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森之宮家の三兄弟

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「単純に半分にするとかなり小さな粒になってしまいますね」
「糖衣でかさ増しするか。味も問題だしな」
「あ、でしたらぜひ弊社の技術を採用していただきたいです。先日認可が降りたんですが、新しいコーティングができまして…」
「よし。休み明けたら上に話通す。裕司も聞いたよな?後で文書回す。もう華と朝陽には聞かん」
「はいはい、了解。華と朝陽ちゃんにも話きいたげてな」
どんどん進んでいく話に、華と朝陽はしょんぼりと俯いた。物怖じしないアイとミイの強さが半分で良いからほしい。
「しっかりしてんな、この子達」
「甘ったれの開斗にぴったりだな」
咲也と伊吹は感心してアイとミイを見る。
「生意気ですよね、ごめんなさい。僕達の働いてる業界は、はっきりモノが言えないと潰されちゃいますから。遠慮してたら仕事をもらえなかったり」
「モデル業は将来、自分達で会社を持つための資金と注目を集めるためでもあるんです。開斗と番になったことで色々言われると思うんですけど、それも踏み台にするつもりです」
オメガカップルであることを公言していた二人にアルファの番ができた。『オメガカップルというのは嘘だった』とか『結局アルファとくっついた』とかあれこれ言われるだろう。『裏切られた』と思う人もいるかもしれない。
しかし、アイとミイは彼らのためだけに生きているわけではない。
応援してくれたことはありがたい。悪く言われて傷つかないわけではないし、実際目にしたらとても苦しいだろう。しかし二人は前を向く。
親がいないこと、第二性が二人共オメガだったこと。幼い頃から嫌な目を向けられてきた二人は強くなるしかなかった。しかしそのおかげで多少の非難は受け流せるし、マイナスをプラスに転嫁する図太さを手に入れられた。
朝陽は目を輝かせて二人を見た。
「すごい…アイちゃん、ミイちゃん、格好良い…!」
「うん、すごいな。そこまで割り切ってんのも、批判に対する考え方も切り替え方もいい。二人は、どのくらいまでモデルの仕事を続けようと思ってる?自分達の会社ってどんなこと?具体的に」
咲也はアイとミイに問う。真剣な咲也の視線に、アイとミイは背筋を伸ばした。
「え?あの…そんなに長く続けるつもりはないです。あと1~2年、かな、と」
「モデルじゃない、ファッションに関するお仕事がしたいんです。こんなお洋服やアイテムがあるよって紹介できるような…」
「なるほど。俺がこの前買った服飾関係の会社がだいぶ傾いてて。やってみる?経営の練習ってことで」
「「え、えぇ!?」」
咲也の提案に、アイとミイは頬を染めて顔を見合わせた。まさかこんな形で夢が叶うとは。二人にできるだろうかという不安が大きくのしかかる。が、経営は咲也との三人体制で行うらしい。会社にとってはモデルのアイとミイのネームバリューもかなり大きな付加価値となると言う。
「具体的なところは、二人の事務所も交えて話をしてからだけど」
「「お、お願いします!やりたいです!」」
アイとミイは身を乗り出した。チャンスは迷わず逃さない。しかし、不安が顔に出ていたようだ。朝陽は二人に笑顔を向ける。
「大丈夫だよ、アイちゃん、ミイちゃん。さっくんね、できるって人にしか言わないから。それにね、さっくん、ワクワクしてる。きっとね、アイちゃんとミイちゃんが社長になったら、すごいことになるんだよ。ね、さっくん、楽しみだね!」
「嘘。ワクワク漏れてる?俺」
咲也は両手で自分の頬を覆った。うっかりニヤニヤしてしまっただろうか。しかし目の前に座る伊吹は腕を組んで首を傾げている。
「ワクワクしてんの?咲也。わかんねぇんだけど」
「え~?めっちゃ嬉しそうじゃん。アイ、ミイ、良かったね。俺も嬉しい。さく兄は悪いようにはしないよ。俺の大好きな人だから」
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