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震える佳奈多を、大翔はソファに促す。佳奈多から受け取った手土産を持って大翔はキッチンに向かった。そばに大翔のいなくなった佳奈多は、緊張したまま座っていた。窓から見える空は普段より距離が近く見える。眼の前の大きなモニターの下、テレビ台の中にいくつかゲーム機が入っている。最新のものから少し前のものまで。しかしあまり使われていないのか無造作に突っ込まれていた。
大翔はトレーにお菓子とお茶を乗せて戻ってきた。
「超うまそう。お母さんにお礼、言っといてね。いただきまーす」
「…大翔君、あの、一人で、暮らしてるの?」
本当に家の中に人気が無い。それどころかあまりにも室内が綺麗で、大翔が住んでいるのかも怪しいと思ってしまう。こういうのを、生活感がない、というのかもしれない。
「うん。母さんが亡くなって、松本になってからずっと。前は放課後にシッターさんとか来てたけど、今は一人だよ。シッターさんが来てた時も、夜は一人」
大翔はお菓子をつまみながら話す。その顔にはなんの表情もなかった。悲しいとも淋しいとも、なんの感情も示していない。
「怖く、ないの?」
こんなに立派なマンションに、大翔一人で暮らしている。夜は誰もいなくなる。佳奈多なら夜は怖くて一人でいられないだろう。大翔は笑った。
「もう、怖いって気持ちも、なくなっちゃった」
大翔がやっと表情を見せた。大翔は何でもないことのように笑っている。佳奈多はその笑顔を、とても悲しいと思った。
小学生のときから一人で暮らしてきたらしい。母親が亡くなってから、今までずっと。自分にはきっと耐えられないだろうことを、大翔はずっと耐えてきた。
学校から帰れば誰とも話さず、土日も誰もいない自宅を想像して佳奈多は淋しくなった。佳奈多の家は、土日はさすがに母がいた。父が仕事の時はでかけてしまう時もあったが、丸一日いないことはない。夜は遅くなっても必ず母がいた。
まさか大翔がそんなに孤独に過ごしているだなんて知らなかったし、想像すらしていなかった。父親とその奥さんとお兄さんと暮しているものとばかり思っていた。
「今日、かなちゃんが来てくれて、嬉しい」
大翔の笑顔と大翔の母の笑顔が重なる。大翔の母も優しい人で、いつも快活に笑っていた。佳奈多と二人でいる時の大翔は時々こうして笑う。佳奈多は思わず大翔の手を取った。
「きょっ、今日、いっぱい、あ、あそぼ」
強く手を握ると大翔は驚いていたが、すぐに笑顔を返してくれた。
佳奈多は大翔にお願いしてゲームをモニターにつなげてもらった。その上、気になるゲームはその場で購入してくれた。カードが登録されていて、欲しいものはなんでも買えるらしい。ゲーム以外でも、大翔の父の秘書の人からカードでなにを買っても良いと言われているそうだ。家に来ない分、せめてお金だけは自由にさせてやるということなのだろう、と、大翔は言う。あまりにも悲しい対応だと佳奈多は思った。
きっと大翔も、父親に会いたいはずだ。
あまりゲームをしたことがなかった佳奈多はすぐにのめり込んで、夢中になった。
「あっ、あ!…ま、また、だめだった…」
「かなちゃん………へ、下手すぎ…」
「えっ…ひどいよ、ひろくん…ふ、ふふふっ、へへ」
震える声に大翔を見ると、大翔は肩を震わせて笑いを堪えていた。顔を赤くして笑いをこらえる大翔に思わず佳奈多も笑ってしまった。ひどいことを言われたが、大翔の屈託のない笑顔に佳奈多まで楽しくなる。まるで幼稚園の頃のようだ。大翔は少し驚いて、柔らかく笑った。
「だって、ずっと同じとこグルグルしてる」
「じゃあ、ひ、ひろくん、やってよ」
大翔はトレーにお菓子とお茶を乗せて戻ってきた。
「超うまそう。お母さんにお礼、言っといてね。いただきまーす」
「…大翔君、あの、一人で、暮らしてるの?」
本当に家の中に人気が無い。それどころかあまりにも室内が綺麗で、大翔が住んでいるのかも怪しいと思ってしまう。こういうのを、生活感がない、というのかもしれない。
「うん。母さんが亡くなって、松本になってからずっと。前は放課後にシッターさんとか来てたけど、今は一人だよ。シッターさんが来てた時も、夜は一人」
大翔はお菓子をつまみながら話す。その顔にはなんの表情もなかった。悲しいとも淋しいとも、なんの感情も示していない。
「怖く、ないの?」
こんなに立派なマンションに、大翔一人で暮らしている。夜は誰もいなくなる。佳奈多なら夜は怖くて一人でいられないだろう。大翔は笑った。
「もう、怖いって気持ちも、なくなっちゃった」
大翔がやっと表情を見せた。大翔は何でもないことのように笑っている。佳奈多はその笑顔を、とても悲しいと思った。
小学生のときから一人で暮らしてきたらしい。母親が亡くなってから、今までずっと。自分にはきっと耐えられないだろうことを、大翔はずっと耐えてきた。
学校から帰れば誰とも話さず、土日も誰もいない自宅を想像して佳奈多は淋しくなった。佳奈多の家は、土日はさすがに母がいた。父が仕事の時はでかけてしまう時もあったが、丸一日いないことはない。夜は遅くなっても必ず母がいた。
まさか大翔がそんなに孤独に過ごしているだなんて知らなかったし、想像すらしていなかった。父親とその奥さんとお兄さんと暮しているものとばかり思っていた。
「今日、かなちゃんが来てくれて、嬉しい」
大翔の笑顔と大翔の母の笑顔が重なる。大翔の母も優しい人で、いつも快活に笑っていた。佳奈多と二人でいる時の大翔は時々こうして笑う。佳奈多は思わず大翔の手を取った。
「きょっ、今日、いっぱい、あ、あそぼ」
強く手を握ると大翔は驚いていたが、すぐに笑顔を返してくれた。
佳奈多は大翔にお願いしてゲームをモニターにつなげてもらった。その上、気になるゲームはその場で購入してくれた。カードが登録されていて、欲しいものはなんでも買えるらしい。ゲーム以外でも、大翔の父の秘書の人からカードでなにを買っても良いと言われているそうだ。家に来ない分、せめてお金だけは自由にさせてやるということなのだろう、と、大翔は言う。あまりにも悲しい対応だと佳奈多は思った。
きっと大翔も、父親に会いたいはずだ。
あまりゲームをしたことがなかった佳奈多はすぐにのめり込んで、夢中になった。
「あっ、あ!…ま、また、だめだった…」
「かなちゃん………へ、下手すぎ…」
「えっ…ひどいよ、ひろくん…ふ、ふふふっ、へへ」
震える声に大翔を見ると、大翔は肩を震わせて笑いを堪えていた。顔を赤くして笑いをこらえる大翔に思わず佳奈多も笑ってしまった。ひどいことを言われたが、大翔の屈託のない笑顔に佳奈多まで楽しくなる。まるで幼稚園の頃のようだ。大翔は少し驚いて、柔らかく笑った。
「だって、ずっと同じとこグルグルしてる」
「じゃあ、ひ、ひろくん、やってよ」
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