森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)

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森之宮家の三兄弟

27 それから (最終章)

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その日は開斗の号令で、森之宮家の人間は森之宮家に勢揃いしていた。
裕司、華夫妻。
咲也、朝陽夫妻。
伊吹、幸四郎の二人。
開斗、アイ、ミイの三人だ。
裕司は頭を抱えていた。
「ん~~~っと、…ん~わかんないな。開斗、番ができたって、言ってたよな?その紹介、なんだよな?」
「そうで~っす☆番のアイちゃんとミイちゃんでーーーっす!」
「アイです」
「ミイです」
「「よろしくお願いします!」」
開斗の答えにアイとミイは元気にご挨拶をした。裕司は益々頭を抱えた。
「待って~わかんないわかんない。番が二人って…えーっ、わかんないよパパ。ドッキリ?これ家族総出のドッキリ?」
「ねぇ、そんなことよりいぶ兄だよ。恋人連れてきてっつったじゃん!………え、恋人なの?」
「いんだよ伊吹は。そのくだりはパパん中で終わってっから」
「まじ?ダイジェストでお送りする感じ?説明ちょうだいよぉ、俺の二人番が霞むじゃん!」
「待って。俺にも説明くれよ。なんだよ二人番って。ほんで伊吹に恋人って。俺には全部がドッキリなんだけど。家族総出で俺をハメにきてる?」
開斗と咲也は伊吹を見た。伊吹は口を尖らせてそっぽを向く。しかし否定はしない。否定はしないということは、そういうことだ。彼、幸四郎は、先日晴れて伊吹の恋人となった。
『あの…伊吹君と、お付き合いして、させていただいてます』
この会が催される前に、幸四郎は裕司と華に挨拶に来ていた。伊吹と付き合うこと、年がだいぶ離れていること。幸四郎は裕司と華に土下座して伊吹との交際を許してほしいと嘆願した。
「いきなり土下座してなーびびったよなぁ、華」
「んへ?んっ、うん、び、びび…番が、二人??」
「俺もびびったわ。土下座するなんて聞いてねぇし、裕司は殴りかかるし」
伊吹はため息交じりに答える。


裕司と華は年が離れていると聞いて、そんなことは構わないと思った。伊吹がわざわざ自分達の元に連れてきたということは、伊吹が認めた、本当に一緒にいたい人なのだろう。年齢など些末なこと。
しかし、土下座をするということは別になにかあるんじゃないか、と裕司は思った。
年齢的に、幸四郎は結婚していてもしや不倫なのではないのだろうか。それを土下座して謝っているのではないか。
『うちの伊吹と不倫とかてめぇ…ぶちのめすだけじゃすまねぇぞ?あ"ぁ"あ"あ"!?』
『ふ、不倫!?なんのことですか!?僕は独身ですぅう!!』
裕司は幸四郎に殴りかかった。華と伊吹とエリカでなんとか止めた、という経緯があった。結果は裕司の早とちりだった。


「15歳差は確かにだいぶ年上だけど、土下座までするか?そら勘違いもするだろ」
裕司は開き直って咲也と開斗に問いかける。二人は黙って首を横に振った。
「いやぁ、森之宮社長が若い頃にヤンチャをしていたという噂が本当だったのだと確信しました!絡んできた不良を5人殴り飛ばして病院に送ったという伝説は本当で」
「おいおい幸ちゃ~ん。顎砕くぞぉ?」
裕司は拳を握って笑う。幸四郎の話は裕司の若い頃、咲也妊娠前の話なのだろう。本当なんだろうな、と三兄弟は思う。
幸四郎は口を両手を覆って黙った。
「だからな、伊吹はちょっと、置いといて。ごめんな、幸 ちゃん。えーっと、アイちゃんと、ミイちゃん?よく、開斗とお仕事してる、あの、」
「はい。オメガで、モデルをしています」
「僕たち二人共、開斗の番になりました」
アイとミイは背中を向いて項を晒す。そこにはくっきりと噛み跡がある。
「ほんとだ、噛み跡が二人共…そんなこと、」
「やったら、できたんだよね~」
「「「ね~っ☆」」」
華は噛み跡を見て驚いた。
開斗とアイとミイは顔を見合わせて声を揃える。
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