、動きが止まった。少し間を開けて、大翔が動いた。紙の擦れる音がして、佳奈多の背後で気配が揺れる。暫くして大翔は大きなため息をついた。
「かなちゃん…」
背中に何かが当たる。ぐりっと押し付けられたのは大翔の頭のようだ。おそらく額を佳奈多に擦り付けている。佳奈多は動かないように、起きていると知られないようにぎゅっと体を固めた。佳奈多はあまりしないが、同性なので自慰をする意味も理由もわかる。もしかしたら目覚めて固くなっていたのかもしれない。発散するためだけの行為なのではないだろうか。
しかし、大翔は佳奈多の名前を繰り返し呼んでいた。
大翔の手が、佳奈多の体を肩からなぞっていく。佳奈多はぐっと唇を噛み締めた。これは夢だ。佳奈多はきっと夢を見ている。大翔が佳奈多の名前を呼んでいた理由を認めたくなかった。認めてしまったら、きっと大翔とは友達でいられなくなってしまう。佳奈多は目を閉じて再び眠ってしまおうと思った。恐怖で心臓が早まっている。佳奈多は大翔が怖かった。
「かなちゃん」
肩を揺さぶられて、佳奈多は体を大きく震わせた。
時計を見ると8時をとっくに過ぎている。大翔はパジャマから部屋着に着替えていた。いつの間にか眠っていたらしい。
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