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森之宮家の三兄弟
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「何事も凝り性で。気になると徹底的に調べてしまう、いわゆるオタクですね。悪い癖です。面接の時に気になった森之宮社長のこともつい、調べてしまいまして。学生時代の伝説を仕入れたんですね」
「うわっ怖っ…俺の噂って、そんなもんがネットに出回ってんのかよ。つか、そんなに嗅ぎ回って幸ちゃん、まさか俺のこと狙ってんの?華以外は無理なんだけど」
「いえ、全然!そういう好きは一切ないです。ただ人間性に興味があっただけで、好意だとかそういう気はこれっぽっちもありません。毛ほども!」
「そこまで言われるとそれはそれで腹立つんだけど」
裕司の反応に、幸四郎は笑顔で言い切った。本当に毛ほども裕司にそういう好意はないといった態度だ。裕司は逆に腹立ってしまった。それだけ調べるならちょっとは好きになれよと思ってしまう。
盛り上がる朝陽と幸四郎はさておき。開斗は呆然としているアイとミイの肩をだいて伊吹に向き合った。
「で、蒸し返すけど。いぶ兄、当主やんないの?」
「やんねぇよ、柄じゃねぇし…俺は、お前や咲也みたいに、うまく、立ち回れねぇ。半端なアルファだからな」
「なんだよ半端って。お前、十分すげぇだろ。お前が入ってからの既存薬の改良スピード、今までとケタ違いだって聞いたぞ」
「そうだよ。大学の時もさ、研究やりすぎてぶっ倒れたし。そんだけ夢中になって、実績上げて。夢中になることがあんのも、それで実績あげてんのもすげぇじゃん」
伊吹にの謙遜を、咲也と開斗は否定する。伊吹は口元が緩むのを必死に堪えた。伊吹はずっと、二人に対して劣等感があった。身近な出来の良いアルファに認められた。素直に嬉しかった。
「いぶ兄、ずるいよ。俺なんかさ、何事もあんまハマれないし、オメガの匂いもわかんないし。俺こそ半端な、アルファのできそこないだよ」
伊吹は、驚いて開斗を見る。この弟は一体何を言っているのか。
「それはちげぇだろ。お前は逆で、アルファの力が強ぇんだよ」
咲也は頷いて、伊吹の言葉を引き取る。
「自然とオメガの匂いを嗅ぎ分けてる。たぶん、俺達の中でも一番。より、アルファとしての能力が強い…いや、抑え込む力が強いんだ。コントロールができてる」
きっと開斗はフェロモンを感じないのではなく、感じないようにしている。無意識に、オメガを察して遮断する。その力が他のアルファよりも優れている。それはこの家族のアルファの中で一番。
開斗は緩む口元を隠しきれず、頬を染めた。
「んな…まじで?そうなん?」
「専門家じゃねぇから、知らんけど。お前のさく兄が言うんだから、間違いねぇだろ」
「確かに…うん。さく兄が言うなら、間違いない。そうか、俺、出来損ないじゃないのかぁ」
伊吹は顎で咲也を指し示す。開斗はついにへらっと笑った。
開斗が敬愛している咲也がいうならその通りなのだろう。たとえ間違っていても咲也が言うなら開斗にとってそれは絶対だ。それに、あの伊吹が開斗のアルファを認めた。これは開斗にとって、かなり嬉しい事だ。
咲也はため息をつく。
「伊吹が半端で開斗が出来損ないなら、俺はなんだよ。番の朝陽を泣かせて不安にさせた。つくづく自分が嫌になる」
「咲也でも、そんな顔するんだな…」
「さく兄は、小さい時から朝陽の番だった。ずっとアルファだったよ。あと、朝陽の番はさく兄じゃなきゃできないし。濃すぎんのよ、この人」
「それな」
開斗は朝陽を指さす。伊吹も大きく頷いた。朝陽はまだ幸四郎と盛り上がっている。さっきの涙はなんだったのか。
「うわっ怖っ…俺の噂って、そんなもんがネットに出回ってんのかよ。つか、そんなに嗅ぎ回って幸ちゃん、まさか俺のこと狙ってんの?華以外は無理なんだけど」
「いえ、全然!そういう好きは一切ないです。ただ人間性に興味があっただけで、好意だとかそういう気はこれっぽっちもありません。毛ほども!」
「そこまで言われるとそれはそれで腹立つんだけど」
裕司の反応に、幸四郎は笑顔で言い切った。本当に毛ほども裕司にそういう好意はないといった態度だ。裕司は逆に腹立ってしまった。それだけ調べるならちょっとは好きになれよと思ってしまう。
盛り上がる朝陽と幸四郎はさておき。開斗は呆然としているアイとミイの肩をだいて伊吹に向き合った。
「で、蒸し返すけど。いぶ兄、当主やんないの?」
「やんねぇよ、柄じゃねぇし…俺は、お前や咲也みたいに、うまく、立ち回れねぇ。半端なアルファだからな」
「なんだよ半端って。お前、十分すげぇだろ。お前が入ってからの既存薬の改良スピード、今までとケタ違いだって聞いたぞ」
「そうだよ。大学の時もさ、研究やりすぎてぶっ倒れたし。そんだけ夢中になって、実績上げて。夢中になることがあんのも、それで実績あげてんのもすげぇじゃん」
伊吹にの謙遜を、咲也と開斗は否定する。伊吹は口元が緩むのを必死に堪えた。伊吹はずっと、二人に対して劣等感があった。身近な出来の良いアルファに認められた。素直に嬉しかった。
「いぶ兄、ずるいよ。俺なんかさ、何事もあんまハマれないし、オメガの匂いもわかんないし。俺こそ半端な、アルファのできそこないだよ」
伊吹は、驚いて開斗を見る。この弟は一体何を言っているのか。
「それはちげぇだろ。お前は逆で、アルファの力が強ぇんだよ」
咲也は頷いて、伊吹の言葉を引き取る。
「自然とオメガの匂いを嗅ぎ分けてる。たぶん、俺達の中でも一番。より、アルファとしての能力が強い…いや、抑え込む力が強いんだ。コントロールができてる」
きっと開斗はフェロモンを感じないのではなく、感じないようにしている。無意識に、オメガを察して遮断する。その力が他のアルファよりも優れている。それはこの家族のアルファの中で一番。
開斗は緩む口元を隠しきれず、頬を染めた。
「んな…まじで?そうなん?」
「専門家じゃねぇから、知らんけど。お前のさく兄が言うんだから、間違いねぇだろ」
「確かに…うん。さく兄が言うなら、間違いない。そうか、俺、出来損ないじゃないのかぁ」
伊吹は顎で咲也を指し示す。開斗はついにへらっと笑った。
開斗が敬愛している咲也がいうならその通りなのだろう。たとえ間違っていても咲也が言うなら開斗にとってそれは絶対だ。それに、あの伊吹が開斗のアルファを認めた。これは開斗にとって、かなり嬉しい事だ。
咲也はため息をつく。
「伊吹が半端で開斗が出来損ないなら、俺はなんだよ。番の朝陽を泣かせて不安にさせた。つくづく自分が嫌になる」
「咲也でも、そんな顔するんだな…」
「さく兄は、小さい時から朝陽の番だった。ずっとアルファだったよ。あと、朝陽の番はさく兄じゃなきゃできないし。濃すぎんのよ、この人」
「それな」
開斗は朝陽を指さす。伊吹も大きく頷いた。朝陽はまだ幸四郎と盛り上がっている。さっきの涙はなんだったのか。
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