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森之宮家の三兄弟
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「せっかく騙…隠してきたのに~」
「そっかぁ、開斗はわかってたんだね。みんな、気を遣ってくれてるんだと思ってた」
「ん?いや、気をつかうって…開斗は華によく似てるだろ?ほら、どっちかっつーと可愛くて」
「裕司、良く見て。開斗は裕司似だよ。老眼?」
「やめて華、ジジイいじりやめて」
裕司は華の肩を掴んで止めた。同い年の配偶者からの年寄り扱いは辛い。
咲也も開斗を見て眉をひそめた。
「確かに…裕司が華に似てるって言うから思い込んでたのかもな」
「どっちにしたって、咲也にとっては可愛い開斗ちゃんだろ。お前らも、そのうちイチャイチャしてるとこ見せつけられるぞ」
伊吹はアイとミイに向かって言いながら、咲也を指さした。
アイとミイは顔を見合わせから、伊吹の方へ身を乗り出す。
「あの、僕たち、抑制剤を変えてもらったんです。いつも、発情期が辛くて。でも薬を変えたら発情期が前より楽になって」
「森之宮製薬の薬です。開斗から、伊吹お兄さんが改良してくれたって聞いて…」
「「ありがとうございました」」
アルファなのに、オメガのための抑制剤を改良してくれた。アイとミイは心からの感謝の意を伊吹に伝えた。
伊吹は発情期の辛さはわからない。各方面からデータを取り、意見を集めて改良を進めた。それこそ寝ずに意見を読み込んで、どこに一番作用すべきか考えに考え抜いた。実際飲んでいる人間がこうして感謝してくれる。伊吹は照れを隠しながら、実際今まで感じたことのない程の喜びを噛み締めた。
「ん、そうか…なんか、不便、ねぇか?あれ」
「あ…」
「えと…」
アイとミイは顔を見合わせる。今度は伊吹が身を乗り出した。
「なんでもいい、気になってること、教えてくれ。遠慮なく言え」
「いぶ兄、言い方怖いって…」
「あ、じゃあ遠慮なく言います。ちょっと味が気になります」
「そう、なんか、変な味というか…飲めないほどじゃないけど違和感があります」
開斗は伊吹を嗜めるが、アイとミイは気にせず忌憚ない意見を述べた。
「あ、わかる。なんだろう。飲めなくはないけど…ね、変な味」
「僕も!わかりますぞ~珍味?みたいな」
華が納得して参戦してくる。朝陽も手を上げて会話に入ってきた。
「あーっ!それです、珍味!」
「後味が珍味だ!なにかな、苦い系の…」
「ちょっとクセになる感じね。あ、レバーかな?珍味じゃないけど…」
「「「それです~!」」」
華の意見に朝陽とアイとミイは声を揃えて賛同している。どうにも伊吹の改良した抑制剤は相当味にクセがあるらしい。伊吹は額に青筋を浮かべる。
「だぁら…そういうの、言えっつっただろ!なんのためのヒアリングだったんだよ、華!朝陽!」
「え~だって、不味いなーって思ってるの、僕だけかなぁって思って…すごく効くんだもん、変なこと言ってなくなったら嫌だし…」
「そうですよね、不味いけどすっごい効くんですよ。発情期、楽で楽で…りょーにゃく、口に苦いかなって」
「良薬は口に苦し、ですね」
伊吹はべしっと自分の膝を叩く。華と朝陽はもごもごと伊吹に訴えた。
朝陽の間違いは幸四郎が訂正する。苦笑いを浮かべる朝陽に、幸四郎は微笑んだ。
「あとは?あとどっか気になるとこ」
「一粒が大きいです」
「小さくなったら嬉しいです」
伊吹の問いに、アイとミイは遠慮なく意見を言っていく。伊吹にとってはその方が遥かにありがたい。遠慮よりも使用している当事者から正直な本音をもらいたかった。
「あれでもでかいか?そうか…半分のでかさで一回二錠ならどうだ?面倒じゃないか?」
「それがいいです!」
「一周り小さいだけで、全然違うと思います」
「なるほど。一回一錠のほうが管理が楽かと思ったんだけどな…」
「そっかぁ、開斗はわかってたんだね。みんな、気を遣ってくれてるんだと思ってた」
「ん?いや、気をつかうって…開斗は華によく似てるだろ?ほら、どっちかっつーと可愛くて」
「裕司、良く見て。開斗は裕司似だよ。老眼?」
「やめて華、ジジイいじりやめて」
裕司は華の肩を掴んで止めた。同い年の配偶者からの年寄り扱いは辛い。
咲也も開斗を見て眉をひそめた。
「確かに…裕司が華に似てるって言うから思い込んでたのかもな」
「どっちにしたって、咲也にとっては可愛い開斗ちゃんだろ。お前らも、そのうちイチャイチャしてるとこ見せつけられるぞ」
伊吹はアイとミイに向かって言いながら、咲也を指さした。
アイとミイは顔を見合わせから、伊吹の方へ身を乗り出す。
「あの、僕たち、抑制剤を変えてもらったんです。いつも、発情期が辛くて。でも薬を変えたら発情期が前より楽になって」
「森之宮製薬の薬です。開斗から、伊吹お兄さんが改良してくれたって聞いて…」
「「ありがとうございました」」
アルファなのに、オメガのための抑制剤を改良してくれた。アイとミイは心からの感謝の意を伊吹に伝えた。
伊吹は発情期の辛さはわからない。各方面からデータを取り、意見を集めて改良を進めた。それこそ寝ずに意見を読み込んで、どこに一番作用すべきか考えに考え抜いた。実際飲んでいる人間がこうして感謝してくれる。伊吹は照れを隠しながら、実際今まで感じたことのない程の喜びを噛み締めた。
「ん、そうか…なんか、不便、ねぇか?あれ」
「あ…」
「えと…」
アイとミイは顔を見合わせる。今度は伊吹が身を乗り出した。
「なんでもいい、気になってること、教えてくれ。遠慮なく言え」
「いぶ兄、言い方怖いって…」
「あ、じゃあ遠慮なく言います。ちょっと味が気になります」
「そう、なんか、変な味というか…飲めないほどじゃないけど違和感があります」
開斗は伊吹を嗜めるが、アイとミイは気にせず忌憚ない意見を述べた。
「あ、わかる。なんだろう。飲めなくはないけど…ね、変な味」
「僕も!わかりますぞ~珍味?みたいな」
華が納得して参戦してくる。朝陽も手を上げて会話に入ってきた。
「あーっ!それです、珍味!」
「後味が珍味だ!なにかな、苦い系の…」
「ちょっとクセになる感じね。あ、レバーかな?珍味じゃないけど…」
「「「それです~!」」」
華の意見に朝陽とアイとミイは声を揃えて賛同している。どうにも伊吹の改良した抑制剤は相当味にクセがあるらしい。伊吹は額に青筋を浮かべる。
「だぁら…そういうの、言えっつっただろ!なんのためのヒアリングだったんだよ、華!朝陽!」
「え~だって、不味いなーって思ってるの、僕だけかなぁって思って…すごく効くんだもん、変なこと言ってなくなったら嫌だし…」
「そうですよね、不味いけどすっごい効くんですよ。発情期、楽で楽で…りょーにゃく、口に苦いかなって」
「良薬は口に苦し、ですね」
伊吹はべしっと自分の膝を叩く。華と朝陽はもごもごと伊吹に訴えた。
朝陽の間違いは幸四郎が訂正する。苦笑いを浮かべる朝陽に、幸四郎は微笑んだ。
「あとは?あとどっか気になるとこ」
「一粒が大きいです」
「小さくなったら嬉しいです」
伊吹の問いに、アイとミイは遠慮なく意見を言っていく。伊吹にとってはその方が遥かにありがたい。遠慮よりも使用している当事者から正直な本音をもらいたかった。
「あれでもでかいか?そうか…半分のでかさで一回二錠ならどうだ?面倒じゃないか?」
「それがいいです!」
「一周り小さいだけで、全然違うと思います」
「なるほど。一回一錠のほうが管理が楽かと思ったんだけどな…」
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