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近くのベンチに腰かけて佳奈多は母を買い物に促した。母は楽しそうに空港内のお店に消えていった。きっと佳奈多が到着するまでも買い物をしていただろうに、まだ見たい店があるようだ。楽しそうな母を見るのは久しぶりだ。佳奈多はぼんやりと母の消えた方向を眺めた。
修学旅行はとても疲れた。これから大翔と自分はどうなってしまうのだろう。学校で、今まで通りにに大翔と過ごせるだろうか。今朝から大翔のスキンシップは益々激しくなっている。昨日の夜なのか今朝なのか、大翔の中でなにかが変わってしまった気がする。佳奈多はぎゅっと自分の体を抱いた。
大翔が怖い。
恋愛なんて考えたこともない。あんな風に好意をぶつけられて、どうしたら良いのかわからない。これからこの先、なにをされるのだろうか。学校を休むことはもうできない。でも大翔から離れたら学校で一人ぼっちになってしまう。そもそも、大翔が佳奈多を手放すと思えない。大翔から離れる術がない。大翔からきちんと好意を伝えられてしまったら、もう友達には戻れなくなるだろう。
行き交う人々の足元をぼんやり眺めながら、佳奈多はじっと母を待っていた。2時間が経ち、母がやっと戻ってきてくれた。上機嫌な母の顔を見て、楽しそうな姿に安堵する。
「行きましょう、佳奈多。そうそう、大翔君とは相変わらず仲良しなのね。お父さんにも報告しましょうね、きっと喜ぶわ。これからも、大翔君の一番の親友でいるのよ?」
タクシー乗り場に向かいながら、母は弾んだ声で言った。佳奈多は頷く。佳奈多に大翔と仲良くする以外の選択肢なんてなかった。佳奈多はぼんやりと、月曜日が来なければいいのに、と祈っていた。
修学旅行の後の登校日。佳奈多と一緒に学校に行く大翔の手の繋ぎ方が変わった。飛行機の中でしていた、指と指の間に指をからませる恋人同士の繋ぎ方になった。
電車に乗ると、大翔は佳奈多を後ろから包み込むように抱きしめた。
「ひろ君、電車で…おふざけするの、だめだよ」
「ふざけてないよ。かなちゃん、他の人にぶつかるでしょ。俺がちゃんと、壁になってあげるから」
大翔より小さい佳奈多はすっぽり腕の中に収まってしまう。混雑する電車内で、佳奈多は小さくなって固まっていた。大翔は佳奈多の頭に顔を埋めて呼吸をしている。今までも電車の中で大翔が壁になってくれていた。しかし、抱きしめられたことはなかった。周りの人は驚いているだろう。男子二人のうち一人が片割れに抱きついている。やめてほしいと声を上げようとして、母の言葉が佳奈多の頭をよぎった。
『これからも、大翔君の一番の親友でいるのよ?』
佳奈多は抵抗を辞めた。学校の最寄り駅につくまで、じっと耐えていた。
佳奈多の懸念していた通り、修学旅行を境に大翔の接触は激しくなった。最終日から、大翔の中で何かが変わってしまった。
体育など、着替えが必要な時は空き教室でしてほしいと懇願された。大翔は『他の人間に佳奈多の着替えを見られたくない』と言う。
「そんな…僕、女の子じゃ、ないし」
「でも、嫌なんだ、俺…かなちゃんが、教室で着替えてるの。俺以外の人間が見てるの、嫌だ」
「みっ、見てないよ!誰も、見てない、ぼっ、僕の、ことなんか…変だよ、僕とひろ君だけ、ち、違うとこで、着替えなんて」
「…変で、ごめんね、かなちゃん。かなちゃんを一人にしておくのは不安だし、…俺…」
佳奈多は他に人のいない教室で大翔と2人きりになることが怖かった。佳奈多は大翔に考え直してもらいたかった。大翔は佳奈多の手を握って真っ直ぐ目を見つめてきた。大翔は何を言おうとしているのだろう。
「かなちゃんの、こと」
修学旅行はとても疲れた。これから大翔と自分はどうなってしまうのだろう。学校で、今まで通りにに大翔と過ごせるだろうか。今朝から大翔のスキンシップは益々激しくなっている。昨日の夜なのか今朝なのか、大翔の中でなにかが変わってしまった気がする。佳奈多はぎゅっと自分の体を抱いた。
大翔が怖い。
恋愛なんて考えたこともない。あんな風に好意をぶつけられて、どうしたら良いのかわからない。これからこの先、なにをされるのだろうか。学校を休むことはもうできない。でも大翔から離れたら学校で一人ぼっちになってしまう。そもそも、大翔が佳奈多を手放すと思えない。大翔から離れる術がない。大翔からきちんと好意を伝えられてしまったら、もう友達には戻れなくなるだろう。
行き交う人々の足元をぼんやり眺めながら、佳奈多はじっと母を待っていた。2時間が経ち、母がやっと戻ってきてくれた。上機嫌な母の顔を見て、楽しそうな姿に安堵する。
「行きましょう、佳奈多。そうそう、大翔君とは相変わらず仲良しなのね。お父さんにも報告しましょうね、きっと喜ぶわ。これからも、大翔君の一番の親友でいるのよ?」
タクシー乗り場に向かいながら、母は弾んだ声で言った。佳奈多は頷く。佳奈多に大翔と仲良くする以外の選択肢なんてなかった。佳奈多はぼんやりと、月曜日が来なければいいのに、と祈っていた。
修学旅行の後の登校日。佳奈多と一緒に学校に行く大翔の手の繋ぎ方が変わった。飛行機の中でしていた、指と指の間に指をからませる恋人同士の繋ぎ方になった。
電車に乗ると、大翔は佳奈多を後ろから包み込むように抱きしめた。
「ひろ君、電車で…おふざけするの、だめだよ」
「ふざけてないよ。かなちゃん、他の人にぶつかるでしょ。俺がちゃんと、壁になってあげるから」
大翔より小さい佳奈多はすっぽり腕の中に収まってしまう。混雑する電車内で、佳奈多は小さくなって固まっていた。大翔は佳奈多の頭に顔を埋めて呼吸をしている。今までも電車の中で大翔が壁になってくれていた。しかし、抱きしめられたことはなかった。周りの人は驚いているだろう。男子二人のうち一人が片割れに抱きついている。やめてほしいと声を上げようとして、母の言葉が佳奈多の頭をよぎった。
『これからも、大翔君の一番の親友でいるのよ?』
佳奈多は抵抗を辞めた。学校の最寄り駅につくまで、じっと耐えていた。
佳奈多の懸念していた通り、修学旅行を境に大翔の接触は激しくなった。最終日から、大翔の中で何かが変わってしまった。
体育など、着替えが必要な時は空き教室でしてほしいと懇願された。大翔は『他の人間に佳奈多の着替えを見られたくない』と言う。
「そんな…僕、女の子じゃ、ないし」
「でも、嫌なんだ、俺…かなちゃんが、教室で着替えてるの。俺以外の人間が見てるの、嫌だ」
「みっ、見てないよ!誰も、見てない、ぼっ、僕の、ことなんか…変だよ、僕とひろ君だけ、ち、違うとこで、着替えなんて」
「…変で、ごめんね、かなちゃん。かなちゃんを一人にしておくのは不安だし、…俺…」
佳奈多は他に人のいない教室で大翔と2人きりになることが怖かった。佳奈多は大翔に考え直してもらいたかった。大翔は佳奈多の手を握って真っ直ぐ目を見つめてきた。大翔は何を言おうとしているのだろう。
「かなちゃんの、こと」
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