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森之宮家の三兄弟
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「赤ちゃんが欲しいとか、この場でお話したのは軽率でした。ごめんなさい。僕たち、家族がいないんです。親も、兄弟も。だから、家族が欲しい、赤ちゃんが欲しいって思いました。オメガだ、って、嫌な目にあって、嫌がらせもたくさんうけました」
「だからこそ、産まれてくる子には幸せになってほしいし、絶対に、幸せにしたい。カイトが3人でいられる方法を考えてくれて、嬉しかった。森之宮って、立派なお家の人を、こんなことに巻き込んじゃいけないとも思いました。でも、先に、番になろう、って。開斗が、言ってくれて…勘当されても僕たちを守るって言ってくれて…お父様と、お母様は、こんな僕たちを、認めて、くれますか?」
アイとミイは手をつなぎ、不安そうに華を見る。華は笑って頷いた。
「もちろん。開斗と3人で…赤ちゃんも一緒に、幸せになってね」
「「っ…はいっ!開斗を、子供も!幸せにします!」」
アイとミイは力強く頷いた。華はほっと肩の力を抜く。そして裕司が黙っていることに気づいた。裕司抜きで話を進めてしまった。父であり、アイとミイに対して先程までやや否定的だった裕司がどう考えるかわからない。
「…あ、裕司に聞かなくて、ごめんね?裕司も、認めてあげるよね?アイさんとミイさんのこ…えぇっ!?」
華は隣の裕司を見てギョッとした。裕司はしゃくりあげて泣いていた。
「っ…華、ごめ、ごめんな、…そんな、覚悟、背負わして…俺、俺も、背負うから」
「やだなぁ、なんで裕司が泣いてるの?泣く前にほら、アイさんとミイさんのこと、いいよね?認めてあげるよね?」
裕司は泣きながら頷いて親指を立てた。アイとミイは声を揃えて、ありがとうございますと手を叩いて喜んだ。アイとミイの髪を撫でながら開斗は両親に問う。
「でもさ、もしさぁ、俺が森之宮継ぐってなったらどうなんの?遺産とかガッポガポなの?」
「それは、えっと…当主の裕司に聞いてもらわないと。どうなの?裕司。ほら、泣いてないで答えて」
「うっうっ…はい、遺産、ガッポガポは、ないです…」
「遺産は広末さんと健司伯父さんが管理してるから、うまく分割してくれると思うけど…お前らどっちかやんの?」
「お前、当主やる気なんてあったのか?その前に、当主になるなら咲夜だろ?長男、なんだから。って、思ってたけど」
「遺産ガッポガポじゃないならやる気なくなったわ~。さく兄はやらないんじゃなかったけ?俺、伊吹がやるんだと思ってた」
裕司は泣きながらも答えた。答えを聞いた咲夜、伊吹、開斗は口々にお互いの意思確認をして首を傾げる。お互いに誰かがやるのかと思っていた。
裕司は華がくれたティッシュで顔と鼻水を拭う。目元と鼻を赤くしたの裕司は一息ついた。
「森之宮は俺が当主ってなってるだけで。今も健司と話し合って諸々決めてる。遺産はな、お前らと健司んとこの子で分割。当主になったから総取りってわけでもねぇから。会社も、伊吹は社長業よりも研究に専念したいだろうから、親族以外の人間を立てるつもりだ。森之宮は代々続いてるっつっても歴史が長いだけで、没落しかけてたのを俺の父親…お前らのじいさんがあれこれ商売初めて持ち直したってだけのハリボテだ」
裕司の父、森之宮の前当主には商才があった。というより、没落しかけとはいえ資金のあった前当主が興味のある分野にあれこれ手を出していた。成功もあったが失敗しもかなりあったようで、不動産業などがまぁまぁな業績をあげて最終的に大きなプラスを残してくれていた。
「だからこそ、産まれてくる子には幸せになってほしいし、絶対に、幸せにしたい。カイトが3人でいられる方法を考えてくれて、嬉しかった。森之宮って、立派なお家の人を、こんなことに巻き込んじゃいけないとも思いました。でも、先に、番になろう、って。開斗が、言ってくれて…勘当されても僕たちを守るって言ってくれて…お父様と、お母様は、こんな僕たちを、認めて、くれますか?」
アイとミイは手をつなぎ、不安そうに華を見る。華は笑って頷いた。
「もちろん。開斗と3人で…赤ちゃんも一緒に、幸せになってね」
「「っ…はいっ!開斗を、子供も!幸せにします!」」
アイとミイは力強く頷いた。華はほっと肩の力を抜く。そして裕司が黙っていることに気づいた。裕司抜きで話を進めてしまった。父であり、アイとミイに対して先程までやや否定的だった裕司がどう考えるかわからない。
「…あ、裕司に聞かなくて、ごめんね?裕司も、認めてあげるよね?アイさんとミイさんのこ…えぇっ!?」
華は隣の裕司を見てギョッとした。裕司はしゃくりあげて泣いていた。
「っ…華、ごめ、ごめんな、…そんな、覚悟、背負わして…俺、俺も、背負うから」
「やだなぁ、なんで裕司が泣いてるの?泣く前にほら、アイさんとミイさんのこと、いいよね?認めてあげるよね?」
裕司は泣きながら頷いて親指を立てた。アイとミイは声を揃えて、ありがとうございますと手を叩いて喜んだ。アイとミイの髪を撫でながら開斗は両親に問う。
「でもさ、もしさぁ、俺が森之宮継ぐってなったらどうなんの?遺産とかガッポガポなの?」
「それは、えっと…当主の裕司に聞いてもらわないと。どうなの?裕司。ほら、泣いてないで答えて」
「うっうっ…はい、遺産、ガッポガポは、ないです…」
「遺産は広末さんと健司伯父さんが管理してるから、うまく分割してくれると思うけど…お前らどっちかやんの?」
「お前、当主やる気なんてあったのか?その前に、当主になるなら咲夜だろ?長男、なんだから。って、思ってたけど」
「遺産ガッポガポじゃないならやる気なくなったわ~。さく兄はやらないんじゃなかったけ?俺、伊吹がやるんだと思ってた」
裕司は泣きながらも答えた。答えを聞いた咲夜、伊吹、開斗は口々にお互いの意思確認をして首を傾げる。お互いに誰かがやるのかと思っていた。
裕司は華がくれたティッシュで顔と鼻水を拭う。目元と鼻を赤くしたの裕司は一息ついた。
「森之宮は俺が当主ってなってるだけで。今も健司と話し合って諸々決めてる。遺産はな、お前らと健司んとこの子で分割。当主になったから総取りってわけでもねぇから。会社も、伊吹は社長業よりも研究に専念したいだろうから、親族以外の人間を立てるつもりだ。森之宮は代々続いてるっつっても歴史が長いだけで、没落しかけてたのを俺の父親…お前らのじいさんがあれこれ商売初めて持ち直したってだけのハリボテだ」
裕司の父、森之宮の前当主には商才があった。というより、没落しかけとはいえ資金のあった前当主が興味のある分野にあれこれ手を出していた。成功もあったが失敗しもかなりあったようで、不動産業などがまぁまぁな業績をあげて最終的に大きなプラスを残してくれていた。
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