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おじさんの家の動画は全て大翔が引き上げて一人の少女を調べると、少女には兄がいた。少女を確認しに行ったら、兄と一緒にいるところに出くわしたそうだ。
「お兄さんに女の子の話をして動画見せたら、ブチギレちゃって。アニキって人とその仲間引き連れて来てくれたんだよね。おじさんの家。それがかなちゃんが動画撮られた次の日の夜なんだけど…おじさん、朝からずっとぶっ倒れてたみたいでね。水かけられて飛び起きてたよ」
くすくすと楽しそうに大翔は笑って話す。思い出して、笑いが込み上げているようだ。佳奈多は動けず、声も出せずに大翔の話に聞き入った。
「その人の仲間が大きな車を出してくれてね、おじさんを山の中に連れてくって。俺も行くつもりだったけど、見られると困るから帰れって。一発やらせてくれたけど、それっきり。あれからコンビニで見かけないし家にも帰ってこないから、もう大丈夫じゃないかな」
大翔は話しながら佳奈多の手を何度も撫でた。震える佳奈多をなだめるように。
ヤバイ人に山の中に連れて行かれたおじさんは一体どうなったのだろうか。
「おっ、おじさ…おじさんは、…しっ、死んっ、殺され、てっ」
「うん。生きてなくていいんだよ。かなちゃんの、こんな姿を見たんだから」
大翔がブラックアウトしたスマホを操作すると、また佳奈多の姿が浮かびあがった。佳奈多は足に力が入らずその場にへたり込む。おじさんが死んだ、かもしれない。大翔は犯罪者になったのではないか。少なくとも2発、大翔はおじさんに危害を加えている。直接じゃないにしても、おじさんの死に加担したことになるのではないだろうか。
「ひろ、と、君、たっ、逮捕、され」
「それならもうされてると思うよ。あのおじさん、かなちゃんとその女の子だけじゃなくて、他に何人も写真と動画が入ってた。恨んでる人は多いんじゃないかなぁ」
女の子は近所の学校で、自宅の住所も近いから一番に会いに行ったそうだ。そうしたら偶然、ヤバイ人とつながっている兄といるところに遭遇したらしい。ものすごい幸運だったと大翔は笑うが、佳奈多からしたら不運以外のなにものでもない。その男と出会ったせいで、大翔が犯罪者になってしまった。
冤罪なのだから、きちんと両親に話をして警察に行くべきだったのかと佳奈多は今になって思う。万引きはしていないと信じてもらえたかはわからないが、大翔が手を汚すくらいなら、佳奈多がきちんと別の誰かに話をするべきだったのではないか。自分のせいで、大翔はとんでもないことに手を染めてしまった。佳奈多の中に後悔が広がる。
「大丈夫だよ、かなちゃん。俺は大丈夫」
笑う大翔に背筋が寒くなる。その目には恐怖も虚勢もない。大丈夫の根拠が何なのかわからないが、本当に、罪に対して何も思っておらず、罰を受けるとは微塵も思っていない表情だった。
大翔の父親はこの地方の銀行の一番偉い人で、財力も権力もある。もしかしたら本当に、警察に圧力がかけられても大丈夫なのかもしれない。大翔の笑顔に改めて震えが走る。
あの動画が大翔の手元にある。
「ど、動画、」
消して欲しいと頼みたかったが、言葉は続かなかった。
「これも、証拠になると思うんだ。かなちゃんがあのおじさんに脅されたって。でも大丈夫だよ。もう、俺しか見ないんだから」
佳奈多はもう何も言えなくなった。きっと大翔は動画を消さない。持ち主がおじさんから大翔に変わっただけで、動画の存在は消えていない。佳奈多の手がスマホにあたってしまい、再び動画が再生される。おじさんの声と、涙で震える自分の声が、聞きたくないのに耳に入り込んでくる。
「かなちゃん、俺、頑張ったんだ。ご褒美、欲しいんだけど…」
項垂れる佳奈多に覆いかぶさった大翔が耳元でささやく。佳奈多は眼の前が真っ暗になった。
「お兄さんに女の子の話をして動画見せたら、ブチギレちゃって。アニキって人とその仲間引き連れて来てくれたんだよね。おじさんの家。それがかなちゃんが動画撮られた次の日の夜なんだけど…おじさん、朝からずっとぶっ倒れてたみたいでね。水かけられて飛び起きてたよ」
くすくすと楽しそうに大翔は笑って話す。思い出して、笑いが込み上げているようだ。佳奈多は動けず、声も出せずに大翔の話に聞き入った。
「その人の仲間が大きな車を出してくれてね、おじさんを山の中に連れてくって。俺も行くつもりだったけど、見られると困るから帰れって。一発やらせてくれたけど、それっきり。あれからコンビニで見かけないし家にも帰ってこないから、もう大丈夫じゃないかな」
大翔は話しながら佳奈多の手を何度も撫でた。震える佳奈多をなだめるように。
ヤバイ人に山の中に連れて行かれたおじさんは一体どうなったのだろうか。
「おっ、おじさ…おじさんは、…しっ、死んっ、殺され、てっ」
「うん。生きてなくていいんだよ。かなちゃんの、こんな姿を見たんだから」
大翔がブラックアウトしたスマホを操作すると、また佳奈多の姿が浮かびあがった。佳奈多は足に力が入らずその場にへたり込む。おじさんが死んだ、かもしれない。大翔は犯罪者になったのではないか。少なくとも2発、大翔はおじさんに危害を加えている。直接じゃないにしても、おじさんの死に加担したことになるのではないだろうか。
「ひろ、と、君、たっ、逮捕、され」
「それならもうされてると思うよ。あのおじさん、かなちゃんとその女の子だけじゃなくて、他に何人も写真と動画が入ってた。恨んでる人は多いんじゃないかなぁ」
女の子は近所の学校で、自宅の住所も近いから一番に会いに行ったそうだ。そうしたら偶然、ヤバイ人とつながっている兄といるところに遭遇したらしい。ものすごい幸運だったと大翔は笑うが、佳奈多からしたら不運以外のなにものでもない。その男と出会ったせいで、大翔が犯罪者になってしまった。
冤罪なのだから、きちんと両親に話をして警察に行くべきだったのかと佳奈多は今になって思う。万引きはしていないと信じてもらえたかはわからないが、大翔が手を汚すくらいなら、佳奈多がきちんと別の誰かに話をするべきだったのではないか。自分のせいで、大翔はとんでもないことに手を染めてしまった。佳奈多の中に後悔が広がる。
「大丈夫だよ、かなちゃん。俺は大丈夫」
笑う大翔に背筋が寒くなる。その目には恐怖も虚勢もない。大丈夫の根拠が何なのかわからないが、本当に、罪に対して何も思っておらず、罰を受けるとは微塵も思っていない表情だった。
大翔の父親はこの地方の銀行の一番偉い人で、財力も権力もある。もしかしたら本当に、警察に圧力がかけられても大丈夫なのかもしれない。大翔の笑顔に改めて震えが走る。
あの動画が大翔の手元にある。
「ど、動画、」
消して欲しいと頼みたかったが、言葉は続かなかった。
「これも、証拠になると思うんだ。かなちゃんがあのおじさんに脅されたって。でも大丈夫だよ。もう、俺しか見ないんだから」
佳奈多はもう何も言えなくなった。きっと大翔は動画を消さない。持ち主がおじさんから大翔に変わっただけで、動画の存在は消えていない。佳奈多の手がスマホにあたってしまい、再び動画が再生される。おじさんの声と、涙で震える自分の声が、聞きたくないのに耳に入り込んでくる。
「かなちゃん、俺、頑張ったんだ。ご褒美、欲しいんだけど…」
項垂れる佳奈多に覆いかぶさった大翔が耳元でささやく。佳奈多は眼の前が真っ暗になった。
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