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大翔にコントローラーを渡すと、大翔は佳奈多が何度も失敗した場所をあっさり乗り越えて先に進んでしまった。佳奈多は素直に感心してしまう。
「すっ、すごいね!できちゃった…すごい!」
思わず両手を叩いて拍手を送ると、大翔は照れくさそうに笑った。
夕食を終えて、佳奈多は先に風呂に入った。家政婦さんの夕食はとても美味しかった。毎日あんなご飯が食べられる大翔が少し羨ましい。
しかし、人気のない大翔の家は怖かった。一軒家の佳奈多の家とは違い、外からの音が聞こえない。トイレに行くにも当然廊下に人気はなく、まるで世界に佳奈多と大翔しかいなくなってしまったかのようだった。
広い浴室で体を温めつつ、怖くなった佳奈多は早々に風呂を出た。大翔の家の浴室は佳奈多の家のものと比べると倍はある。広い空間に一人きりでいることに、佳奈多は怖くなってしまった。長い廊下を抜けて、急いで大翔のいるリビングに向かった。
「早いね、かなちゃん。ちゃんと温まった?」
「おっ、お風呂、怖くて…大きいから、す、すごく」
「そっか、怖くなっちゃったか…一緒に入る?今から」
ソファに座る大翔に駆け寄ると、大翔は佳奈多の頭を拭きながら問う。
今日一日、幼稚園児の時のような時間が過ごせて佳奈多はとても楽しかった。自宅にいると、帰ってこない母に不安になり、父がいると暴力が始まらないか不安で落ち着かない。大翔の家で、佳奈多自身もゆったりとした時間を過ごせた。
しかし、佳奈多を見つめる大翔の視線が時々怖かった。今日は無邪気な笑顔を沢山見せてくれた。その中で、あの熱のこもった視線も感じていた。
佳奈多は首を横に振った。やっぱり大翔とお風呂に一緒に入るのは怖い。何がどう怖いのかわからないが、佳奈多は彼の前で体を見せては駄目だと思った。佳奈多はたぶん本能的に危険を察知している。
「…そう、だよねぇ。かなちゃん、タブレット貸してあげるから、寝室で動画でも見ててよ。さっきのゲーム、やってる人いるよ」
佳奈多はタブレットを渡され、大翔に連れられて違う部屋に向かう。部屋の中には本棚と机と大きなベッドが置かれていた。机は教科書やパソコンが置いてある。随分広いが、ここが大翔の自室で寝室なのだろう。佳奈多の部屋よりも遥かに広い。風呂もそうだったが寝室も、一人で過ごすには広すぎる。大翔の父はどういった意図でこの家に住まわせているのだろうかと佳奈多は思う。一人では持て余し、孤独感が増してしまう気がする。
「僕の、お布団…」
「ごめんね、来客用の布団がないんだ。俺のベッドで、先に寝てていいから」
大翔は言うだけいって部屋を出ていった。佳奈多がベッドを使ってしまったら、大翔はどこで眠るのだろう。佳奈多は迷ってベッドに腰かけ、動画を再生した。大翔が戻ってきたら、佳奈多はソファで眠ろう。修学旅行を思い出して、佳奈多は怖くなった。大翔が戻ってきたら逃げられないかもしれない。しかし今一人で移動するも怖い。
まして、さっきのゲームを人気の配信者がやっているらしい。もう21時を過ぎているのに動画が見られる。そもそも自宅であまり見させてもらえない佳奈多は嬉しくて、タブレットにかじりついて操作をした。大翔への恐怖より動画への興味が勝ってしまった。
「ふふ、ふふふ、うふっ……ひぇっ!」
あっという間に時間が過ぎたらしい。風呂上がりの大翔が眼の前にいた。動画に夢中になりすぎて、いつ扉が開いたのかも気づかなかった。佳奈多は飛び上がった心臓を抑えようと胸元を握りしめる。
「ぅ、う、…びっ、びっくり、した」
「かなちゃん、すごい集中してたね。面白かった?一人で笑って…」
「大翔、君?」
「すっ、すごいね!できちゃった…すごい!」
思わず両手を叩いて拍手を送ると、大翔は照れくさそうに笑った。
夕食を終えて、佳奈多は先に風呂に入った。家政婦さんの夕食はとても美味しかった。毎日あんなご飯が食べられる大翔が少し羨ましい。
しかし、人気のない大翔の家は怖かった。一軒家の佳奈多の家とは違い、外からの音が聞こえない。トイレに行くにも当然廊下に人気はなく、まるで世界に佳奈多と大翔しかいなくなってしまったかのようだった。
広い浴室で体を温めつつ、怖くなった佳奈多は早々に風呂を出た。大翔の家の浴室は佳奈多の家のものと比べると倍はある。広い空間に一人きりでいることに、佳奈多は怖くなってしまった。長い廊下を抜けて、急いで大翔のいるリビングに向かった。
「早いね、かなちゃん。ちゃんと温まった?」
「おっ、お風呂、怖くて…大きいから、す、すごく」
「そっか、怖くなっちゃったか…一緒に入る?今から」
ソファに座る大翔に駆け寄ると、大翔は佳奈多の頭を拭きながら問う。
今日一日、幼稚園児の時のような時間が過ごせて佳奈多はとても楽しかった。自宅にいると、帰ってこない母に不安になり、父がいると暴力が始まらないか不安で落ち着かない。大翔の家で、佳奈多自身もゆったりとした時間を過ごせた。
しかし、佳奈多を見つめる大翔の視線が時々怖かった。今日は無邪気な笑顔を沢山見せてくれた。その中で、あの熱のこもった視線も感じていた。
佳奈多は首を横に振った。やっぱり大翔とお風呂に一緒に入るのは怖い。何がどう怖いのかわからないが、佳奈多は彼の前で体を見せては駄目だと思った。佳奈多はたぶん本能的に危険を察知している。
「…そう、だよねぇ。かなちゃん、タブレット貸してあげるから、寝室で動画でも見ててよ。さっきのゲーム、やってる人いるよ」
佳奈多はタブレットを渡され、大翔に連れられて違う部屋に向かう。部屋の中には本棚と机と大きなベッドが置かれていた。机は教科書やパソコンが置いてある。随分広いが、ここが大翔の自室で寝室なのだろう。佳奈多の部屋よりも遥かに広い。風呂もそうだったが寝室も、一人で過ごすには広すぎる。大翔の父はどういった意図でこの家に住まわせているのだろうかと佳奈多は思う。一人では持て余し、孤独感が増してしまう気がする。
「僕の、お布団…」
「ごめんね、来客用の布団がないんだ。俺のベッドで、先に寝てていいから」
大翔は言うだけいって部屋を出ていった。佳奈多がベッドを使ってしまったら、大翔はどこで眠るのだろう。佳奈多は迷ってベッドに腰かけ、動画を再生した。大翔が戻ってきたら、佳奈多はソファで眠ろう。修学旅行を思い出して、佳奈多は怖くなった。大翔が戻ってきたら逃げられないかもしれない。しかし今一人で移動するも怖い。
まして、さっきのゲームを人気の配信者がやっているらしい。もう21時を過ぎているのに動画が見られる。そもそも自宅であまり見させてもらえない佳奈多は嬉しくて、タブレットにかじりついて操作をした。大翔への恐怖より動画への興味が勝ってしまった。
「ふふ、ふふふ、うふっ……ひぇっ!」
あっという間に時間が過ぎたらしい。風呂上がりの大翔が眼の前にいた。動画に夢中になりすぎて、いつ扉が開いたのかも気づかなかった。佳奈多は飛び上がった心臓を抑えようと胸元を握りしめる。
「ぅ、う、…びっ、びっくり、した」
「かなちゃん、すごい集中してたね。面白かった?一人で笑って…」
「大翔、君?」
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