74 / 78
森之宮家の三兄弟
35
しおりを挟む
「単純に半分にするとかなり小さな粒になってしまいますね」
「糖衣でかさ増しするか。味も問題だしな」
「あ、でしたらぜひ弊社の技術を採用していただきたいです。先日認可が降りたんですが、新しいコーティングができまして…」
「よし。休み明けたら上に話通す。裕司も聞いたよな?後で文書回す。もう華と朝陽には聞かん」
「はいはい、了解。華と朝陽ちゃんにも話きいたげてな」
どんどん進んでいく話に、華と朝陽はしょんぼりと俯いた。物怖じしないアイとミイの強さが半分で良いからほしい。
「しっかりしてんな、この子達」
「甘ったれの開斗にぴったりだな」
咲也と伊吹は感心してアイとミイを見る。
「生意気ですよね、ごめんなさい。僕達の働いてる業界は、はっきりモノが言えないと潰されちゃいますから。遠慮してたら仕事をもらえなかったり」
「モデル業は将来、自分達で会社を持つための資金と注目を集めるためでもあるんです。開斗と番になったことで色々言われると思うんですけど、それも踏み台にするつもりです」
オメガカップルであることを公言していた二人にアルファの番ができた。『オメガカップルというのは嘘だった』とか『結局アルファとくっついた』とかあれこれ言われるだろう。『裏切られた』と思う人もいるかもしれない。
しかし、アイとミイは彼らのためだけに生きているわけではない。
応援してくれたことはありがたい。悪く言われて傷つかないわけではないし、実際目にしたらとても苦しいだろう。しかし二人は前を向く。
親がいないこと、第二性が二人共オメガだったこと。幼い頃から嫌な目を向けられてきた二人は強くなるしかなかった。しかしそのおかげで多少の非難は受け流せるし、マイナスをプラスに転嫁する図太さを手に入れられた。
朝陽は目を輝かせて二人を見た。
「すごい…アイちゃん、ミイちゃん、格好良い…!」
「うん、すごいな。そこまで割り切ってんのも、批判に対する考え方も切り替え方もいい。二人は、どのくらいまでモデルの仕事を続けようと思ってる?自分達の会社ってどんなこと?具体的に」
咲也はアイとミイに問う。真剣な咲也の視線に、アイとミイは背筋を伸ばした。
「え?あの…そんなに長く続けるつもりはないです。あと1~2年、かな、と」
「モデルじゃない、ファッションに関するお仕事がしたいんです。こんなお洋服やアイテムがあるよって紹介できるような…」
「なるほど。俺がこの前買った服飾関係の会社がだいぶ傾いてて。やってみる?経営の練習ってことで」
「「え、えぇ!?」」
咲也の提案に、アイとミイは頬を染めて顔を見合わせた。まさかこんな形で夢が叶うとは。二人にできるだろうかという不安が大きくのしかかる。が、経営は咲也との三人体制で行うらしい。会社にとってはモデルのアイとミイのネームバリューもかなり大きな付加価値となると言う。
「具体的なところは、二人の事務所も交えて話をしてからだけど」
「「お、お願いします!やりたいです!」」
アイとミイは身を乗り出した。チャンスは迷わず逃さない。しかし、不安が顔に出ていたようだ。朝陽は二人に笑顔を向ける。
「大丈夫だよ、アイちゃん、ミイちゃん。さっくんね、できるって人にしか言わないから。それにね、さっくん、ワクワクしてる。きっとね、アイちゃんとミイちゃんが社長になったら、すごいことになるんだよ。ね、さっくん、楽しみだね!」
「嘘。ワクワク漏れてる?俺」
咲也は両手で自分の頬を覆った。うっかりニヤニヤしてしまっただろうか。しかし目の前に座る伊吹は腕を組んで首を傾げている。
「ワクワクしてんの?咲也。わかんねぇんだけど」
「え~?めっちゃ嬉しそうじゃん。アイ、ミイ、良かったね。俺も嬉しい。さく兄は悪いようにはしないよ。俺の大好きな人だから」
「糖衣でかさ増しするか。味も問題だしな」
「あ、でしたらぜひ弊社の技術を採用していただきたいです。先日認可が降りたんですが、新しいコーティングができまして…」
「よし。休み明けたら上に話通す。裕司も聞いたよな?後で文書回す。もう華と朝陽には聞かん」
「はいはい、了解。華と朝陽ちゃんにも話きいたげてな」
どんどん進んでいく話に、華と朝陽はしょんぼりと俯いた。物怖じしないアイとミイの強さが半分で良いからほしい。
「しっかりしてんな、この子達」
「甘ったれの開斗にぴったりだな」
咲也と伊吹は感心してアイとミイを見る。
「生意気ですよね、ごめんなさい。僕達の働いてる業界は、はっきりモノが言えないと潰されちゃいますから。遠慮してたら仕事をもらえなかったり」
「モデル業は将来、自分達で会社を持つための資金と注目を集めるためでもあるんです。開斗と番になったことで色々言われると思うんですけど、それも踏み台にするつもりです」
オメガカップルであることを公言していた二人にアルファの番ができた。『オメガカップルというのは嘘だった』とか『結局アルファとくっついた』とかあれこれ言われるだろう。『裏切られた』と思う人もいるかもしれない。
しかし、アイとミイは彼らのためだけに生きているわけではない。
応援してくれたことはありがたい。悪く言われて傷つかないわけではないし、実際目にしたらとても苦しいだろう。しかし二人は前を向く。
親がいないこと、第二性が二人共オメガだったこと。幼い頃から嫌な目を向けられてきた二人は強くなるしかなかった。しかしそのおかげで多少の非難は受け流せるし、マイナスをプラスに転嫁する図太さを手に入れられた。
朝陽は目を輝かせて二人を見た。
「すごい…アイちゃん、ミイちゃん、格好良い…!」
「うん、すごいな。そこまで割り切ってんのも、批判に対する考え方も切り替え方もいい。二人は、どのくらいまでモデルの仕事を続けようと思ってる?自分達の会社ってどんなこと?具体的に」
咲也はアイとミイに問う。真剣な咲也の視線に、アイとミイは背筋を伸ばした。
「え?あの…そんなに長く続けるつもりはないです。あと1~2年、かな、と」
「モデルじゃない、ファッションに関するお仕事がしたいんです。こんなお洋服やアイテムがあるよって紹介できるような…」
「なるほど。俺がこの前買った服飾関係の会社がだいぶ傾いてて。やってみる?経営の練習ってことで」
「「え、えぇ!?」」
咲也の提案に、アイとミイは頬を染めて顔を見合わせた。まさかこんな形で夢が叶うとは。二人にできるだろうかという不安が大きくのしかかる。が、経営は咲也との三人体制で行うらしい。会社にとってはモデルのアイとミイのネームバリューもかなり大きな付加価値となると言う。
「具体的なところは、二人の事務所も交えて話をしてからだけど」
「「お、お願いします!やりたいです!」」
アイとミイは身を乗り出した。チャンスは迷わず逃さない。しかし、不安が顔に出ていたようだ。朝陽は二人に笑顔を向ける。
「大丈夫だよ、アイちゃん、ミイちゃん。さっくんね、できるって人にしか言わないから。それにね、さっくん、ワクワクしてる。きっとね、アイちゃんとミイちゃんが社長になったら、すごいことになるんだよ。ね、さっくん、楽しみだね!」
「嘘。ワクワク漏れてる?俺」
咲也は両手で自分の頬を覆った。うっかりニヤニヤしてしまっただろうか。しかし目の前に座る伊吹は腕を組んで首を傾げている。
「ワクワクしてんの?咲也。わかんねぇんだけど」
「え~?めっちゃ嬉しそうじゃん。アイ、ミイ、良かったね。俺も嬉しい。さく兄は悪いようにはしないよ。俺の大好きな人だから」
75
お気に入りに追加
205
あなたにおすすめの小説

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる