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「かなちゃん、俺は、かなちゃんの味方だから。何があったか、教えて。力になるから。かなちゃんのこと、守らせて…」
大翔の悲痛な声に、佳奈多は頷いた。佳奈多の苦しみに、大翔も苦しんでいる。佳奈多は大翔にしがみついた。
一人で抱えるには、今日の出来事はあまりに重すぎた。見知った大翔の姿に、心から佳奈多を心配している大翔に、佳奈多は話す決意をした。
誰もいない自宅の見慣れた自室に大翔がいる。大翔しか、いない。
同じ中学生で子供の大翔にどうにかできるとは思わないが、せめて佳奈多の身になにがあったのか、佳奈多が潔白であることをわかってもらいたかった。
この時の佳奈多に正常な判断はできていなかった。目の前にいる大翔しか、縋れる相手がいなかった。
佳奈多はコンビニで何があったのかを大翔に話した。盗った覚えのないものが鞄に入っていたこと、それが避妊具だったこと、店のおじさんに下半身を露出した動画を取られたこと。
「で、電話がきたら、すぐ、行かなきゃ…動画、ばっ、ばらまくって」
「そのおじさんの電話番号、わかる?」
佳奈多はスマホを取り出して大翔に見せた。大翔は自分のスマホに打ち込む。
「…かなちゃん、いつも…お父さんとお母さん、いないの?」
大翔はスマホに打ち込みながら、佳奈多に問うた。もう22時になる。両親はまだ帰ってこない。
「お父さん、仕事で…お母さんはお友達と、お、お出かけ、してる」
「そうか…だからいつも、かなちゃんの部屋以外電気がついてないんだね」
「え?」
佳奈多は顔を上げた。確かにいつも両親は遅くまで帰ってこない。佳奈多はいつも施錠して先に眠っていた。どうして大翔がそのことを知っているのか。
「いつも、この辺走ってるんだ。かなちゃん、いつも21時には電気をけすのに、今日は中々消えなかったから、どうしたのかなって、思ってた」
大翔は佳奈多にスマホを返し、自分のスマホもジャージのポケットに突っ込んだ。
消しゴムを買いに出る時に、自室の電気をつけたままにしていた。そうすれば、玄関から見上げれば明かりが見える。真っ暗な自宅が怖い佳奈多の苦肉の策だった。
佳奈多の自室は玄関からすぐ見える。佳奈多の眠る時間を把握するほど、大翔はこの家を見上げていた。おそらく毎晩見に来ていたのだろう。
佳奈多の背中に冷たい汗が伝った。
『えっちなことたくさんしようね』
また、おじさんの言葉がよみがえる。具体的に何をするのがわからないが、きっとあの男と大翔がしたいことは同じだ。
佳奈多はうつむいた。誰もいない自宅の自室に大翔がいる。今この家に、大翔と自分以外誰もいない。誰も来ない。事実、さっき絶叫を上げたのに、外がざわつくこともパトカーのサイレンが聞こえてくることもなかった。
床に正座で座る佳奈多の膝においた右手が震える。震えを隠そうと左手でおさえたが、その左手も震えていた。次第に全身に震えが走る。大翔に知られたくないのに震えは止まらない。
ふわりと何かが被さってきて、それが大翔だと気づいたときにはもう抱きしめられていた。
「大丈夫だよ、俺がいるから。俺がなんとかするから。怖がらないで、かなちゃん。大丈夫」
大翔に優しく背中を撫でられて、佳奈多は息を殺して固まっていた。今怖いのはあのおじさんと大翔と、どちらなのだろう。しばらく佳奈多を抱きしめて、大翔は離れていった。
「かなちゃん、俺、そろそろ…一人で大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫。もうすぐお母さん、帰ってくるから」
母が何時に帰ってくるのかわからないが、佳奈多は答えた。自分勝手な考えに胸が痛むが、大翔に、早く帰ってほしかった。
「そっか…じゃあ、帰るね。コンビニのおじさんのこと、心配しなくていいからね。俺がなんとかするから」
大翔が立ち上がる。佳奈多は大翔について玄関に向かった。
大翔の悲痛な声に、佳奈多は頷いた。佳奈多の苦しみに、大翔も苦しんでいる。佳奈多は大翔にしがみついた。
一人で抱えるには、今日の出来事はあまりに重すぎた。見知った大翔の姿に、心から佳奈多を心配している大翔に、佳奈多は話す決意をした。
誰もいない自宅の見慣れた自室に大翔がいる。大翔しか、いない。
同じ中学生で子供の大翔にどうにかできるとは思わないが、せめて佳奈多の身になにがあったのか、佳奈多が潔白であることをわかってもらいたかった。
この時の佳奈多に正常な判断はできていなかった。目の前にいる大翔しか、縋れる相手がいなかった。
佳奈多はコンビニで何があったのかを大翔に話した。盗った覚えのないものが鞄に入っていたこと、それが避妊具だったこと、店のおじさんに下半身を露出した動画を取られたこと。
「で、電話がきたら、すぐ、行かなきゃ…動画、ばっ、ばらまくって」
「そのおじさんの電話番号、わかる?」
佳奈多はスマホを取り出して大翔に見せた。大翔は自分のスマホに打ち込む。
「…かなちゃん、いつも…お父さんとお母さん、いないの?」
大翔はスマホに打ち込みながら、佳奈多に問うた。もう22時になる。両親はまだ帰ってこない。
「お父さん、仕事で…お母さんはお友達と、お、お出かけ、してる」
「そうか…だからいつも、かなちゃんの部屋以外電気がついてないんだね」
「え?」
佳奈多は顔を上げた。確かにいつも両親は遅くまで帰ってこない。佳奈多はいつも施錠して先に眠っていた。どうして大翔がそのことを知っているのか。
「いつも、この辺走ってるんだ。かなちゃん、いつも21時には電気をけすのに、今日は中々消えなかったから、どうしたのかなって、思ってた」
大翔は佳奈多にスマホを返し、自分のスマホもジャージのポケットに突っ込んだ。
消しゴムを買いに出る時に、自室の電気をつけたままにしていた。そうすれば、玄関から見上げれば明かりが見える。真っ暗な自宅が怖い佳奈多の苦肉の策だった。
佳奈多の自室は玄関からすぐ見える。佳奈多の眠る時間を把握するほど、大翔はこの家を見上げていた。おそらく毎晩見に来ていたのだろう。
佳奈多の背中に冷たい汗が伝った。
『えっちなことたくさんしようね』
また、おじさんの言葉がよみがえる。具体的に何をするのがわからないが、きっとあの男と大翔がしたいことは同じだ。
佳奈多はうつむいた。誰もいない自宅の自室に大翔がいる。今この家に、大翔と自分以外誰もいない。誰も来ない。事実、さっき絶叫を上げたのに、外がざわつくこともパトカーのサイレンが聞こえてくることもなかった。
床に正座で座る佳奈多の膝においた右手が震える。震えを隠そうと左手でおさえたが、その左手も震えていた。次第に全身に震えが走る。大翔に知られたくないのに震えは止まらない。
ふわりと何かが被さってきて、それが大翔だと気づいたときにはもう抱きしめられていた。
「大丈夫だよ、俺がいるから。俺がなんとかするから。怖がらないで、かなちゃん。大丈夫」
大翔に優しく背中を撫でられて、佳奈多は息を殺して固まっていた。今怖いのはあのおじさんと大翔と、どちらなのだろう。しばらく佳奈多を抱きしめて、大翔は離れていった。
「かなちゃん、俺、そろそろ…一人で大丈夫?」
「あ、だ、大丈夫。もうすぐお母さん、帰ってくるから」
母が何時に帰ってくるのかわからないが、佳奈多は答えた。自分勝手な考えに胸が痛むが、大翔に、早く帰ってほしかった。
「そっか…じゃあ、帰るね。コンビニのおじさんのこと、心配しなくていいからね。俺がなんとかするから」
大翔が立ち上がる。佳奈多は大翔について玄関に向かった。
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